悲劇のボンドガール タニア・ロバーツ
2000人の候補者の中から選ばれた最後のチャーリーズ・エンジェルだったタニア・ロバーツ(1955-)は、奇しくもロジャー・ムーア=ボンドの最後のボンドガールとなりました。
ニューヨークのブロンクスの極貧家庭で育った彼女は、貪欲にアクターズ・スタジオでリー・ストラスバーグに師事し、ブロンクス訛りの悪声の矯正のために5年間ヴォイストレーニングも行い、オフブロードウェイで経験を重ねながら、演技派女優の道を模索しました。
しかし、オファーされる役柄はその美貌とスタイル(173cm)を生かすものばかりでした。その最たるものが、ジョン・ギラーミン監督の『シーナ』(1984)だったのです。
そんな時に、シャロン・ストーンなどのライバルを押しのけ、手にしたボンドガールの切符。しかも、共演者はオスカー俳優のクリストファー・ウォーケンという幸運に彼女は、黒髪をブロンドヘアにして、撮影に臨みました。
彼女の有名な言葉にこういう言葉があります。「ジェーン・フォンダもそのキャリアは『バーバレラ』からはじまりました。そして、キム・ベイシンガーもボンドガールの翌年に『ナチュラル』で素晴らしい役柄を手に入れたのです」と。
しかし、この作品が、タニア・ロバーツのキャリアの後押しをすることはありませんでした。それどころか、全てグレイス・ジョーンズに持って行かれたのでした。
ステイシー・サットン スタイル1
パンツスーツ
- 白のパンツスーツ
- 黒のVネックカットソー
- 黒のパテントレザークラッチ
- 白いフレームのキャットアイサングラス
このパンツスーツルックは、80年代を象徴するパワーショルダーが魅力的です。ステイシー・サットンが初めて登場するシーンで着ているだけあって、彼女の役柄を説明するスタイリングがなされているのですが、ジョン・グレン監督は、女優のファッションを生かす撮影が、上手くないです。この衣装も映画の中で、何の化学変化も生み出すことなくただ現れ、すぐに消えていきます。
あらゆる映画作品にとって女優のファーストルックは、雌雄を決するものなのです。
ステイシー・サットン スタイル2
スリップドレス
- ブルーベースのマルチカラースリップドレス
タニア・ロバーツというボンドガールの美貌と魅力が発散されている衣装がこのスリップドレスです。しかし、何よりも、興味深いのは、彼女は、このパーティーにおいて、宝石の類を一切付けていないという点です(ここをボンドが指摘しなくてどうするんだ?)。
つまりは、彼女にとって、このパ-ティーは仇の催し事であるという姿勢なのです。しかし、その復讐者の姿勢が、タニアの演技力の問題ではなく、監督と脚本の問題により全く観る者に伝わりません。
ただただ、シャンパンを持ち口説きにきたボンドに対して、「何?このオジサンは?」という冷ややかな眼差しで見つめる冷めた美女というイメージを与えるのみでした。
ステイシー・サットン スタイル3
ラップドレス
- エメラルドグリーンのラップドレス、プリーツスカート
- グレージュのハイヒールパンプス
ステイシー・サットン スタイル4
ブラックドレス
- ブラックホルターネックドレス
作品データ
作品名:007 美しき獲物たち A View to a Kill (1985)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ロジャー・ムーア/クリストファー・ウォーケン/グレイス・ジョーンズ/タニア・ロバーツ/アリソン・ドゥーディ
- 【007 美しき獲物たち】三代目ボンド=ロジャー・ムーアの最終作
- 『007 美しき獲物たち』Vol.1|ロジャー・ムーアとデュラン・デュラン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.2|ロジャー・ムーアとルイ・ヴィトン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.3|ロジャー・ムーアとレザーブルゾン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.4|クリストファー・ウォーケンとカルティエ
- 『007 美しき獲物たち』Vol.5|クリストファー・ウォーケンとドルフ・ラングレン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.6|グレイス・ジョーンズとアズディン・アライア
- 『007 美しき獲物たち』Vol.7|グレイス・ジョーンズとジャン=ポール・グード
- 『007 美しき獲物たち』Vol.8|タニア・ロバーツという悲劇のボンドガール
- 『007 美しき獲物たち』Vol.9|タニア・ロバーツの80年代プレイメイトルック
- 『007 美しき獲物たち』Vol.10|アリソン・ドゥーディと取貝麻也子