美魔女であることに疲れませんか?
40代から50代にかけて、美しい女性であることは実に素晴らしいと思います。しかし、その美しさが、表面的なもの。もしくはただ夫の財力にすがりついた虚構であるならば、それはただの昔から存在する、金持ち亭主にぶら下がる有閑マダムに過ぎません。
美魔女と呼ばれる人々が、恐らくそれを取り巻く人々の美辞麗句によって、とても下品な存在に見えていることに、残念さを感じずにはいられません。だってアンチエイジングなんて存在するわけはないのですから。そんな魔法の言葉が金になるから、ファッション誌は、「バカなオバサンを騙そう」というノリで陳腐な専門用語を並べ立てるのです。それならば、「しわは私の戦友よ」なんて言ってるほうが、よっぽどカッコいいと感じます。
手術で切って、引っ張って、メイクして、クリームをべったり塗って、家事も何も出来ない時間をただぼ~っと美容のために過ごして、メイクをして、ただお金を使う日々を過ごしていたら、アンチエイジングどころか、早期ボケ老人の仲間入りを果たしそうな気がします。本当の気品のある人たちは、ブログなどで自分の生活を誇示しないことを私は知っています。ただ仕事でその生き様、スタイルを見せるのが、本当の美魔女だと思います。
ポーランド貴婦人ルック6
- ロング・ホワイトドレス。タイトなジャケット
- 白のレザーグローブ
- ヴェール付きハット
- 白のレザーブーティ
- ブローチやパールネックレスなどのアクセサリー(全てシルヴァーノ様の私物)
稀代のファッション・モデル、マリサ・ベレンソン
シルヴァーナ様の影に隠れるように、実に印象の薄い役柄で、当時の人気ファッション・モデルであるマリサ・ベレンソン(1947- )が出演しています。祖母はファッションデザイナーのエルザ・スキャパレリ。173cmの抜群のスタイルを生かして、1960年代、70年代はファッションモデルとして活躍し、本作で女優デビューを果たしました。後に『キャバレー』(1972年)『バリー・リンドン』(1975年)『ホワイトハンター ブラックハート』(1990年)などで活躍。
生きている映画の中に、本当の女優は生き続ける。
『ベニスに死す』は、カメラを長く回しているシーンが多いです。例えば、シルヴァーナ様の一家が映し出され、優雅にカメラは踊るようにパンしていくと、アッシェンバッハがいて、もう一度パンをして、一家を映し出すという一連の流れに代表される同じ空間に時を過ごしている空気感が、1971年の映画の中の登場人物に永遠の生命を与えます。
もっとテンポのいい映画が大好きなんです。という方には、非常に申し上げにくいのですが、一から古典文学を読書して忍耐力をつけることをお勧めします。ファッションを理解することにおいて、何よりも重要なことは、古きを知り、新しきを知るなのです。ゆったりとした空間でしか、掴めない真実が沢山あります(本作でいうところの、シルヴァーナ様の貴族の装いとその魔性の人工美が起こす化学反応など)。EDMが流れるクラブで知るファッション・センスなぞが、ぶっ飛ぶほどのファッションの真髄を知りたければ、あなたは孤独の中で、優雅な時間を楽しめるようにならなければならないのです。
ファッションとは、それを装える空間がどこかになければ死んでしまうものです。映画の中で1910年代が生き生きと再現されています。だからこそ、その当時のファッションが映画の中で密封された状態で生き生きとしているのです。そんな1910年代から今に継承していけそうなものを探してみることが、ファッションの真髄なのです。