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【ケンゾー】ケンゾー ワールド(フランシス・クルジャン)

ケンゾー
©KENZO PARFUMS
ケンゾー
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ケンゾー ワールド

原名:Kenzo World
種類:オード・パルファム
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:30ml/8,910円、50ml/13,090円
公式ホームページ:KENZO

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花の存在を忘れさせる、魅惑のフローラルブーケ

©KENZO PARFUMS

2000年の「フラワー バイ ケンゾー」は大ヒットしました。それは香りのない花の香りを作ろうというアイデアでした。ポピーには香りがありません。その香りのアイデア、つまりコンセプトは、香りのない花に香りをつけ、その香りを想像しようというものでした。

一方、「ケンゾー ワールド」のコンセプトは香りのある花です。花がぼんやり見えるくらいに花をブレンドしています。花の香りであることはわかりますが、主に使われている花が何か、あるいはどんな花が含まれているのかさえ判別できません。ある意味、21世紀の「フラワー バイ ケンゾー」のバージョン2.0を作るというアイデアでした。

私が作るフレグランスにはそれぞれ仮題またはコードネームがあります。このプロジェクトでは「Neon Nature」というタイトルを使いました。

フランシス・クルジャン

1999年に、KENZOの創立者・高田賢三(1939-2020)が引退するにあたり、ケンゾー・パルファムのクリエイティブ・ディレクターに就任したパトリック・グエージが、賢三の愛した花、ポピー(けし)をモチーフに、〝究極のケンゾーイズム〟を体現する香りとして生み出した香り「フラワー バイ ケンゾー」は、2000年に発売されました。

それから16年の時が経ち、2011年よりケンゾーのクリエイティブ・ディレクターを務めるキャロル・リムウンベルト・レオンオープニング・セレモニーの創設者の二人)が初めて手がけたフレグランス「ケンゾー ワールド」は、ファッションに対する大胆、驚き、楽しさ、カラフルさといったビジョンを、セカンドシーズンで登場した「アイ(目)」のモチーフに投影した香りとして、2016年(日本発売は2017年9月1日)に発売されました。

この時期のケンゾーは絶好調でした。2015年に1億7,050万ユーロの売上高を達成し、前年比15%増となりました。そんな中誕生した、アンバー・フローラルの香りは、フランシス・クルジャンにより調香されました。

それはジャック・ラカンの鏡像段階論から想起された〝あなたを見ている〟というイメージに、忠実に生み出された香りです。まるで〝第三の目〟で自分自身を見るように〝見つめるように身にまとう香り〟なのです。

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クルジャンが語る「アンブロクサンの効果」

フランシス・クルジャン

アンブロクサン(アンブロキサン)はセージの蒸留によって生まれます。それを化学的に何度も微調整すると、アンブロクサンに行き着きます。この匂いは、マッコウクジラが作り出す龍涎香(アンバーグリス)にとても近いです。土と海の中間のようです。塩辛いと言うよりも、ミネラルの方が適切です。塩には匂いがないので、感覚的なものなのです。

温かくも冷たくもない、ぬるい海水で浸された岩を舐めているような感じで、とても滑らかです。とても柔らかく、空気のような、とても長持ちする、とても光沢のあるものです。アンブロクサンは花にぼかしをもたらし、花の存在を忘れさせる効果があります。

それはレオナルド・ダ・ヴィンチのスフマート(深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法)に少し似ています。アンブロクサンはそのレベルでぼかすことができます。私はよく使います。霧のようなもので、霧が周囲のものの輪郭をぼやけさせ、私たちがぼんやりとした輪郭だけを認識するような働きをします。

フローラルノートをより魅惑的なものに変え、私たちの心を掴まえるような魅力を与えるために、ある意味でコントラストをもたらす何かを背景に置かなければなりません。白い木について考えてみると、暗い色の横に置くとさらに白くなります。黒と白のコントラストは、白をさらに白くします。香水では、花だけを置くと、もちろん花の香りがしますが、作品のフローラルさを高めるには、何らかの形で背景にコントラストをもたらす成分を入れて、香りにコントラストをもたらす必要があります。すると花がさらに強くなるのです。

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〝第三の目〟で自分を見るように〝見つめるように身にまとう香り〟

©KENZO PARFUMS

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花びらから花束まで、腕一杯に咲き誇る花々のほとばしる甘さで幕を開ける…。生き生きと輝く軌跡をたどる、鼻を刺激する酔わせる香りのクレイジーなロック・ネクターのような、素晴らしいフレグランスです。魂に効くエネルギーを注入します。

フランシス・クルジャン

睫毛のようなキャップを取ると現れるスプレーを素肌に吹きかけると。凍りついたラズベリーとストロベリーを中心としたミックスベリーが素肌の上で、体温によって溶けていくような感覚からこの香りははじまります。すぐにベリーがジャムのように広がる素肌に、みずみずしくも甘いピオニーとジャスミンのフローラルブーケが現れてゆきます。

腕いっぱいに花々と酸味の効いたベリージャムが混じり合う吐息が広がるうちに、〝炸裂する花々のブーケ〟をイメージしたこの香りに相応しい、アンブロクサンの閃光がすべてを包み込んでゆきます。

そして、爆発するフローラルブーケのほんのりとビニールとプラスチックが漂う、パウダリーな甘さの洪水に全身が満たされていくのです。

「ケンゾー ワールド」。それは男性には決して身に纏えない女性だけの特権フレグランス=ぶっ飛びフレグランスなのです。

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スパイク・ジョーンズのぶっ飛んだ世界観!

「ケンゾー ワールド」の3分48秒に渡る長編のキャンペーン・フィルムが、当時話題を呼びました。フレグランスのCMとは思えない、脳が痙攣しているようなぶっ飛んだ内容でした。

このフィルムの監督を担当したのは、全米で、熱狂とブーイングの賛否両論の渦に巻き起こした『ジャッカス』の総監督を務め、MTVでファットボーイ・スリムの『Weapon Of Choice』でクリストファー・ウォーケンを踊らせ、『マルコヴィッチの穴』(1999)や『her/世界でひとつの彼女』(2013)を監督したスパイク・ジョーンズでした。

この人を起用したことが、ケンゾーというファッション・ブランドが、このフレグランスを通して、意図的に〝ぶっ飛びラグジュアリー〟路線を突き進もうとしていることを世に示しました。

出演女優は、アンディ・マクダウェル(自身も『ヴォーグ』等で活躍したファッション・モデルであり、『セックスと嘘とビデオテープ』等の主演女優)の娘マーガレット・クォーリー(ロンドン王立演劇学校出身でアメリカン・バレエ・シアター出身の本格派女優でありプロのダンサー)。ケンゾーのグリーンドレスを着て、ニューヨークのリンカーンセンターで、悪霊にとりつかれたかのように踊り狂います。

ちなみにこの目もくらむ踊りの振り付けを担当したのは、シーアの「シャンデリア」のミュージック・ビデオの振り付けを担当したライアン・ヘフィントンでした(振り付けの多くはクォーリーのアドリブでした)。

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一度見たら忘れられない〝目玉ボトル〟

©KENZO PARFUMS

ケンゾーのニューアイコンともいえる「アイ(目)」モチーフを全面に打ち出したボトル・デザインは、一度見ると忘れられないデザインです。そのブラックのキャップは、ケンゾーのアイコン・バッグである“Kalifornia”をモチーフにしています。

さらに目玉をイメージしたゴールドチャームと、キャップを外した中の面にも、アイのモチーフが施されています。

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香水データ

香水名:ケンゾーワールド
原名:Kenzo World
種類:オード・パルファム
ブランド:ケンゾー KENZO
調香師:フランシス・クルジャン
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:30ml/8,910円、50ml/13,090円
公式ホームページ:KENZO


トップノート:ラズベリー
ミドルノート:ピオニー、エジプト産ジャスミン
ラストノート:アンブロクサン