21世紀においては一番のモテキャラ。
アリソン・ルック1-2 ロングスカート
- 黒のロングカーディガン
- グレーに黒の斑点のロングスカート
- 黒地にグレーの斑点のスカーフ
- 黒タイツ
- カラフルなラインの入ったホワイトソックス
- 黒のコンバース
- 黒とグレーのストライプのコットン製のスリングバッグ
マリリン・ヴァンスは、アリソンの衣裳を準備することに大いに手間取りました。1980年代半ばは、カラフルなカラーがファッション・シーンに溢れていました。そのため彼女はアリソンの衣裳をほとんど自分自身で作りました。そして、このゴシックスタイルは、1990年代のジュンヤワタナベをはじめとするハイファッションのゴシックテイストに多大なる影響を与えたのでした。
乱れたボブヘアが無造作に動くその角度によって、アリソンの魅力的な素顔が時々露わになります。その瞬間、人々はそんな彼女に夢中になってしまうのです。ここにゴシックスタイルの女性がモテる法則が描き出されています。魅力的な武器をなかなか見せないからこそ、その魅力は何十倍も魅力的に見えるという法則です。
更に、この作品は、クレア(=プリンセス)がジョン(=不良)に夢中になったように、アンドリュー(=体育会系)がアリソン(=不思議ちゃん)に夢中になるという、ごく自然な人間の恋愛感情の本質を描いています。理解できないからこそ、恋するのです。
ファッションの本質を描いた恐るべきシーン
プリンセスによって不思議ちゃんは、プリンセス・メイクを施されるのですが、このシーンの描写こそが、この作品の肝なのです。
メイクアップとは、結局は内面を映し出す鏡であり、クレアのようなライフスタイルだからこそ、プリンセスは生まれるのであり、アリソンのライフスタイルだとプリンセス・メイクは実に不気味な仮面の役割を果たすということなのです。それは、この作品が、全てのシーンを順番通りに撮影されたからこそ生み出されたシーンでした。
つまりは、ゴスメイク時代のアリソンの方が、プリンセスメイクを施したアリソンよりも遥かに魅力的だということをワンシーンで端的に伝えており、ファッションとメイクアップの本質がここに示されているのでした。
だからこそ、ファッションに唯一光を与える存在は、一瞬その服を着るファッションモデルではなく、女優だけなのです。そして、女優とは、ファッションに生命力を与えることが出来る存在であり、それが出来る人達だけが女優と呼ばれるに値するのです。そして、それは男優においても同じです。つまりは、スタイリストに着る服を任せてきた役者は、こざっぱりはするが、変身後のアリソンのようにしか見えないのです。
かつて、ジェームズ・ボンドをショーン・コネリーが演じることが決まった時に、スーツを着たことがなかったコネリーに監督のテレンス・ヤングはこう命じたのでした。「寝るときもスーツを着て、撮影までにスーツに慣れるんだ」と。
21世紀の日本の役者の大半が、変身前のアリソンではなく、変身後のアリソンのように見えるのは、その姿勢のためでしょう。だから、最近の日本映画からはファッション・アイコンは生まれないのです。