ジュドゥポー
原名:Jeux de Peau
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売(75ml/€260)

手作りのパンが素肌の上で焼かれ、バターとひとつになる香り

©Serge Lutens

©Serge Lutens
「パンを買うのを忘れないで」。セルジュ・ルタンが『ジュドゥポー』に込めた、幼い頃の思い出 ―― 地下室の窓から立ち昇る、焼きたてのパンの優しい温もり。黄金色の大麦、小麦、ドライフルーツが織りなす、完璧なごちそう。
「まるでパン屋が私たちの手を引いて連れて行ってくれるかのようだ。子供時代は坂道のようなもの。下へ下へと進むほど、記憶が蘇ってくる。自分が何者なのかを知るためには、麦と籾殻を分けなければならない。つまり、パン屋から漂う焼きたてのパンの香りは、私たちを過去へと連れ戻してくれるのだ。頬に触れる温かいパンの感触は、なおさら私の子供時代の懐かしい感覚を呼び起こしてくれる」
セルジュ・ルタンス公式サイトより
セルジュ・ルタンスより「ブラック&ベージュ コレクション」のひとつとして2011年2月に「ジュドゥポー」は発売されました。フランス語で〝スキンゲーム、肌の上で戯れる〟の意味を持つこの香りは、クリストファー・シェルドレイクにより調香されました(〝jeux de mots=言葉遊び〟をもじる)。
2018年3月21日に「ブラック&ベージュ コレクション」が「コレクション ノワール」に変更され、この香りを含む10種類もの名香が2017年末から一挙に廃盤になりました。現在はパレ・ロワイヤル本店だけで取り扱われている「レフラコンドターブル」コレクションのひとつとなっています。
「パリのバゲット」という邦題を持つこの香りは、人間の身体からパンのような発酵臭や甘い匂いがするという特性を念頭に生み出された、風味豊かな官能的なグルマンの香りです。
完璧な焼きたてのパンとバターから、サンダルウッドに移ろう香り

©Serge Lutens

©Serge Lutens
手作りのうつくしさ。パン生地を丹念にこね、ふっくらと焼き上げている、穀物のミルキーさと少し焦げたパンの感触からこの香りははじまります。すぐに温められたミルクと、隠し味のようなパウダリーなアイリスが重ねられてゆきます。この香りの独特のグルマンのオーラは、このパン生地に溶け込んだアイリスにより為されています。
そして、澄みわたる大自然の中にあるテーブルの上に、焼きたてのほかほかのクロワッサンやブリオッシュ、フィセル、(ピスタチオのような)くるみ入りバゲットが盛り付けられたバスケットが運ばれてきて、その上にメープルシロップとバターを垂らし、とろけていくような、まるでパンが生きているように、カリっとした香ばしさで満たされてゆきます。セロリとリコリスが柔らかなスパイスのニュアンスをもたらします。
完璧な焼きたてのパンとバターの香りでありながら、素肌に近い、自然な香りに感じられるのは、まろやかなココナッツとミルキーなサンダルウッドとシダーウッド、そしてダークアンバーが洗練された奥行きを与えてくれているためです。そこにほのかなコーヒーの香りも漂います。
そんな香り立ちが、一変するのは、アプリコットとオスマンサスの到来によってです。まるでパンの上のバターとメープルシロップにアプリコットジャムが重ねられていくようです。さらにサンダルウッドも至上の輝きですべてを滑らかに照らしてゆきます。
甘ったるいグルマンでも、軽やかなグルマンでもない、パンとバターとメープルシロップとアプリコットをたっぷりと素肌で味わう、付ける状況によって、色々な味わい方を伝えてくれる、とても不思議にエレガントな、濃厚でクリーミーなスキン・パフュームです。
バルテュスの二枚の絵


パン屋に着くと、ぼんやりとした空想から覚め、目の前に並ぶパンを眺める喜びに浸った。「パンは食欲をそそるのと同様に、人の目を開かせてくれる」のだ。そして極めつけは、地下室の窓から漂ってくる、まだ温もりの残る焼きたてのパンの香りが、その喜びを最高潮に高めてくれた。
一見すると、パン屋の女将の顔には明るい笑顔しか浮かんでいなかった。化粧が彼女の顔に陽気な表情を与えていたが、それは苦悩を隠す仮面なのではないかと疑わずにはいられなかった。一体、彼女は何に苦しんでいるのだろう。忙しい時間帯に、なぜ彼女は突然、唇をきつく引き締めるのだろうか?
それがほとんど気づかないほど微かな変化だったからこそ、余計に目立った。疑心暗鬼に駆られて、彼女の口は、まるで裁判書類に押された封印のように、訪れる者すべてに裁きを下していた。お釣りを返す時の彼女の微笑みには無限のバリエーションがあった。それは、疑わしげな笑み、倦怠感に満ちた笑み、諦めた笑み、軽蔑的な笑み、堅苦しい笑み、あるいは幻滅した笑みであった。彼女は今やこの世を去ってしまったが、その骸骨は今も、光沢のある白い入れ歯をはめて、微笑んでいるに違いない。
セルジュ・ルタンス
セルジュ・ルタンス自身はこの香りについて上記のバルテュスの1937年と1942年の、机の上のパンにナイフが突き刺さっている絵からこの香りのインスピレーションは高められたと言及しています。そして、ここが非常に彼らしいのですが、「このパンは私なのだ」と言っているのです。
スキンゲームという名の意味は、幼少期のパンへの想いと、大人になり、ラグジュアリー・ホテルで提供されるパンの洗練との対比を香りにしたものでしょう。
どんなものであっても、洗練されるとそれは180度違うものになってしまう。でもそれをひとつに集約することが出来るのも、香りだけに許される特権なのです。幼少期の懐かしさと大人の洗練に満ち溢れたコントラストが、素肌を包み込むミルキーなサンダルウッドによって際立つのです。
香水データ
香水名:ジュドゥポー
原名:Jeux de Peau
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:日本未発売(75ml/€260)

トップノート:ミルク、小麦
ミドルノート:ココナッツ、リコリス、イモーテル
ラストノート:オスマンサス、アプリコット、香辛料、サンダルウッド、アンバー、シダーウッド

