とんでもないバカなことを大真面目でする男たちの魅力。
4作目にしてますます加速的に魅力が増すジェームズ・ボンドの世界。新しいものを常に取り入れながらも、伝統とのバランスを上手く取っている所にボンド・ムービーの最大の魅力があります。ただ新しいものだけでなく、古き良き普遍的なものがそこにしっかりあるからこそ、ボンドムービーはひとつの宇宙を作り出すことに成功したのです。
グレースーツを着て、空を飛び、ダイビングスーツを着て、サメや敵の追跡をかわし、ビキニ美女を追いかけ、最後にはヘリのフックで飛び去っていく(ちゃっかりビキニ美女と共に)。
本当にどこまで空を飛ぶことが好きなのでしょうかこの男は・・・と呆れつつも、そんなジェームズ・ボンドから目が離せなくなるのです。
とんでもないバカな事を真面目にやってのけようとする大人たちの中にこそ、普遍的なファッション感覚は宿ると常に気づかせてくれる存在。それがショーン・コネリー時代のボンドムービーなのです。だからこそ生真面目な現代男子にとって新鮮なのです。

普遍的なカジュアル・スタイルを散りばめつつ。
ジェームズ・ボンドのファッション10
マリーンルック
- 白ショートスリーブのスポーツシャツ。白地にブルーのブッチャーストライプ、キャンプカラー、胸ポケット、サイドベンツ
- クリームリネントラウザー
- ブラウンレザーのスリーストラップ・サンダル
- ブライトリングのトップタイム ref.2002、ガイガー・カウンター付き

美しいカリブ海に映えるブルーのストライプシャツ。

世界各地を観光するかのように諜報活動するジェームズ・ボンドという男。

ボンドガール・ドミノとのピンクとブルーのペアリング。

バハマの青い海に溶け込むストライプのカジュアル・シャツ。

ブライトリングのガイガー・カウンター付きトップタイム ref.2002

逞しい肉体が存在するからこそ映えるタイトめのシャツと、ゆったりめのクリーム色のリネン・パンツのバランス。

ブラウンレザーのスリーストラップ・サンダル
撮影当時に行われたプレイボーイ誌のインタビュー

元祖・峰不二子のバスルームに突入する。

ボンドムービーで定番化されるシチュエーション。
プレイボーイ:ジェームズ・ボンドの小説と映画の驚異的な成功についてどう解釈していますか?
ショーン・コネリー:まあ、タイミングが大きく影響したね。ボンドが登場したのは戦後、人々が配給制度や退屈な時代、実用服、そして生活の大半を灰色に染めていた時代に嫌気がさしていた頃だ。そこに現れたこの人物は、その全てをバターを切るように軽々と切り分けていく。彼の服装、車、ワイン、そして女性たち。ボンドは現代版サバイバルキットのような存在だ。男性は彼を模倣したいと思う ――― 少なくとも彼の成功を。そして女性は彼に興奮する。
プレイボーイ:女性に対してあなたとボンドの共通点はありますか?
ショーン・コネリー:まあその分野ではある程度の経験はあると思うよ。でもイアン・フレミングが描いたような女たらしでは決してなかった。もちろん、美しい女性への興味や鑑賞眼がなくなることはないさ。たとえそれにふけることはなくてもね。今でも女性の交際は好きだ ――― だが同時に男性の交際も楽しむ。もちろん、それぞれ違った楽しみがある。
プレイボーイ:ボンドはなぜモテるのでしょうか?
ショーン・コネリー:ボンドが女性に魅力的に映る理由の一つは、彼が決断力があり、残酷でさえある点だろう。女性の性質上、決断力に欠けるものだからだ ――― 「これを着ようか?あれを着ようか?」と迷う。そこに何事にも絶対的な確信を持つ男が現れれば、まさに天の恵みとなる。そしてもちろん、ボンドは決して女性に恋をしない。それが効果を上げる。彼は常に自分の望むことを実行する。女性はそれを好む。だからこそ、自分たちに全く興味を示さない男性に多くの女性が夢中になるのだ。
プレイボーイ:ボンドブームがあなたを富と名声で満たした以外に、人間として、あるいは俳優として根本的に何か変化をもたらしたと感じますか?
ショーン・コネリー:いや、俺は昔から変わらぬままだ。スコットランド人で、少し内省的だ。嘘はつかないし、真っ直ぐなやり方を好む。腹を立てることは滅多にない。だから仕事中に怒りを露わにすることは決してない。ケルト人らしく気分の浮き沈みはあるが、それを人に見せることは特に好まない。むしろ自分の中に留めておきたい。だが、誰かがその気分に踏み込みたいなら、どうぞご自由に。おそらく私は外向的というより内向的だと言えるだろう。
ジェームズ・ボンドのファッション11
潜入者スタイル
- ブラックカシミヤロングスリーブ・ポロシャツ、袖と裾はリブ編み
- ブラックウールトラウザー、サイドアジャスター
- ブラックレザーブーツ

前半の保養所シーンで着ていたポロシャツが再登場。

ポロシャツのボタンの数がよく分かる写真。

オールブラックなので諜報員らしいファッションです。
ジェームズ・ボンドのファッション12
アイコニック・グレースーツ
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- グレーのモヘアスーツ、シャークスキン、2つボタン、ナローラペル、ノーベント
- ターンブル&アッサーのミディアムブルー・ボタンダウン・ドレスシャツ
- ミッドナイトブルー・グレナディンタイ
- 黒のレザースリッポン

『サンダーボール作戦』で最後に登場するボンドスーツ。

グレー×ミディアムブルー×ミッドナイトブルーのカラーバランスが絶妙です。

女殺し屋フィオナを盾にして、敵の闇討ちを回避するボンド。

ショーン・コネリーにはグレーのスーツがとても似合います。

シューズはスリッポンです。しかし足が長い。

サイドアジャスターのトラウザーです。

絶体絶命のピンチになる時、ボンドスーツは最も魅力的なオーラを放つ。

ミディアムブルーのシャツとグレースーツと、ボンドガールのミディアムブルードレスの見事なコントラスト。
ジェームズ・ボンドのファッション13
ギンガムチェックシャツ
- ブルー・ギンガムチェックシャツ、キャンプカラー、胸ポケット、サイドベンツ、ピンクのギンガムチェック・シャツの色違い
- ライトブルーのジャンセンのショーツ

敵のアジトを偵察するためにヘリコプターに乗り込むボンド

ドミノとプールサイドで会った時のショーツを履いています。

フェリックス・ライターのアロハの柄が素敵すぎる。

時計は、ロレックス GMT マスター Ref. 1675。
ジェームズ・ボンドのファッション14
ギンガムチェック・スタイルPART2
- ピンクのギンガムチェック・シャツ、キャンプカラー、サイドベンツ
- ライトピンクのジャンセンのショーツ
- ロレックス・サブマリーナー Ref.6538
- クールレイ「N135」、カリ・ミシェルがデザインしたウェイファーラー
ボンドは膝をついて、彼女の右足を取りあげた。小さくて柔らかくて、まるで手のなかにとらえられた小鳥のようだ。足の裏についた砂をはらい落とすと、爪先をぐっと伸ばしてみる。かわいいピンクの指の裏が、まるで小さな群生の花のつぼみみたいだった。・・・ボンドは棘のまわりの肌に歯を立て、できるだけそっと噛みながら、強く吸った。・・・歯のあとが白くついていて、ポツンとふたつの小さな穴に血が針の頭くらい出ている。その血を舐めて取る。・・・ボンドは言った。「女を喰ったのはこれが初めてだ。なかなかうまいもんだなあ」。
『サンダーボール作戦』イアン・フレミング(井上一夫訳:早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫版)

サングラスは、クールレイ「N135」。

ピンクのギンガムチェックのシャツをここまでダンディに着こなす人はなかなかいません。

シャツのギンガムチェックがよく分かる写真。

バハマのナッソーは、この作品以降、世界的なリゾート地になってゆきます。

なかなかピンク・オン・ピンクが似合う東洋人はいない。

本作で最も有名なシーンの一つ。うにの棘を取るために、女性の足の裏に吸い付くシーン。
作品データ
作品名:007/サンダーボール作戦 Thunderball(1965)
監督:テレンス・ヤング
衣装:ジョン・ブレイディ
出演者:ショーン・コネリー/クローディーヌ・オージェ/アドルフォ・チェリ/ルチアナ・パルッツィ/マルティーヌ・ベズウィック
- 【007/サンダーボール作戦】最初から最後まで空飛ぶジェームズ・ボンド
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.1|空を飛ぶショーン・コネリー
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.2|ショーン・コネリーとケン・アダム
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.3|ショーン・コネリーとダイビングウェットスーツ
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.4|ショーン・コネリーとラグジュアリー・リゾート
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.5|クローディーヌ・オージェという絶世の美女
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.6|クローディーヌ・オージェ=水中銃を持つ女
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.7|クローディーヌ・オージェとウェットスーツ
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.8|元祖・峰不二子 ルチアナ・パルッツィ
- 『007/サンダーボール作戦』Vol.9|ルチアナ・パルッツィとレーシングスーツ
