アンジェリーク ノワール(アンジェリーク ノアール)
原名:Angelique Noire
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ダニエラ・アンドリエ
発表年:2005年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/35,310円、100ml/49,500円、200ml/70,290円
公式ホームページ:ゲラン
日本語訳=ブラック・エンジェル
2005年、パリ・シャンゼリゼ通り68番地のゲラン本店のリニューアルオープンを記念して発売された「ラール エ ラ マティエール(芸術と貴重なる生の素材)」コレクション。
このコレクションは、今までゲランと全く接点のなかった3人の調香師が、時のクリエイティブ・ディレクター、シルヴェーヌ・ ドゥラクルト(マチルド・ローランと共にジャン=ポール・ゲランの下で学んだ女性)により選抜され生み出されました。
その3種類のうちのひとつとして発売されたのがこの「アンジェリーク ノワール」でした。アンジェリカという香料の潜在能力をとことんまで追求し、無邪気さと圧倒的な官能性の間の衝撃的な緊張感を描き出そうとしたこの香りは、ダニエラ・アンドリエにより調香されました。
この香りには、アンジェリカ(日本名:セイヨウトウキ、二年草)から採れる二種類の精油が使用されています。アンジェリカシード(種子から抽出した精油)とアンジェリカルート(根っこから抽出された精油)です。一般的に、香料に、アンジェリカとだけ記載されている場合は、アンジェリカルートが使用されています。
アンジェリカルートは、土っぽさが伴う甘い植物性ムスクで、アンジェリカシードは、苦くて甘くてスパイシーな香りが特徴です。しかし、この香りがなによりも香料として、多くの調香師に愛されている理由は、はっきりとどのような香りだと明記できない複雑さにあるのです。
「黒いアンジェリカ」というネーミングはダブルミーニングです。ひとつは、アンジェリカ自体は黒い花を咲かせないのですが、この香りを包み込むバニラがブラックバニラが使用されていること。そして、もうひとつは、アンジェリカがラテン語で大天使を意味する”Angelicus”に由来することから、「黒い大天使」という意味です。
苦さと甘さの対立=怒りのアンジェリカの香り
まず最初に、ベルガモットが閃光を放ちます。ゲランはかなり上質なベルガモットの供給源を確保しています。その力が遺憾なく発揮されています。
そこに、シャーベットのようにキンキンに冷えた洋ナシの甘さと、苦味と砂糖漬けしたような甘さを伴うスパイシーなアンジェリカシードがブレンドされ、ビタースイートなベルガモットへと進化を遂げます。
やがて、種子から根が出るようにアンジェリカルートの植物性ムスクが頭をもたげてきます。そこに、ジャスミンサンバックがグリーンとフローラルの絶妙なバランスで乗っかかり、キャラウェイ(クミン)がそのシーソーに乗っかかり、ひたすら移動します。
そして、その周りをブラックバニラが包み込み、ピンクペッパーとシダーによる圧倒的なコントラストの中、アーモンドのようなコクを伴うクリーミーさですべてを包み込んでゆきます。
2種類のアンジェリカの精油を使用して、アンジェリカの存在を「怒り」の領域にまで高めながらも、他の香料が、全員で見事ななだめ役に徹しているのです。だからこそ、ハーバルすぎず、スパイシーにも行き過ぎません。
そして、何よりも、アンジェリカをなだめる最高の役割を、ゲルリナーデの真髄ともいえるベルガモットとバニラの調和が、根底で担っている所にこの香りの恐ろしさは存在するのです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「アンジェリーク ノワール」を「ビターフローラル」と呼び、「このトップノートは苦くてちぐはぐ、飲めば肝臓がよじれそう。それが80年代っぽいオイリーで石けん様フローラルという、平凡かつ強いドライダウンへと移行していく。全体的に、どうもやっつけ仕事のような印象を受けてしまう。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:アンジェリーク ノワール(アンジェリーク ノアール)
原名:Angelique Noire
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ダニエラ・アンドリエ
発表年:2005年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/35,200円
価格:50ml/35,310円、100ml/49,500円、200ml/70,290円
公式ホームページ:ゲラン
トップノート:ベルガモット、アンジェリカシード、洋ナシ、ピンクペッパー
ミドルノート:ジャスミンサンバック、キャラウェイ
ラストノート:バニラ、アンジェリカルート、シダー