ロカバール
原名:Rocabar
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジル・ロメイ
発表年:1998年
対象性別:男性
価格:100ml/18,260円
公式ホームページ:エルメス
1998年のエルメス
1998年という年は、エルメスにとって『ファッション革命』のはじまりの一年でした。すべては1997年4月に世界中を驚かせることになるひとつの発表からはじまりました。それは、マルタン・マルジェラをクリエイティブ・ディレクターに迎えるという発表でした。
そのことは、グッチのトム・フォード、ディオールのジョン・ガリアーノ、ジバンシィのアレキサンダー・マックイーンといった(今も続く)当時のファッション・ブランドがスーパースター・デザイナーに依存するというブランド戦略に対する、エルメスの第五代社長ジャン=ルイ・デュマなりのアンチテーゼだったのでした。
エルメスは、作り手のネームバリューではなく、サヴォアフェールを求めているのです。そして、翌年、1998-99年秋冬コレクションにおいて、さりげなくモデルとしてランウェイを歩いたマギー・チャンと共に、マルジェラ期エルメスはスタートしたのでした。
そんな世界中がエルメスに注目していた1998年に誕生した香りが、馬用のブランケットからインスパイアされた男性用フレグランス「ロカバール」でした。ジル・ロメイにより調香されました。
針葉樹林の中を馬で駆け抜けていく香り
広大な空間に惹かれる放浪者のためのフレグランス。
ジャン=クロード・エレナ
〝ロカバール〟とは、19世紀に競走馬が装着していた冬用のブランケットのことです。マスタードイエローをベースに、ブラウン×オレンジのボーダー柄が特徴で、このモチーフでスカーフやブランケット、バッグといったアイテムが生み出されていきました。
一年の終わりに向かって、世界が進んでいく気配を全身で受け止める。そんなワクワクする気持ちを、サイプレスとシダーを中心に力強く描き上げたこの香りは、真冬の透き通る空気の中、針葉樹林の中に佇み、白い空を見上げているようにしてはじまります。
それはベルガモットとレモンがジュニパーベリー、ラベンダーと混じり合い、フレッシュでひんやりとした清涼感をいい塩梅に加えてくれます。まるで森の中を乗馬して駆け抜けていくようです。甘くて苦いバターのように滑らかな樹木の香りにうっとりさせられます。
すぐにゼラニウムとカーネーションが緑の光線を解き放つ中、スモーキーなベンゾインが香り豊かに蜂蜜のような甘やかさを広がらせてゆきます。そして、冬の日差しが、心の斜交いに思いがけなくさっと差し込むように、バルサムとバニラ、オークモスに温められてゆくのです。
ポロプレイヤーのヘルメットにインスパイアされたというセルジュ・マンソーによるオリジナルのボトルデザインがとても印象的です。
香水データ
香水名:ロカバール
原名:Rocabar
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジル・ロメイ
発表年:1998年
対象性別:男性
価格:100ml/18,260円
公式ホームページ:エルメス
トップノート:コリアンダー、ジュニパー、シダー・エッセンス、ベルガモット、レモン
ミドルノート:カーネーション、ヴァイオレット、イタリアンサイプレス、シダー、カルダモン
ラストノート:パチョリ、ベンゾイン、オークモス、カナダ・バルサム、バニラ