APOM プールファム
原名:APOM Pour Femme
種類:オード・パルファム
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2009年(日本発売は2012年9月)
対象性別:女性
価格:70ml/24,750円
まるで愛する人の素肌に自分の一部を残していくような香り

©Maison Francis Kurkdjian

サハラ砂漠
私は香水名をまず考え、その名前に導かれ、感情が呼び覚まされてきます。2009年に、官能性、明るさ、物憂げさをテーマにした香りのデュオ、快適でありながら輝きのある香りを思いつきました。
それは私が考案したA Part of Meの頭文字をとったAPOMというアイデアだった。この名前、この頭文字の独自性、とても喚起的で、とても特徴的で、とても個人的で、香水として非常に意味深いところが気に入りました。
フランシス・クルジャン
当時新進気鋭の調香師だったフランシス・クルジャンが、2009年にメゾン・フランシス・クルジャンを創業した時に発表した7作品のうちのひとつが「APOM プールファム」でした。オレンジ・ブロッサムとシダーウッドという共通の香料で表現する「APOM プールオム」とのペア・フレグランスとして発売されました。
APOMの意味は〝A Part Of Me〟(私の一部)です。シロッコの風(初夏にサハラ砂漠から地中海を越えてイタリアに吹く暑い南風)にインスパイアされたフロリエンタルの香りです。
アルメニア系フランス人のクルジャンには、レバノン人の祖母がいます。〝私の一部〟という名のこの香りは、彼が自分のルーツを探るレバノンへの旅と、花を咲かせたオレンジの木と、レバノンの国のシンボルである杉の思い出が投影されています。
一緒に時を過ごし、やがて〝私の一部〟となるオレンジ・ブロッサム

©Maison Francis Kurkdjian
〝私の一部〟。つまりクルジャンのパーソナルな香りと言えるこの香りは、石鹸のようでも、花粉が舞うようでも、自然を搾り取ったようでもない、フェミニンなオレンジ・ブロッサムの甘い花の蜜が素肌に到来するような、涼しげな感覚からはじまります。
派手なところは一切ないのに、ぱーっとその場が明るくなる、眩しすぎない太陽のような、清廉かつ上品な貴婦人を思わせる、清らかなフローラルの息吹に満たされてゆきます。ほのかにアーモンドの香りがアクセントとして感じ取れます。
すぐに温かいムスクの風に乗り、クリーミーでバターのようなイランイランと、太陽のようなアンバーが加わり、貞淑なるオレンジ・ブロッサムに、ミモザの如しイエローの輝きを与え、ほろ酔い気分にしてゆきます。
そんな中で、花の香りが突如として威力を放ち、心につきまとわないように、滑らかでパウダリーなシダーウッドが漂い、まるで愛する人の素肌に自分の一部を残していくように、甘美でフレッシュな余韻で満たしてくれるのです。
純粋にオレンジ・ブロッサムが、素肌の上に広がり、まさに〝私の一部〟となるように、まるでモーツァルトの『ピアノソナタ第16版 K.545』の調べのように、シンプルに心に染み込んでいく香りです。
これほどシンプルでエレガントな美しさは、ムエットの上では感動を覚えにくく、さらに言うと、肌に乗せても、なかなかピンと来ない。一緒に時を過ごして、その美しさを、ふとした瞬間に気づかされる香りです。つまり同じモーツァルトでも『交響曲第25番』のように、一瞬で心を揺さぶられるものではありません。
香水データ
香水名:APOM プールファム
原名:APOM Pour Femme
種類:オード・パルファム
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2009年(日本発売は2012年9月)
対象性別:女性
価格:70ml/24,750円
シングルノート:チュニジア産オレンジブロッサム、イランイラン、ヴァージニア・シダー