シャツ・オン・シャツ
『シャツ・オン・シャツ』これこそが、マイケル・ジャクソンがファッション業界に残した最後の遺産だと私は考えます。黒シャツの上に赤のボタンダウンシャツの上部のボタンをひとつだけ閉め、そして、その上に羽織るブルーシルクシャツは全開、もしくは前で軽く結びます。私はマイケルのこの着こなしを見て、さすが、マイケル・ジャクソンだなと感動しました。
上質のシャツのアンサンブルのみが生み出せる極上のスタイリング。これをファストファッションでやってしまうと、それはただのホームレス・スタイルになってしまいます。このスタイルの肝となるのは下半身のミニマルな着こなしです。
アンドロギュヌス・ザルディ
このコンサートのために、ジョン・ガリアーノやアレキサンダー・マックイーンにもデザインを依頼しました。そして、選ばれた人が、ザルディでした。彼はパーソンズで学んだ後、ファッション・モデルとしてゴルティエやヴィヴィアン・ウエストウッドのランウェイで女性モデルと一緒に歩いていました。ポール・スミスの日本のキャンペーン・モデルもこの頃にしています。その時期(=1995年)に出演したリーバイスのCMは話題になりました。彼こそ、元祖アンドロギュヌス・モデルでした。
「私は、こんなのは悪趣味だと感じました。私がしたいことはこんなことではなかった」とザルディは回想しています(私は素晴らしいことだと思うのですが・・・)。そして、彼はファッション・デザイナーになる決意をしたのでした。2001年NYでショー・デビューし、カレン・エルソンとヴェルーシュカがフリーでランウェイに協力してくれたのです。
フィリピン系アメリカ人のザルディは、デザイナーに転進後、2004年から2007年にかけてノー・ダウトのグウェン・ステファニーのソロ活動のための専属デザイナーになります。そして、ブリトニー・スピアーズ、マドンナのステージ・コスチュームのデザインも手がけるようになります。
そんな彼のハイライトこそ、2009年、『THIS IS IT』のマイケル・ジャクソンのためにステージ・コスチューム製作でした。ちなみにこの年から2011年までレディー・ガガのステージ・コスチュームも手がけ話題になりました。