究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ

【メゾン フランシス クルジャン】ウード カシミア ムード(フランシス・クルジャン)

メゾン・フランシス・クルジャン
©Maison Francis Kurkdjian
メゾン・フランシス・クルジャン
この記事は約4分で読めます。

ウード カシミア ムード

原名:Oud Cashmere Mood
種類:エキストレ・ドゥ・パルファム
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:70ml/36,750円

スポンサーリンク

2013年、クルジャンの『ウードの旅』がはじまります。

『ウード ムード コレクション』©Maison Francis Kurkdjian

『ウード ムード コレクション』ミニスプレー ©Maison Francis Kurkdjian

フランシス・クルジャンが、2009年にメゾン・フランシス・クルジャンを創業した3年目の2012年に、当時世界的に人気が出ていた〝ウード=沈香〟をテーマにした香り「ウード」を発表しました。

そして、その一年後の2013年に、シルク、ベルベット、カシミアといった希少で繊細な素材に包まれる感覚に特化した3種類のウードの香りを発表しました。『ウード ムード コレクション』のはじまりです。そのうちのひとつ「ウード カシミア ムード」は、〝カシミアのムードを奏でるウード〟と名付けられたオリエンタルな香りです。

それは、柔らかくて心地よい〝第二の皮膚〟の肌触りの良い優しさに満ちたウードの香りを目指し、生み出されました。

スポンサーリンク

悪臭の果てにあるのは天国?それとも地獄?

©Maison Francis Kurkdjian

しかし、この「ウード カシミア ムード」の実態は、飼い慣らす努力を必要とする獣の香りです。まず最初に、悪臭に近い辛くて酸っぱい強烈な香りからはじまります。それは10年前くらいに通販で売っていた1000円のコスプレ商品から匂う腐ったチーズ(ブルーチーズのような)と焦げたゴムと接着剤(ペンキ、ニス)と金属的な匂いが入り混じった何とも言えない香りです。

すぐに、スパイシークリーミーなプラスチックのようなバニラが注ぎ込まれてゆきます。まるでふんわりとした綿菓子のような甘さが加わってゆきます。

それから10分ほどの時が過ぎると、うっとりと夢のような、燃えるシダーウッドのようなスモーキーなベンゾインの温かい甘さが、軽やかにすべりだしてくるのです。最初の強烈な悪臭に嗅覚がやられてしまったのでしょうか。嗅覚が復活していく中で、エキゾチックなシャングリラのようなスモークが焚かれた楽園が突然やって来るのです。

そして、あいつはラオスからやって来るのです。ウードの到来です。ウードの持つ、咆哮するような獰猛さ、熟して腐りつつある酸っぱさは、他の素材で和らげられ、古代の神殿から流れてきたかのような焚火のようなスモークの渦の中で、消え去り、優美たるウードの繊細な円やかでしずやかなほのかな甘やかさのみ肌に着地してゆきます。

やがて、天然のアンバーグリスとレザーがひとまとめになったような官能的なラブダナムが注ぎ込まれ、モンスターは完全に飼い慣らされ、洗練された野生のフルーティーさを解き放ってゆきます。

燃え上がるスモーキーなウードとナッツや樹脂を感じさせる繊細な甘さを放つベンゾインとラブダナムは、決して溶け込むことなく、強さともろさ、美と壊れやすさがバランスを保っています。

温かく、熱く抱きしめ合う肉体のようなウードと交わり合うように包まれててゆく感覚、それはまるで久しぶりに再会した二人が、はじめて愛を交わし合い、肉体の渇きを癒していくような、甘いのかそうでないのかもよく分からない、ただただ心地よく酔い満たされる感覚です。

愛されたばかりの肉体をリフレッシュし、ドレスアップしたような煌めくオーラに包まれる香りと言えます。

ウードフレグランスの妙味。それは、日本で言うところの伽羅のようなものです。ひとりのためもしくは、ふたりのために存在する香りなのです。飼い慣らせば、滑らかで柔らかなセカンドスキンとして、素晴らしい癒しを与えてくれる香りです。ただし、飼い慣らせないと地獄を巡ることになるのもこの香りの魅力です。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ウード カシミア ムード
原名:Oud Cashmere Mood
種類:エキストレ・ドゥ・パルファム
ブランド:メゾン・フランシス・クルジャン
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:70ml/36,750円


シングルノート:ラオス産ベンゾイン、バニラ、モロッコ産ラブダナム、ラオス産アガーウッド(ウード)