アンナ・カリーナの魅力。その運動量。
10代からキャバレーのダンサーをしていたアンナ。身体能力の高さが彼女の魅力です。いいえ、厳密に言うならば、元気溌剌とした子供っぽい動きと、少年のように日焼けした引き締まった肉体。そこに装着された二つの目の輝き。倒木の上を歩いたり、木々の間をくるくると回転する姿を無駄なカット割をせずに、ロングショットで押さえているので、彼女の躍動感が今も色褪せません。
現在の日本映画も含め、多くの映画の中で、女性が魅力的じゃないのは、カット割の多さから生まれています。それは役者のリハーサル不足、もしくは、力量不足をごまかすために使用されている場合が多く、こういった手口で生まれた女優の存在感は、容姿の美しさ程度の存在感しか生み出せません。カットが多いので、ファッションが生きず、その人物の現実感も生まれないので、外見から内面へと観客の心は入り込まないのです。
アンナが「私の生命線」を歌う。赤いワンピースが海が美しさに対して映えます。鹿のように飛び跳ねる若さ。永遠に焼き付けられた若さの記憶。ゴダールと1967年に決別することになったアンナ・カリーナが、2016年のインタビューでこう言っていました。「ゴダールとの作品は、いまだに多くの国の若者たちに新鮮な輝きを与えています。全く古びていないのです。そして、それらはゴダールが私に与えてくれたギフトでもあるのです」
ファッション・アイコン、スタイル・アイコンとして、多くのファッション誌において、アンナ・カリーナが登場します。時に一面で、時に片隅に。しかし、私達が忘れてはならないのは、ファッションとは、ただ写真を見て感じるものではなく、生きている姿を見て感じるものだということなのです。そして、ある種の映画の中においては、女優は生き続けているのです。
アンナ・カリーナ・ルック5 レッドワンピース
- 白いパイピングが施された真紅のショートスリーブワンピ。胸元に白い花のコサージュ。胸元は大きく開く
- バレリーナシューズ
もうファッションはサイクルしていない
かつて10年位前には、映画も10年も経てばその中のファッションはとても古めかしく見えたものです。しかし、今では、いつの年代の映画の中からも、人々は、古さよりも、新しさを見つけ出すようになりました。もう今ではファッションは回転していません。20年周期でトレンドが回るという感覚ももう存在しません。もしあるとしたら、それはトレンドを作って商品のサイクルを早めたいと考える取り残されしアパレル業者の方々だけです。
いまでは、ファッション・トレンドというものは存在せず。市場に溢れかえるファッション・アイテムの中から、人々が、自分の感性によって見つけ出すことが可能な時代になりました。映画の中でアンナ・カリーナが始めてトリコロールカラーのパンツルックで登場します。そして、このスタイルが信じられないほどに魅力的です。もうファッションという天体は、回転していません。あなたが回転する時代になりました。服はひとつの経験の時代になりました。そして、色々な服を身につけて生きることから、あなたのスタイルは洗練されるのです。
アンナ・カリーナ・ルック6 マリーンスタイル
- マリンキャップ
- サンドベージュのカーディガンをプロデューサー巻き
- 赤のカーディガン
- ターコイズブルーのハイウエストパンツ。短め
- 半そでの「MICMAC」白シャツ
- バイカラーの細ベルト
- 中国靴もしくはバレエシューズ(黒)
アンナ・カリーナ・ルック7 ショートパンツスタイル
- 赤のストライプ柄フロントジップ半袖シャツ
- 同柄のショートパンツ
- マリンキャップ
- 中に「MICMAC」白シャツ
アンナ・カリーナ・ルック8 死に装束
- ブルーと白のボーダー・キャミソール
- 赤のスカート
- 黒のメリージェーンシューズ
- 細い白ベルト