グリ ディオール
原名:Gris Dior
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2017年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/19,140円、125ml/39,600円、250ml/55,880円
公式ホームページ:ディオール
21世紀にムッシュ・ディオールが生きていたら愛したであろう香り
グレーとピンク、この二色が、私がクチュールにおいて最も愛するカラーです。
クリスチャン・ディオール
もしディオール グレーが香水であったとしたら?この際立つグレーは、単に白と黒を混ぜた色ではなく、いくつもの色をブレンドすることで生まれた色です。こうした豊かな色彩から着想を得て生まれたのが、ジャスミンとベルガモットに森の下草の香りを重ねたコンポジションです。
フランソワ・ドゥマシー
ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」は、2004年に「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」「ボア ダルジャン」といった3種類の香りが発売され、2009年に「アンブル ニュイ」が発売されました。そして、2010年に一挙7種類の香りが発売され、「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」が廃盤となり全9種類となりました。
その翌年の2011年に「パチョリ アンペリアル」が発売され、2012年には2種類の香りが発売されることになりました。そして2013年に「グリ モンテーニュ」です。ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。
2018年にディオールは、「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」を「メゾン クリスチャン ディオール(MCD)」の名に改め、専用ブティックと共にフレグランス・エキスパート制度を敷き、ボトルをリニューアルして、新たなる展開を図ることになりました。その前年にあたる2017年に「グリ モンテーニュ」は、「グリ ディオール」の名で発売されました。
メゾンとしてのディオールは、クリスチャン・ディオール(1905-1957)によって、1946年12月16日にモンテーニュ通り30番地で創業されました。この建物を包み込むパールグレーは、やがてモンテーニュ・グレーと呼ばれるようになりました。そして、1947年2月12日にこの建物で「ニュー ルック」が発表されたのでした。
そんなディオールのアイコニックカラーのひとつであるグレーを香りの名に付けたこのシプレフローラルの香りは、輝かしいディオール・フレグランスの扉を開いた〝不滅のシプレ〟「ミス ディオール」への永遠の愛の誓いの香りです。
〝土がなくても水がなくても、イキイキと生きているバラ〟の香り
白と黒から生み出されたグレーではなく、さまざまな色が混ざり合い生み出された〝色褪せないグレー〟の香りは、スプレーをひと吹きした瞬間から、あっという間に1946年12月16日から1957年10月24日のクリスチャン・ディオールが生きていた『ディオールの世界』へと運んでくれます。
Z世代バージョンに進化したとも言える「グリ ディオール」は、よりクリーミーにローズとジャスミン、オークモス、パチョリが混じり合い、ひとまとめになるように生み出されています。
それは明らかにエディ・スリマンにより2001年AWよりスタートしたディオール・オムが、2019年SSよりキム・ジョーンズの指揮の下、ディオール(ディオール メンとも呼ぶ)という名称に戻ったように、男女の境界線をより自由に往復できる香りにアレンジした、クロスジェンダー・フレグランスへと進化したようです。
そんな新しい感覚の中に、ディオールの〝不滅のルック〟を融合させたこの香りは、輝く太陽が弾けるようなベルガモットの煌めきに、モノクロームのフィルターをかけていくように、苔むすアンニュイなオークモスと墨のような清濁併せ持つパチョリが混ざり合うようにはじまります。
まるで限りなく透明に近いグレーのベルガモットのモーニングシャワーを降らせてゆくのです。そしてターキッシュローズとインド産ジャスミン・サンバックが朝露を滴らせながら花を咲かせてゆくのです。そこにほんのりとストロベリーの香りが添えられてゆきます。とても謎めいた空気に満たされていきます。
やがて、クリーミーなサンダルウッドとドライなシダーが、モンテーニュ・グレーのパールのような輝きを与え、素肌の上に引き伸ばされてゆくのです。最後に、その素肌の上に、砂時計シルエットのクチュードドレスを着た女神(またはドロップ10のブラックスーツを着た紳士)が誕生するように、凛としたシプレローズが開花してゆくのです。
実に興味深いのは、この香りのローズは、大地よりも天空をイメージさせるところにあるのです。21世紀の新しいローズ、それは高層ビル(商業施設も含む)に咲くメタリックローズ(笑顔と涙の中で生き生きと咲き誇る女性と男性)の香りとも言えます。土っぽさよりも、洗練された空間を連想させる〝土がなくても水がなくても、イキイキと生きているバラ〟の香りなのです。
千鳥格子柄のボックスのコスメを巧みなデザインとPR戦略により、Z世代のあらゆる心に刷り込んでいくように、巧みにブレンドされたネオシプレです。「何が好きか嫌いか分からない、PRの影響を受けやすい人」にも、香水愛好家にもどちらにも愛される香りと言えます。
香水データ
香水名:グリ ディオール
原名:Gris Dior
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2017年
対象性別:ユニセックス
価格:40ml/19,140円、125ml/39,600円、250ml/55,880円
公式ホームページ:ディオール
シングルノート:ベルガモット、ダマスカスローズ、インド産ジャスミン、インドネシア産パチョリ、アンバー、シダー、サンダルウッド、マケドニア産オークモス