アンドロギュヌス

ビョルン・アンドレセン1 『ベニスに死す』1(2ページ)

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作品名:ベニスに死す Death in Venice (1971)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
衣装:ピエロ・トージ
出演者:ダーク・ボガード/ビョルン・アンドレセン/シルヴァーナ・マンガーノ/マリサ・ベレンソン



世界よ。今こそ、ビョルン・アンドレセンに跪け!

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アンドロギュヌス=タジオ=ビョルン・アンドレセン。

セーラー服が似合う美少年はなかなかいません。

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ホテルのセットデザインの素晴らしさ。全ての調度品はヴィスコンティ自身と、友人の貴族から借り入れたものである。

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セーラー服の素材感の良さが容易に伝わってきます。

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このタジオが実に可愛らしいです。母親役のシルヴァーナ・マンガーノも、顔の作りがアンドロギュヌス的で美しいのです。

アッシェンバッハ「それでは君は、芸術家が美を精神的に創造する力を、否定するというのかね?」

アルフレッド「努力、まさにだ!あなたは、まさしくそう言った。私には美が努力の産物とはとても考えられない」

アルフレッド「美はこのようにして生まれるのだ。自発的に、われわれの努力を全く無視して、芸術家としてのわれわれの想像を超えて存在するのだ」

25分が過ぎようとした時に、天使は舞い降りた。純白のセーラー服に身を包んで現れたビョルン・アンドレセンの美しさに、私はアッシェンバッハのように夢中になりました。女性のように見えると言うよりも、寧ろ、男性とも女性とも言いようのない神話的な雰囲気に包まれているタジオの雰囲気。そして、どこまでも劇的な存在感を出してくれる、ハリウッドスターには出せない重厚感溢れるダーク・ボガード(1921-1999)の魅力。

私は、タジオ=ビョルン・アンドレセンが永遠の輝きを帯びることが出来たのは、ダーク・ボガードの文学を映像に転換できるこの重厚感と、シルヴァーナ・マンガーノのこの世に存在していない存在感によるものだと確信しています。この2人の名優の存在する空気をタジオが吸う距離感にいたからこそ、世界史に残るアンドロギュヌスは生誕したのです。

この少年の完璧な美しさにアッシェンバッハは唖然とした。少年の蒼白で優美な慎みのある顔立ち、蜂蜜色の髪に縁取られ、鼻筋はまっすぐ通り、口元は愛らしく、優しく神々しい厳粛な感情をたたえ、最も高貴な時代のギリシア彫刻を思わせる。しかも形式の完璧にもかかわらず、そこには強い個性的な魅力もあって、アッシェンバッハは自然の世界にも芸術の世界にもこれほどまでに巧みな作品をまだ見たことはないと想ったほどである。  ー 『ベニスに死す』トーマス・マン

アンドロギュヌスとは何か?それは男でも女でもない存在。それは豊胸手術や性転換をしたニューハーフと呼ばれる人々を指す言葉でもない。女性の姿をして、男性からお金を巻き上げる類の男の娘と呼ばれる肉体(もしくは色)を売るだけのことしか出来ない人々のことを指す言葉でもない。アンドロギュヌスはそれらの人とは全く異質の存在である。一言で言うと〝選ばれし人〟なのである。もしくは、美に憑かれた人である。美しさと同じくらい知性も高い人のことである。

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  • 白の長袖のセーラー服。V字型の胸元に襟とカフスがネイビー地に白ボーダー。同色のスカーフ。
  • 胸ポケットから出た白紐がスカーフを固定するように巻きつける部分にリンクしています
  • 美少年仕様になっているデザイン




一羽か数羽のつばめでは春は来ない

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襟とカフスが白地バージョンです。

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ヴィスコンティ監督とリハーサル。セーラー服の上着が微妙に違う。

どんな理由をつけようとも、この映画の中の美しきアンドロギュヌスであるタジオは、無邪気さを装いつつ、アッシェンバッハに誘惑の眼差しを向けていることだけは間違いない。それはまさにフランツ・フォン・シュトゥックの絵画に出てくるファム・ファタールたちのような眼差しです。撮影当時15歳の少年から、かくも妖艶な眼差しを捉えることに成功したヴィスコンティ伯爵は、如何にしてこの少年の魔性を呼び覚ましたのでしょうか?

それについては後述するとしよう。まずここでは、ビョルン・アンドレセン(1955- )について語ろう。ポーランド貴族の子息タジオを演じたビョルンは、貴族ではなくスウェーデン・ストックホルム出身の不幸な生い立ちの少年でした。5歳のとき、父親に捨てられ、母親は自殺。そして、10歳から祖母に育てられ、ストックホルムの音楽学校でクラシック音楽を学んでいたが、ビートルズに憧れ、13歳から友人たちとバンドを組んでいました。

この祖母のアドバイスで、本作のオーディションを受けました。ビョルンの音楽的素養もヴィスコンティにとって重要でした。グスタフ・マーラーの交響曲第5番の第4楽章〝アダージェット〟が全編を包み込む映画で、それが分からない少年をタジオにすることは出来ないと考えていました。

1971年10月の日本公開に先駆けて、8月11日から19日の9日間、ビョルンは、映画のキャンペーンと明治製菓「エクセル」のCM撮影のため来日しました。その後同年末にあと一度だけ来日しています。まだ時代が早かったのです。この美しい少年は、アンドロギュヌスという概念ではなく、美少年愛の象徴として祭り上げられ、そのイメージの払拭に苦労したと言います。結局、1983年に詩人の女性と結婚し、現在はストックホルムでプロのミュージシャンとして慎ましく活動中です。



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