【昼顔】
Belle de jour ジョゼフ・ケッセルが1927年に発表した小説『昼顔』を原作に、『アンダルシアの犬』のルイス・ブニュエルが、何不自由ない生活を送る主婦の昼間の売春を題材にした大問題作。本作により、美しい若妻のセヴリーヌをカトリーヌ・ドヌーヴ(1943-)が体当たりで演じ、女優としての確固たる地位を確立しました。
第28回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、ブニュエルの生涯において最もヒットした作品となる。イヴ・サンローランがドヌーヴの全ての衣裳のデザインを担当しました。サファリルック、ミリタリールック、白襟のリトルブラックドレスといった後世のファッションシーンに大いなる影響を与え続けるスタイルが登場するファッション・ムービーの金字塔。
あらすじ
清楚な気品を秘めた美しいセヴリーヌは、ハンサムな若き有能な外科医の妻として、夫を深く愛していました。しかし、8歳のときに、家に出入りしていた鉛管工に性的ないたずらをされたトラウマから夫との健全な性生活を営むことが出来ません。
そして、最近、彼女はよく同じ夢を見るようになります。その夢のはじまりはいつも軽やかなリズムを刻む馬車の鈴の音と共に襲ってくるのです。二人の駆者に森の中に引きずりこまれ代わる代わる犯されるそんな恐ろしい妄想に悩まされるセヴリーヌ。
夫を心の底から愛し、性的な欲求に対して心底嫌悪している自分の中で芽生えつつある抑えられない欲求。そして、彼女は、パリの市内にある〝秘密クラブ〟の存在を知り激しく動揺してしまうのでした。
白いテニスウェアを着て、健康的にテニスに興じる昼下がりに、嫌悪すべき中年のプレイボーイ・ユッソン(ミシェル・ピッコリ)から、悪魔の囁きのようにふと呟かれたその売春宿の住所が彼女の頭の中から離れなくなります。そして、ついに、彼女は昼下がりに黒いコートとサングラスで身を包み、その売春宿のドアをノックするのでした。
かくして、セヴリーヌは、「昼顔」という名の売春婦として、売春宿に通うようになります。そして、昼下がりの数時間だけ、その美しい肉体に潜む情欲に満ちた花びらを開き、獣のような男たちに荒々しく抱かれることに喜びを見出すのでした。しかし、そんな背徳に満ちた二重生活にも破局が訪れようとしているのです。
ファッション・シーンに与えた影響
1967年に公開され、主婦売春というセンセーショナルな題材により世界中に衝撃をもたらした『昼顔』が、ファッション・シーンに与えた影響は、〝イヴ・サンローラン〟の一言につきます。
〝不滅のファッション・ムービー〟であり、60年代のサンローラン革命を語るにあたり、決して避けては通れないものです。さらに、イヴ・サンローランという天才が、カトリーヌ・ドヌーヴという女優とタッグを組むことになった記念碑的な作品です。
- 貴婦人の隠された情欲を照らし出すミリタリー・ルック
- 大都会でしたたかに生きる女性のためのサファリドレス
- スクールガールのような白襟のリトル・ブラック・ドレス
- ロジェ・ヴィヴィエのバックルパンプス
カトリーヌ・ドヌーヴの皮膚のように呼吸している『昼顔』のイヴ・サンローランの全てのファッションを深く理解せずして、今のサンローランを語ることは許されない。
作品データ
作品名:昼顔 Belle de jour (1967)
監督:ルイス・ブニュエル
衣装:イヴ・サンローラン
出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ/ミシェル・ピコリ