原節子

『麦秋』1 日本の美5(2ページ)

    作品名:麦秋 (1951)
    監督:小津安二郎
    衣装:斎藤耐三
    出演者:原節子/淡島千景/笠智衆/三宅邦子/杉村春子



    昔の日本映画を「見る」女性はなぜ美しくなるのか?

    Premiere of the film 'The daughter of the Samurai' Ruth Eweler, Joseph Goebbels, Setsuko Hara, and Japanese ambassador Mushanokoji Kintomo.

    『新しき土(ドイツ題は「サムライの娘」)』(1937年)ナチス・ドイツとの合作映画に主演し、ドイツに招待された時の17才の原節子様。隣はゲッベルス。

    若き日の原節子様は、とても可憐なのですが(着物がよく似合います)、顔が小さくないという私の印象だった節子様の顔が、この写真を見ているととても小さいです。しかし、隣に立つのがヨーゼフ・ゲッベルス(アドルフ・ヒトラーの右腕。第三帝国の宣伝大臣、この写真撮影の8年後に自殺する)というのが、すごく不思議です。ゲッベルスに会ったことのある日本人女性は5人といないのではないしょうか?

    そのゲッベルスの隣に立ってよそ見してしまっているのは、『新しき土』(1937年)のもう一人の主人公ルート・エヴェラー(1913-1947)です。彼女の兄は、ナチス親衛隊の少佐でした。彼女はナチスドイツ時代に、ゲッベルスに愛され、スターとなるのですが、第三帝国崩壊後の1947年、極貧の中、死去しました。肺炎とも自殺とも言われていますが、真実はわかりません。

    1930年代当時、ナチスドイツを訪れた原節子様は何を見たのでしょうか?当時、着物をうまく着こなす日本人女性を見ることはドイツ人にとって、すごく新鮮だったことでしょう。この時代に着物を着ている人たちが、日本人においての最後の着物世代と言われています。そして、昔の日本映画は、ある一つのことを教えてくれます。それは何か?それは今の多種多様な美容やファッションのルールとは無縁の独自の空気が流れています。今、女性は美容やファッションに対して強烈な強迫観念を植え付けられています。

    1+1が2になり、その2を10にするためには、どうしていかないといけないのか?2に3を足して5にして、そこに2倍の効果を生み出せるものを負荷して10にしましょう。でもこの10ではまだまだ不十分です。次は30を目指しましょう。などと言っているうちに、年を取ったので、マイナス50です。さぁ、マイナスからアンチエイジグへの旅に乗り出しましょう。なんて精神錯乱した美容及びファッション・アドバイスに翻弄される時代の中を生きています。ファック・ユー・アンチエイジング。とまでは言いません。でもそれに近い一言を上品に言うならば、「恋人から借りた服を着る女性は魅力的です」ということなのです。

    さて、今、女性が最も美しく磨き上げられるための要素は何でしょうか?それは間違いなく、美しくなることは、時間との戦いであり、時間を味方につけるためには、外見と内面の美意識を共に磨かなければならないと言うことなのです。「外見の美だけで何とかなります」という人々の負のパワーを感じたいならば、外に出ずともテレビをつければ、たくさんそのサンプルが現れます。そんな人たちのテレビ番組を上書きする形で、『麦秋』のDVDを上映しましょう。そして、この世界観を『オズの魔法使い』を見る感覚で見ていきましょう。美しき現代女性たちはDVD&ブルーレイ時代の恩恵をフルに生かし、小津安二郎監督と原節子様、もう一人加えるならば、「リボンの騎士」のモデルだった淡島千景様を拝謁する喜びを知っています。さぁ、あなたもこの映画の魔法に触れてください。10回はマジカル・ムービーとして垂れ流してください。昔の日本映画は、ある一つのことを教えてくれます。それは、女性の美の極致は「所作」にあるのです。



    1.今の日本人が忘れているスーパーポーズが詰まっている。

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    50年代の映画でアッパークラスの女性が万国共通で身に着けていたのは、白手袋です。

    シルエットは決して美しいわけではない。

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    しかし、原節子様には、何かがある・・・彼女は古さと新しさを同時に感じさせる人です。

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    ジップが何気に「S」なのです。

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    佐野周二、原節子、淡島千景。この際スーツにボーダーソックスには目をつぶろう。何よりもかわいい体育座りにも目をつぶろう。そして、この3人の世界観は、まさにファンタジーです。

    一度でもプロのカメラマンに撮影された経験のある人ならば、「あなたらしいポーズを取ってください。」と言われたときに、一番戸惑うのが、表情よりも、手であることを知っています。女性は、その手の動きで美の75%をコントロール出来ると考えられています。逆に言うと、その手の位置によって急激にやぼったくも見えてしまいます。

    私たちが見ることが出来なくなった「今ある文化を全く無視した所作」が小津安二郎監督の名作の中にあります。その中でも、紀子三部作のうちの本作と『晩春』は現代日本人女性のバイブルと言える所作が目を離せぬほどに詰まっています。例えば、こういうことです。「そうさ!ぶつよ!ブン殴りますよ!」という千景様のセリフから始まる、節子様とのおっかけっこ、その後に、二人とも、少女のように、後ろ手で立ち尽くすシーンがあるのですが、こういう女性が可憐に見えるポーズがこの作品には散りばめられているのです。

    この作品の中に存在するのは、和と洋の絶妙な折衷です。実に不思議な感覚なのですが、私たちは、今では小津安二郎の映画を見て、(当時現実的ではなかった)古き良き日本の文化を感じ取ることを、実に違和感無くやってのけることになったのです。なんか子どもが子どもらしいなぁと感じたり、「ただいま」と誰かが帰ってくるだけでワクワクしたり、食事する時の所作を見ているだけで、それは別の惑星の何かを見ているかのようでありながら、不思議なことに、なぜかしっくり来る何かが存在するのです。

    紀子ルック1
    • スーツ。フロントジップ。7分袖をロールアップ、スカート長い。白手袋。ベルト付。ジップがS。独特な襟の形
    • 黒ハイヒールのパンプス
    • コットン地の白手袋
    • 大きめのクラッチバッグ(おそらくレザー)
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    三宅邦子様。小津監督の作品での彼女はとても魅力的です。

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    料亭で飲むビールは<麒麟>です。食事の所作が本当に美しいです。

    笠智衆「飯を食うのもいいが、とにかく、終戦後、女がエティケットを悪用して、益々図々しくなって来つつあることだけは確かだね」
    原節子「そんなことない。これでやっと普通になって来たの。今まで男が図々しすぎたのよ」

    三宅邦子様の着物の花柄。そして、このヘアスタイルが1930年代のハリウッド風で美しいです。




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