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【シャネル】ガブリエル シャネル(オリヴィエ・ポルジュ)

シャネル
©CHANEL
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ガブリエル シャネル

原名:Gabrielle Chanel
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:オリヴィエ・ポルジュ
発表年:2017年
対象性別:女性
価格:35ml/11,550円、50ml/16,500円、100ml/23,100円
公式ホームページ:シャネル

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14年ぶりのシャネルの新作フレグランス

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あらゆる年齢の女性にとって、憧れのラグジュアリー・ブランドとして、21世紀においても、頂点に君臨し続ける「シャネル」。その創始者ガブリエル・シャネルの名を冠し、2017年9月に、14年ぶりの新作フレグランス「ガブリエル シャネル」が発売されました(ちなみに14年前のフレグランスとは、チャンスのこと)。

公式には、この香りは、デザイナーとしての〝ココ・シャネル〟が誕生する前の、情熱にあふれ、どこまでも自由であることを追い求めた頃の、無名時代の〝ガブリエル・シャネル〟に焦点を当てた香りとされています。

私の信念は、ただひとつです。素晴らしい香りの創造は時間に反比例するということです。

オリヴィエ・ポルジュ

しかし、実際のところは、3年かけてこの香りを生み出したシャネルの4代目専属調香師オリヴィエ・ポルジュ自身が語るように、「若い世代向けに、自由な精神で調香した作品であり、名前から生み出された香りではない」ということです。

ただし、シャネルの会社側の思惑としては、1984年にオリヴィエの父ジャック・ポルジュが「ココ」を創造したときのように、「ココ」に匹敵する新たなるシャネルを象徴する香りの創造を意図して生み出されたものなのです。

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4種類の花々が結ぶところにシャネルの香りは生まれる

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シャネルが〝ソーラー・バイブレーション〟と形容する〝究極のフローラル〟と銘打たれたこの香りは、シャンパンのように弾けるアルデハイドが、爽快なるグレープフルーツを発泡させながら、フルーティーなブラック・カラントと溶け込んでいくようにして始まります。

さぁ、天然香料だけでは決して到達することは出来ないであろう〝本物以上にあざやかで美しい〟花と果実の輝きのはじまりです。

そして、すぐ後に現れるクリーミーなグラース産のチューベローズ(1987年よりシャネルが独自に提携しているムル家の農場で、2010年代はじめにグラースの廃業するチューベローズのサプライヤーがジャック・ポルジュに託した最高品質のもの)がこの香りの中で、一番最初に現れるフローラルです。

さらに、後から(エキゾチックに馥郁な)エジプト産のジャスミン、(甘くフレッシュな)チュニジア産のオレンジ・ブロッサム、(グリーンフルーティーな)コモロ産のイランイランといった計4種類の白い花々が、競い合うように香りを放ちます。

以下、オリヴィエ・ポルジュによる4つの香料に関する説明を記述していきましょう。

  1. チュニジア産のオレンジ・ブロッサムは、この香りにフレッシュとスパークリングする感覚を与えています。まるで光り輝く太陽のような花の側面を生み出しています。
  2. コモロ産のイランイランは、シャネル独自の抽出プロセスで抽出された最高級なエクストラ(4つのグレードの中の最上級のもの、水蒸気蒸留の最初の1~2時間で採れるもの)。グリーンかつフルーティーな側面を強調し、薬のような側面を減退させ、より明るい側面が強調されています。
  3. エジプト産のジャスミングランディフローラムが使用されており、N°5で使用されているグラース産とは別のものです。イランイランとの相性がよく、軽いインドールを伴うフルーティーで芳醇な少し甘いジャスミンです。そして、ジャスミンは、オレンジ・ブロッサムにより、濃密な香りを拡散させることが出来るのです。
  4. チューベローズは、フレグランスによく使用されるエジプト産ではなく、グラース産のものが使用されています。それはシャネル独自の秘密のプロセスを経た、〝とてもグリーンで、ワックスのようでもあり、レザーの質感も持ちながら、ジャスミンのようなクリーミーさもある〟奥行きのあるチューベローズです。この僅かなチューベローズがジャスミンのクリーミーな側面を引っ張り出す役割を果たしています。

かくして4つの花々が渾然一体となるフローラルブーケは、まるで最高のプロポーションと美貌を誇る若手女優の大競演とも言える「花の祭典」の如くそれぞれが華やかさを演出しながら、サンダルウッドとベンゾインのクリーミーなウッディに導かれるように、バニラとムスクの渦巻く星雲に引き込まれていくのです。

まるで「ココ マドモアゼル」の翳りのある微笑から、その翳り(=パチョリ)を取り除いたような香りです。ただし、オリヴィエ自身が認めているように、ほのかなパチョリの側面だけは忍ばせている香りです。

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シャネルのボトルに入ったジャドール

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5年かけられて作り上げられたボトル・デザインは、今までのどのシャネルのフレグランスのボトルよりも薄い厚みで作られており、すべての面が光を反射し、中のシャンパンゴールドの液体(ジャドールか?)が輝きを放つように、ボヘミアガラスの工房で創られています。

5年もの月日をかけたボトルデザインは、シルヴィ・ルガストゥロワによるものです。ちなみに、日本国内において1.5 mlのサンプルが先着30,000人に無料配布されたことが、賛否両論を生みました(香料よりも、無料サンプル配布に予算を割いた香り)。

キャンペーン・ミューズとして、2013年よりシャネルのアンバサダーをつとめているクリステン・スチュワート(1990-)が起用されています。イギリスのCF界の鬼才リンガン・レドウィッジ監督の映像は、ビヨンセの「Runnin’」が流れ、とても美しいのですが、「ジャドール」とその世界観が似ています。

写真の方は、カリム・サドリによって撮影されました。ちなみに、2017年に新作のハンドバッグ「ガブリエル ドゥ シャネル」が発売され、そのキャンペーン=〝ガブリエル・イヤー〟においてもクリステンはミューズをつとめています。

このキャンペーン・フィルムを見ていると、シャネルの香水に求められるイメージというよりは、ラグジュアリー・ストリートを着て戦う女性のイメージが出ています。

エレガントさをそこから感じ取ることは出来ません(身体に巻きつけられたトイレットペーパーを連想させる映像に対して、ハイセンスを感じ取るならば、もう私から発する言葉は何もありません)。

冷酷な言い方をすれば、「ココ マドモアゼル」から個性を捥ぎ取ったこの香りは、シャネル自身ではなく、ココの偉業も、シャネルの歴史も大して知らずに、シャネルを愛することが出来るガブリエル達に捧げられた、ココ・シャネル自身の精神とは真逆のフレグランスなのかもしれません。

最後にあるインタビューで、オリヴィエ・ポルジュが放った言葉が恣意的でした。「この香りを父ジャックが完成前に嗅ぐ機会はありましたか?」という質問に対し、「父は今も定期的にラボに出勤しているので、完成までずっと付きっきりも同然でした」と笑みを浮かべながら返していました。

この香りは、間違いなく、ポルジュ親子と影の男クリストファー・シェルドレイクが放つ〝大衆化したシャネルというブランドのモノリス〟なのではないでしょうか?

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香水データ

香水名:ガブリエル シャネル
原名:Gabrielle Chanel
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:オリヴィエ・ポルジュ
発表年:2017年
対象性別:女性
価格:35ml/11,550円、50ml/16,500円、100ml/23,100円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:マンダリン・オレンジ、グレープフルーツ、ブラック・カラント
ミドルノート:チューベローズ、イランイラン、ジャスミン、オレンジ・ブロッサム、洋梨、ピンク・ペッパー、スズラン
ラストノート:サンダルウッド、ムスク、カシュメラン、ニオイイリス