作品データ
作品名:007 ダイヤモンドは永遠に Diamonds Are Forever(1971)
監督:ガイ・ハミルトン
衣装:ドンフェルド
出演者:ショーン・コネリー/ジル・セント・ジョン/チャールズ・グレイ/ラナ・ウッド/ブルース・グローヴァー
シャーリー・バッシーは永遠に。
二代目ジェームズ・ボンドとしてジョージ・レーゼンビーが登場した『女王陛下の007』(1969)。今でこそ、シリーズでも5本の指に入る高評価を得ている作品ですが、公開当時には、「やはりジェームズ・ボンドは、ショーン・コネリーじゃないと」という声が大きかったのも事実です。そんな多くのファンのラブコールに応える形で、ショーン・コネリー(1930-)が、〝ボンド・ザ・ファイナル〟として復帰した(ただし制作費の1/6がコネリーへのギャランティとして使用された)のが、シリーズ第7作目となる『007 ダイヤモンドは永遠に』です。
リアルなボンド像を追求した前作に対して、本作は、当時最もヒットしたシリーズ作『007 ゴールドフィンガー』(1964)のワクワクするような(大人のおもちゃ箱をひっくり返したような)大活劇路線を目指すこととなりました。その為に、『007 ゴールドフィンガー』を監督したガイ・ハミルトンとその主題歌を歌ったシャーリー・バッシー(当初、オープニングソングはポール・マッカートニーで予定されていた)が起用されたのでした。更に、ゴールドフィンガーの弟を敵役にして、ゲルト・フレーベを登場させる予定でした。
結果的に出来上がった本作は、老け込んだショーン・コネリーが、中年太りで弛みきった肉体と、締りのないにやけた表情で、冴えないアクションを繰り広げるシリーズ屈指の駄作となりました。公開当時こそ、大ヒット(1971年世界興行成績第一位)しましたが、現在においては、シャーリー・バッシーの主題歌のみが永遠の輝きを放ち続けています。
そんなコネリー=ボンドが最後に提示した締りのないコメディ路線が、三代目ボンド=ロジャー・ムーアへと引き継がれ、奇跡的な化学反応を生み出したのでした。
「帰ってきたジェームズ・ボンド」なのだが・・・
ジェームズ・ボンド・スタイル1 キャンプシャツ
- リブ編みテリー織りのサンドベージュのキャンプシャツ、キャンプカラー、胸に二つのフラップポケット
- プレーンな同色のトラウザー(ピンクのネクタイのシーンでも着用)
1970年代にポピュラーになったテリー織りのキャンプシャツ。お世辞にもカッコ良いと言えない70年代の野暮ったさを体現したスタイルここに極まれりです。
バスタオル、バスローブに用いられるタオル地を使用したリゾートファッションなのですが、ショーン・コネリーをボンドに復帰させたのならば、もっと華々しい登場シーンを用意するべきでした。そして、この冴えないファッションで、冴えない女性の前に現れる、白髪交じりのコネリー=ボンドに、『女王陛下の007』から続けざまに、本作を見た人々は、「なぜジョージ・レーゼンビー続投じゃ駄目だったんだろうか?」という疑問がよぎるのでした。
おじいちゃんのようなファッション・センス
ジェームズ・ボンド・スタイル2 ツイードジャケットPART1
- テーラー:アンソニー・シンクレア
- ブラウンとブラックヘリンボーン・ツイード・ハーフノーフォーク・スポーツジャケット、3つのブラウンレザーボタン、胸ポケットなし、ワイドショルダー、ディープ・サイドベンツ、ドッグイア・ラペル
- ブラックトラウザー
- ブラック・ニットのロングスリーブ・ポロシャツ
- ジョン・ロブのブラックレザー・ジョッパーブーツ
最終作の本作にて、コネリー=ボンドとしては、はじめて3つボタンのジャケットを着ることになります。1970年代に、30年代に流行していたスポーツジャケットが、リバイバルしました。そして、その流れは、3代目ボンド=ロジャー・ムーアに引き継がれていきます。しかし、それらのスポーツジャケットは、今見ると、精彩さに欠けるスタイルであり、ジェームズ・ボンドの野暮ったさを体現するスタイルとして人々に記憶されるようになりました(特にワイドラペル&ワイドパンツスタイル)。
マッシュポテトとココアパウダーをミックスさせた泥風呂で溺死するブロフェルド。と思いきや替え玉だった。そして、本物のブロフェルドが現れ、それもボンドがやっつけるのだがそれも替え玉だった・・・切れ味の悪い脚本(007をダメにした男トム・マンキーウィッツ)。しかし、よく考えてみよう。前作のラストでブロフェルドに殺されたトレーシーの復讐劇はどうなっているのだろうか?