エクスプロージョン オブ エモーション コレクション
Explosions d’Emotions Collection 2013年当時(売り上げだけでなく、ニッチ・フレグランスとしての創造性においても)絶好調だったラルチザンは、フレグランス市場のラグジュアリー傾向を考え、最上級フレグランス・コレクションの展開を図ることにしました。その最上級コレクションの名を「エクスプロージョン オブ エモーション」と申します。
それはラルチザンを愛する(愛した)フレグランスIQの高い人々にとっては、まさに幻の素敵なコレクションでした(2019年10月に発売されたshiroの12種類のコレクションのコピー・フレグランスぷりと比べると、それは天地の差です)。
まず2013年9月に、〝恋愛における感情の高まりを香りで表現する〟というテーマによって創り出された作品が一挙3作品発売され、翌2014年3月に〝人が内に抱える何かを揺さぶる感情を香りで表現する〟というテーマで3作品発売されました。
全6作品全てを調香したのは、ベルトラン・デゥショフールでした。そして、このコレクションのその後の悲しき運命(2015年の買収後は、廃盤になり、「アムール ノクターン」と「ラペル トワ」のみが再販され今に至る)にも関わらず、6作品全てが、画期的な香りだったのです。
悲運の幻のラルチザン・コレクション
このコレクションにおいて、特筆すべき点は、それぞれの香りが画期的だったことと同じくらいそのボトル・デザインがとてもエレガントなものであったということです。フランスのガラス職人によって作られたボトルは八角形のフォルムを誇り、であるにもかかわらずそのキャップは七角形であるというアンバランスなバランスが、前人未到のエレガンスを生み出しています。
ちなみにラルチザンは、ペンハリガンと共にフォックス・ペイン・アンド・カンパニー(Fox Paine & Company)によってレバレッジド・バイアウトされ、2015年1月にスペインのプーチ社に売却されました。
それは元々業績がよく、利益を上げることが出来そうな会社をFPCが買収し、見事に利益を上げ、プーチ社に売却したということでした。つまり、この頃のラルチザンは、最高の業績をあげていたということです(業績が悪くて買収され、表参道店も閉鎖されたという印象が強いがそうではありません。ちなみに表参道店は2008年11月1日にオープンしており、2015年7月20日に閉店しました)。
2015年8月1日以降ブルーベルがラルチザンとペンハリガンを取り扱うようになり、その販路は広がりました。しかし、現在のラルチザンの新作は、一体どうなのでしょうか?このエクスプロージョン オブ エモーション コレクションと比べれば、気の抜けたコーラのように感じるのは私だけでしょうか?
もしかしたらラルチザンは、ドゥショフールが去り、今では、その大きな空白を埋めることが出来る調香師も、クリエイティヴ・ディレクターも存在しなくなったのではないでしょうか?ラルチザンがラルチザンらしさを取り戻すためには、このコレクションの復活と、「エキゾチック ボヤージュ」の復活が不可欠だと、私は考えます。
それほどに、今のラルチザンはつまりません。つまりは、もはや今のラルチザンは、ラルチザンではなくなったということです。