ディオール オム コロン
原名:Dior Homme Cologne
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランシス・クルジャン→フランソワ・ドゥマシー
発表年:2007年、2013年
対象性別:男性
価格:75ml/14,300円、125ml/19,250円
公式ホームページ:ディオール
エディ・スリマンとフランシス・クルジャンの幻のコロン
(1995年から2004年にかけて)ディオールのパルファム部門のグローバル・マーケティング・ディレクター、サビーナ・ベッリは、1999年に「ジャドール」により見事アメリカ市場を再度席巻することに成功しました。その勢いの中、1997年に「デューン プールオム」が果たせなかった、メンズ・フレグランス市場へ再挑戦したのが、2001年に発売された「ハイヤー」でした。しかし、期待していた成功を収めることは出来ませんでした。
あまり知られていないのですが、2001年(2001-2002秋冬のパリコレクションから)よりクリスチャン・ディオール初のメンズ・ライン、ディオール・オムをスタートさせたエディ・スリマンがこの香りに深く関わっています。彼は元々1997年にイヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュのメンズラインのクリエイティブディレクターに抜擢されるも、2000年にイヴ・サンローランがグッチ・グループに買収され、ディオールに移籍することになりました。
ディオール・オムが社会現象と言えるほどに大旋風を巻き起こし、2003年夏に3年間の契約延長をし、メンズフレグランスのクリエイティブ・ディレクターも兼任することになりました。かくして「ハイヤー」に引き続きエディ・スリマンが関わった香りが、2004年に誕生した、ディオール・ラ・コ レクシオン・プリヴェの「ボア ダルジャン」、「オー ノワール」、「コロン ブランシュ」の3つのユニセックスの香りでした。
そして、この延長線上に生み出されたディオール・オム初のメンズ・フレグランスが、2005年の「ディオール オム」でした。それはエディが調香界の若き貴公子・オリヴィエ・ポルジュとタッグを組み「21世紀に新たに付け加えられた男性にとってのエレガンスの最後のアイテムとしてのコロンの一提案」として創造されました。
アイリスを男性用フレグランスのために使用すべく、シャネルのNo.19からヒントを得た画期的な香りであり、アイリスの女性らしさとベチバーの男性らしさが巧みにブレンドされています。まさにメンズ・フレグランスにフローラル旋風を巻き起こすきっかけになりました。
それは、それまでメンズ・フレグランスにおけるフローラル(この香りまで10の香りしか存在しない)と言えば、ラベンダーとローズしかなかったフローラルにおける「第三の男」を生み出した瞬間でした。
さらに、2007年に「オー ノワール」と「コロン ブランシュ」の調香師であるフランシス・クルジャンと共に生み出したのが、「ディオール オム コロン」でした。オリジナル版のボトルのスプレーはブラックで、ジュースが黄色なのが外観的特徴です。
「さあ、ボクをつかまえてごらん」と誘うような危険な香り
トップノート:ラベンダー、ネロリ、セージ、カルダモン、ベルガモット、マンダリン
ミドルノート:アイリス
ラストノート:カカオ、アンバー、レザー、パチョリ、ベチバー
オリヴィエ・ポルジュによる「ディオール オム」が醸し出すメトロセクシャルの精神をよりライトにしたこのコロンは、ディオール・オムのブラックスーツで決めている男性の隙のない雰囲気の中に、アゲハ蝶が彷徨い込んでくるような、どんなクールビューティな男の心さえもよろめかせてしまう、優美さに満ちています。
すべてが滑らかに、柔らかく、華やかなこのコロンには、女性の熱いくちづけの残り香(アイリス=口紅の香り)に、ココア×レザーがパウダリーな甘さを注ぎ込ませ、スペシャルブレンドしていくように、清々しい男性の魅力を引き出してゆきます。
最初に現れる、カルダモン、ほのかに香るシトラスの輝きは、若かった頃のクルジャンとエディの優雅さを投影しているように、きらきらと煌めく太陽のようです。太陽に愛される男が、朝日を受け、女性のくちづけを受け、温かなココアとアイリスの香りを漂わせ、ふんわりとネロリが香る花園を舞う白い蝶のような優雅さで、大都会へと舞い上がるのです。
「さあ、ボクをつかまえてごらん」と誘うような危険な香り。恐らく、あまりにも危険すぎるためこの白い蝶は消えてしまったのでしょう。
2013年にリニューアルされ、グレープフルーツコロンに生まれ変わる。
2013年にディオールの専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより、「ディオール オム コロン」はリニューアルされました。メトロセクシャルの精神を投影した香りから、180度転換し、「洗いざらしの白いシャツを纏うような清潔感」というテーマで生み出されたこのニューコロンは、柑橘系の甘さを抑えつつも、目が覚めるような爽快感が持続します。
そんな爽やかなカラブリア産のベルガモットの果汁弾けるトップノートからはじまります。そしてすぐにこの香りのためにはじめて使用されたという珍しいエッセンスが登場します。
それはグレープフルーツフラワーの花びらを水蒸気蒸留することにより採ることが出来るエッセンスです。ベルガモットとこのエッセンスがひとまとめになることにより、熟したシトラスというよりは、爽やかにふんわりと広がるグレープフルーツの芳しい甘やかさに包み込まれてゆきます。
かなり過小評価されているオーデコロンです。このコロンが傑作である所以は、着るものとの調和をドゥマシーが考えたのであろう、身にまとう人の美しさを補う、美しさを強引に重ね合わせるのではなく、あくまでも補ってくれる、優しさがこのグレープフルーツにはあります。どこかレモネードのようなグレープフルーツの優しい涼やかさに満たされるようです。
そして、ドライダウンにおけるホワイトムスクが、このエッセンスと絡み合い、イエローミストを柔らかく広がらせてゆきます。つまりはフレッシュすぎず、ツンとしすぎず、ジューシーすぎず、甘酸っぱすぎず、でもそこにはシトラスの魅力がぎゅっと詰まっている、そんな唯一無二な〝シトラスの抱擁〟を受け止める贅沢さがあるのです。
一日の戦いの前に、白シャツに、細いタイと細身のディオールオムのスーツに身を包む。そして、頭上にこの香りをスプレーから解き放ち、その下を潜る。どこまでも前向きな気持ちになれる〝爽やかに戦いに臨むフレグランス〟です。
白の魅力を伝える香りでありながら、太陽の下でたわわに悠々と実るレモンのイエローの色彩が脳裏に蘇る香りです。まさに香りのビタミンCです。
2013年の広告キャンペーン・モデルとして、ジュード・ロウ、フォトグラファーはピーター・リンドバーグが起用されました。さらに2014年には広告イメージを一新し、『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンを起用されました。
2022年にボトルデザインが一新されました。
2022年にボトル・デザインが変更されました。2007年版と2013年版との間にはほとんど関係性が感じられないのですが、この2022年版は、2013年版からほとんど変更が加えられずに、香りが継承されています。
香水データ
香水名:ディオール オム コロン
原名:Dior Homme Cologne
種類:オード・トワレ
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2013年
対象性別:男性
価格:75ml/14,300円、125ml/19,250円
公式ホームページ:ディオール
トップノート:カラブリアン・ベルガモット
ミドルノート:イタリアングレープフルーツフラワー
ラストノート:ホワイトムスク