ペイズリー柄のエレガントなブラウス
イルザ・ラント・ルック9 ペイズリー柄のブラウス
- ベージュのペイズリー柄のフロントスリットブラウス、ショルダーパッド入り
- 赤のサッシュベルト
- 黒のロングスカート
- 白のクラッチ
- 白手袋
イルザ役は、当初は、アン・シェリダンとヘディ・ラマーが候補に挙がり、やがて『霧の波止場』のミシェル・モルガンが最有力候補に挙がったのですが、ギャランティの折り合いがつかず、バーグマンが選ばれることになったのでした。一方、リック役は、ジョージ・ラフトが断り、ロナルド・レーガンが演じる予定でした。
そして、バーグマンは永遠になりました。
イルザ・ラント・ルック10 ラストルック
- スカートスーツ
- 白のブラウス
- バイカラーシューズ
- ソフトハット、ブリムは丸みをもって下がる
わたしはクローズ・アップがどんな効果をもたらすかということも知っていた。それはときおり現実に存在しないものを作り出す。『カサブランカ』のとき、わたしの顔はしばしば完全な空白だった。ところが観客がわたしの顔に、わたしが表現しようとしていると勝手に思い込んだものを感情移入した。彼らは自分の欲する形でわたしの考えを作り出した。いわば観客がわたしにかわって演技をしていたわけである。
イングリッド・バーグマン
ラストシーンがどうなるのか分からなかったバーグマンのクローズアップの表情は、監督のマイケル・カーティスの指示により、ボギーとヘンリードのどっちと結ばれても良いようにどっちつかずの表情を取ってくれと言い含められていました。そして、そんな曖昧な表情だからこそ奇跡的に永遠の輝きが生み出され、バーグマンさえもトレンチコートを着ていたというような神話を生み出すに至ったのです。
1930年代から1950年代にかけての映画の素晴らしさは、映画評論家にしても、それらの映画に影響を受けたファッション・デザイナーにしても、当時はビデオやDVDというものが存在しなかったので、彼らの欲する形で「映像の神格化」が図られたということです(バーバリーを立て直した男クリストファー・ベイリーでさえもインタビューの中で、『カサブランカ』のバーグマンのトレンチコート姿は私の中で永遠のアイコンですと言い放っているほど)。
ちなみに1973年にフランソワ・トリュフォー監督で、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン=ポール・ベルモンドによりリメイク化が図られたが、トリュフォー自身が、ボギーの作品では『三つ数えろ』(1946)と『脱出』(1944)は愛しているが、この作品はそうでもないと断りました。2000年代の初めには、マドンナが自身で映画化しようとしました。
しかし、本作におけるイングリッド・バーグマンという女優の輝きは、曖昧さから生み出された奇跡の輝きなのです。もはや誰もイルザを演じるべきではないのでしょう。そして、リックを演じたボギーをリメイクできる男なぞ、今後未来永劫出てこないでしょう。そうなのです、私たちにはいつもこの二人のパリが、心の中に存在するのです。