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【仁義の墓場】実録ヤクザ映画ファッションの魅力

深作欣二
深作欣二
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【仁義の墓場】

1970年代後半に一人の映画スターが、当時最悪のモラルを誇る映画を乱発していた東映にやって来ました。かつて日活アクションスターとして活躍したその男の名を渡哲也と申します。そんな彼が、1973年からの『仁義なき戦い』シリーズで「実録ヤクザ映画」ブームを巻き起こした深作欣二監督とタッグを組んだのでした。

「俺が死ぬ時は カラスだけが泣く!」という異様なキャッチコピーから分かるように、この作品は、ヤクザ社会の決まり事(仁義、盃、掟)の全てに牙を剥き、戦後ヤクザ社会においても極めつけの狂犬として語り草になった実在のヤクザ石川力夫の型破りで破滅的な生涯をスピーディに描いた作品。

さらに翌年には、深作欣二監督と渡に、梶芽衣子が加わる形で、ヤクザと盃を交わす自滅型マル暴刑事を描いた『やくざの墓場 くちなしの花』が生み出されました。

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あらすじ

「泣き虫でね~小さい頃は、力夫は、泣き始めたら一時間でも二時間でも泣いてる子供だった」という嘘か本当か分からないインタビューで始まるこの物語は、太平洋戦争後の新宿の闇市で暴れ狂う石川力夫(渡哲也)の姿からはじまります。テキ屋一家「河田組」に所属する石川は、兄弟分の今井(梅宮辰夫)と共に三国人の愚連隊「山東会」と抗争し、会を崩壊させ、シマの乗っ取りに成功します。

しかし、若い娘を強姦し情婦にしたり自らの欲望のまま行動する石川に、親分の河田組長、兄弟の今井はだんだんと持て余すようになります。やがて紆余曲折の末、河田を刺した石川は、十年間の関東所払いを食らい、大阪・釜ヶ崎のドヤ街でシャブ中になります。そして、そこで小崎(田中邦衛)というシャブ中の小悪党と知り合うのでした。さぁ、「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」の自滅へのカウントダウンがはじまりました。後はどれだけの人を巻き込んで、風船のように上まであがり、破裂するかの問題だ!

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ファッション・シーンに与えた影響

この作品の恐ろしいところは、誰が見ても、一切の共感を覚えることのない石川力夫という主人公を、当時、映画業界屈指の人格者とも言われた渡哲也が演じたことでした。

1975年に公開され実録ヤクザ映画の中でも異様な負のエネルギーに包まれた『仁義の墓場』が、ファッション・シーンに与えた影響は、何一つ存在しません。そんな作品をなぜ当サイトが取り上げたかというと、メンズ・ファッションとは無縁の世界だと言われる70年代の東映ヤクザ映画には、実は『ゴッドファーザーPART2』に匹敵しうる現代のメンズ・ファッションのエッセンスが秘められていると考えるからです。

さぁ、全国のオシャレなアパレル販売員の皆様。あなたの感性と真逆のファッション感覚に触れて、あなたの感性をより研ぎ澄ましてください。この作品のファッション・テーマは以下の三点です。

  1. 日本人にとってのトレンチコートは、ヤクザが出所したときに、「兄貴!お疲れ様でした!」と言って肩がけしてもらうためのアイテムだった
  2. 日本で最初に革ジャンが流行した場所は、闇市だった
  3. 日本映画史上初めてロンドンストライプを着たヤクザの誕生

さぁ、決してメンズ・ファッション誌には取り上げられることのない実録ヤクザ映画の世界観に溺れてみないか?

作品データ

作品名:仁義の墓場 (1975)
監督:深作欣二
衣装:長谷稔
出演者:渡哲也/梅宮辰夫/多岐川裕美/田中邦衛/芹明香