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『サムライ』Vol.2|アラン・ドロンとチェスターフィールドコート

アラン・ドロン
アラン・ドロン女性目線の男磨き
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本来スタイルに、ミニマルは存在しない

パリのサムライは、その街を、強靭な肉体をコートに、まさに刀を鞘に収めるように着て、静かに歩く。そして、一瞬で抜刀し、敵をなぎ倒す。サムライの美学とは、戦略的な狡猾さではなく、あくまでも直線的な美学なのです。それはある種、カミカゼを連想させるものがあります(特にヨーロッパにおいて)。そして、その美学に調和する形で、ミニマルな衣服を組み合わせた〝静〟の美学を演出するファッションスタイルが生み出されます。

あくまでもファッションアイテムそれぞれがミニマルであって、スタイルにミニマルという言葉は相応しくない。メルヴィルブルーとアラン・ドロンの青い目と白い肌は見事に調和が取れ、メトロで走るドロンのコートのドレープと、革靴の響きがサムライのダンディズムを昇華させます。ファッションとは、ドレープと音なのです。そのコートの揺れと、靴の音なのです。

ナイトクラブのクロークを演じるカトリーヌ ジュールダン。かなり印象的な今風の金髪美女。グレーのチェスターコートに白のタートルネック。赤のバッグ。

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サムライ スタイル2

チェスターフィールドコート
  • ダークネイビーのチェスターフィールドコート
  • ダークネイビーのスーツ
  • 白のボタンダウンシャツ
  • 細身の黒のネクタイ
  • 同じグレーのフェドーラ帽
  • 黒のレザーシューズ

チェスターフィールドもまたよく似合う。

メトロを上手く生かしたメルヴィル・ブルーの色調。

マイケル・ジャクソンが引用することになる白手袋。

敵の殺し屋のコートはバーバリー

座禅を組んでいるかのような和的な対座シーン。

ジャック・ルロワの佇まいもまた美しい。

印象的なのが、敵対する金髪の殺し屋が着るバーバリーのトレンチコート姿です。彼もまたもう一人のサムライでした。

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その名はヴァレリー。ガンダムで言うところのララァ・スン

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カティ・ロジェ(1945-2007)。デビュー作にして彼女の最高傑作。

ブラック・ビューティー。まさに60年代のブラック・アイコンです。

ナタリー・ドロン以上に印象的な女性でした。

彼女との共演シーンのドロンはとても魅力的でした。

フランスの有名な毛皮メーカーのロベール・ボーリューのアニマル柄のファーコートに身を包む褐色の美女ヴァレリー。サムライの殺人行為の唯一の目撃者であり、サムライが愛してしまった唯一の女性。

彼女もまた静かな所作がすごく魅力的なサムライのような女性なのです。演じるのは本作がデビュー作のカティ・ロジェ。そして、彼女こそが、80年代にアニマル・ファーに身を包むナオミ・キャンベル・イメージの原型になった人なのです。

サムライとヴァレリーの対話は、ハードボイルドの真骨頂であり、それは誤解を厭わずに言うならば、サムライが命をかけるべき姫様を見出した瞬間でした。サムライとは、孤独であり、決して報われぬ愛に準じる人なのです。この作品の魅力は、報われぬ愛に準じる二組の男女の姿にあるのです。

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そして、サムライは、笑いながら死ぬ。

幻のスマイリング・デス・シーン。

『サムライ』は、沈黙と直感と行為とを扱った、非フランス的な作品で、言葉は何ら重要ではなく、情感は久々の濡れたようなパリの街の描写をアラン・ドロンの哀愁に充ちた目で尽くしている。この映画が殺し屋の沈黙の中に充填したエネルギーは、たしかに密度が高い。それは何らニヒリズムではない。情熱でもない。キリッとした、手ごたえのある、折目節目の正しい行動の充実感である。

三島由紀夫『三島由紀夫映画論集成

ちなみにラストシーンは2種類撮影されました。最後の最後にサムライが笑いながら死ぬシーンです(本当はこちらをメルヴィルは使用する予定でした)。しかし、昔のドロンの主演作で笑いながら死ぬシーンがあったので、ラストシーンは入れ替えられたのでした。

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多くの映画に影響を与えた『サムライ』

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アラン・ドロンの表情の持つ底冷えする恐ろしさ。

この作品に影響を受けた作品として挙げられるのが、ウェルター・ヒルの『ザ・ドライバー』(1978)、『ウェリアーズ』(1979)、そして、『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)です。

他にもジョン・ウーの『狼/男たちの挽歌・最終章』(1989)、ジム・ジャームッシュの『ゴースト・ドッグ』(1999)をはじめ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ、北野武、フランシス・フォード・コッポラ、ジョニー・トー、デヴィッド・フィンチャー、リュック・ベッソン、マイケル・マン等の諸作品と挙げるときりのないほどの影響を与えています。

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アラン・ドロンのサムライ・ブランド。

トレンチコートを鎧兜に変えた男。

アラン・ドロンと競演するのは二度目だった。・・・しかし、二回とも失敗だった。ほんとうに、ドロンとバルドーの組み合わせはうまくいかなかった。そもそも、私たちの関係は温かみも共感もないまったく儀礼的な域を越える事がないものだった。彼はひたすら自分の顔とあの有名なブルーの瞳がどう映るかにしか関心がなく、自分の目の前にいる女など、その他大勢と同じ一つの影としか思っていなかったのである。・・・

彼の表情、あの瞳には、情熱、感情、真実を感じさせるもの、人の心をとらえ、感動させるものはなにもなかった。

ブリジット・バルドー自伝より

この作品の本質にあるものが、バルドーの言葉から見えてきます。つまりアラン・ドロンという男性は、恐らくこの作品のような生き方を望んでいた稀有な俳優だということです。そんな彼が1979年より香水事業をスタートさせます。そして、1995年に世界的大ヒットとなるフレグランスサムライをローンチします。その香りのイメージは、『レッド・サン』(1971)で競演したドロンがリスペクトする三船敏郎をイメージしたものでした(香りからはそんなイメージは全く漂ってきません)。

そして、2001年には「サムライ・ウーマン」をローンチさせ、大ヒットさせます。ライセンス商品とはいえ、アラン・ドロンがその商品名にサムライとつけたのは、それだけこの作品に対する愛着が深かったからなのです。

今の世界中の男性に足りていないものが、この作品を見ると、よく見えてくるのではないでしょうか?男性に許されるスタイリッシュさとダンディズムのバランス。それを楽しむ心。そして、それが儀式になる習慣。本当の意味での男性の美しさが理解できる作品の一つです。

作品データ

作品名:サムライ Le Samouraï (1967)
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
衣装:クレジットなし
出演者:アラン・ドロン/ナタリー・ドロン/カティ・ロシェ

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