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ゲラン

【ゲラン】ベガ(ジャック・ゲラン)

ゲラン
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ベガ

原名:Vega
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1926年
対象性別:女性
価格:不明

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太陽よりも明るく輝く香り

©GUERLAIN

©GUERLAIN

1926年に、ゲランの三代目調香師ジャック・ゲランによって調香された「ベガ」は、とても神秘的かつロマンティックな名を持つ香りです(アメリカでは1936年に発売された)。「ベガ」とは、琴座で最も明るく輝く恒星の名であり、別名〝織女星(おりひめの星)〟。

クラウディオス・プトレマイオスにより設定された琴座の恒星「ベガ」は、全天でも5番目に明るく輝く星(太陽の54倍の明るさ)です。アラビア語で「急降下するワシ」の意味です。

夜間飛行」もそうなのですが、当時、天文学に対して並々ならぬ関心を持っていたジャック・ゲランらしい着想源と言えます。

そして、この香りが、1936年にアメリカで発売された時には、〝ハリウッドスターを称える香り〟として売り出されました。

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肌の中でオルフェウスの竪琴が奏でられる

冥府からエウリュディケーを救い出すことに失敗したオルフェウス。

「オルフェウスの頭を見つけたニンフたち」ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス、1900年。

「オルフェウス」ギュスターヴ・モロー、1865年。

愛する妻エウリュディケーを毒蛇に噛まれ失ったオルフェウスは、妻を取り戻すために冥府に入りました。父アポロンに伝授され、素晴らしい竪琴弾きだった彼が奏でる竪琴の音は、冥界の王ハーデースさえも魅了しました。

そして、「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件で、エウリュディケーの返還を認めさせることに成功するのでした。

しかし、目の前に光が見え、冥界からあと少しで抜け出すというところで、後ろにいる妻を一刻も早く抱きしめたいと焦る心から、振り返ってしまい、妻は永遠に彼の前から姿を消すことになったのでした。

やがて失意のオルフェウスは、アルゴー探検隊にヘラクレスと共に加わり活躍するも、後にディオニュソスの恨みを買い、八つ裂きにされ殺されるのでした。そして、その首と竪琴は、レスボス島に流れ着き、彼の竪琴はその死を偲んだアポロンによって天に挙げられ、琴座となったのでした。

琴座の中でもっとも強く輝く星「ベガ」の名を冠した香りは、25光年の時を経て、渦巻く星雲のようなアルデハイドの煌きの中、インドールの強いジャスミンとクリーミーなイランイラン、甘いオレンジフラワーが幻想的な輝きを放つようにしてはじまります。

どうやらこの星雲は、ゲラン製バニラによって満たされたミルキーウェイのようです。それはどこかシャネルの「N°5(No.5)」を彷彿させます。

やがて、三つの花が恒星ベガの光の下、花蜜を滴らせてゆきます。そして、パウダリーなローズとアイリスがこの花蜜を掬い取るように甘さを加え、うっとりするようなソーピィーな温もりに香り全体は包まれてゆきます。

クリーミーなサンダルウッドとアンバーが、神話の星雲に解き放たれた心を地上に揺り戻すように、オルフェウスが奏でる竪琴の音色が肌の中に解き放たれるように、(「サムサラ」や「ボワ デ ジル」のような)至福のウッディオリエンタルのドライダウンへと導いてくれるのです。

1998年に、四代目調香師ジャン=ポール・ゲランにより再調香され、オリジナルのバカラボトルに封印され、850個限定で販売されました。さらに2005年に、シャンゼリゼ通り68番地の店舗を改装し、地上3階の「メゾン・ド・ゲラン」 が完成した時に、再び限定発売されました。

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香水データ

香水名:ベガ
原名:Vega
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1926年
対象性別:女性
価格:不明



トップノート:アルデハイド、アフリカン・オレンジフラワー、ベルガモット
ミドルノート:カーネーション、イランイラン、ジャスミン、ローズ、アイリス、ブラックカラント
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、バニラ、ムスク