オードカミーユ
原名:Eau de Camille
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール
発表年:1983年
対象性別:女性
価格:不明
カミーユを覚醒させた香り。
7歳のとき母に「オードカミーユ」を作ってもらったのは、「なぜシャルロットだけなの?」と母にゴネたからなのです。母は「あなたはまだ若すぎるから必要ないと思ったのよ」と言いいながら、私の好みを聞いて作ってくれました。
しかし、「プチシェリー」は、面白いことに私に何一つ聞かずに、当時の20代前半の私のイメージを膨らませて作ってくれた香りなのです。20歳の頃は、とにかく楽しみたい、若いから何もしなくても可愛い…だからとても爽やかで、楽しくて幸せな香りなのです。
カミーユ・グタール
ピアノの神童として、英才教育を受け、ファッションモデルとして、若き日々を英国で過ごし、グラースで出会った、香水文化に一瞬で恋に落ち、生涯を〝香り〟に捧げたアニック・グタール(1946-1999)。
1981年に生み出した「オーダドリアン」の成功により、同年ベルシャス通りに一号店をオープンしたアニック・グタールは、1980年に再婚した夫アラン・ムニエ(有名なチェリスト)の連れ子シャルロット(カミーユより4歳年上)のために1982年に「オードシャルロット」を調香しました。
そんな母と義理の姉のやり取りを見ていた前夫との間の娘カミーユ(1975-、後の二代目調香師)は、強烈な嫉妬心に駆り立てられていました。「どうして?なぜ母は、私のための香りは作ってくれないの?」
そんな思いをダイレクトに母にぶつけたとき、アニックはとても驚きこう答えたのでした。「カミーユはまだ若いから香水に興味がないと思ったのよ。あなたはどんな香りが欲しいの?」
まさか本当に作ってもらえるとは思わず、突然願いが叶いびっくりしたカミーユは、窓の外に目をやり、〝そうだ!私の大好きなお庭の香りを創ってもらおう!〟と考えたのでした。
かくして、数ヵ月後アニックは、アイビー(ツタ)とカットグラス(刈り草)とハニーサックルを混ぜ、「オードカミーユ」を生み出したのでした。
はじまりは、姉に対する嫉妬心からでした。でもその嫉妬心により、手にした自分のためのはじめての香水により、カミーユはのちに〝香水に対する才能〟を覚醒させることになるのでした。
子供の心が蘇る、大人のための童話
光のあるところに緑はある。緑いっぱいなところに、幸せな子供の笑顔がある。
一吹きした最初のほんの一瞬だけ強烈なグリーンの苦味が押し寄せてきます。そして、すぐに明るい世界がはじまるのです。朝露に濡れた新緑の苦味に包まれたお庭の輝きです。この香りの新緑は、鋭くなく、青臭くもなく、清々しく、心にまで浸透するような優しさがあります。でありながら、茎や枝が折れるような苦味がしっかりと存在しています。
草原を駆け抜けるような爽快感というよりは、陽気の中、母に見守られ遊んでいるお庭のきらめきがそこにはあります。
そして、そんな新緑の奥のほうから、顔を覗かせるハニーサックル、ライラック(シリンガ)、ジャスミンの自然な甘さ。しかし、その甘さは決して新緑の苦味の邪魔をすることはなく、苦味を和らげ、ぼんやりと花の匂いが遠くから漂っている雰囲気を見事に生み出しています。
香水を作るのではなく、幼いカミーユのために、自然を忠実に再現しようとした香りです。だからこそ、どこか若さを感じさせるキラキラしている無邪気さが存在するところがこの香りの最大の魅力なのです。
自然の中に放り込まれると、大人も子供になる。そんな心の動きを生み出す香りです。だからこそ、大人がこの香りを身にまとった途端に、子供の心が蘇るのです。そして、香りが消えた後に、なぜか物悲しくなるのです。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「オードカミーユ」を「グリーンフローラル」と呼び、「「ヴァンヴェール」の雰囲気に似た、できのいい爽やかなグリーンフローラルの香水で、輝きのある整ったコロン。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:オードカミーユ
原名:Eau de Camille
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール
発表年:1983年
対象性別:女性
価格:不明
シングルノート:アイビー、グラス、ハニーサックル、ライラック、ジャスミン