キュイール カナージュ
原名:Cuir Cannage
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:125ml/31,500円
レディ・ディオールの香り
ディオールの「ラ コレクシオン プリヴェ クリスチャン ディオール」は、2004年に「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」「ボア ダルジャン」という3種類の香りからはじまりました。そして、2009年に「アンブル ニュイ」が発売され、2010年に一挙7種類の香りが発売され、「コローニュ ブランシュ」「オー ノワール」が廃盤となり全9種類となりました。
その翌年の2011年に「パチョリ アンペリアル」、2012年には2種類の香りが発売されました。そして、2013年には「グリ モンテーニュ」が発売され「ミッツァ」が廃盤となり、2014年に発売されたのが「キュイール カナージュ」でした。
「ディオーリング」からはじまるレザー・フレグランスの系譜に連なるこの香りは、ディオールの初代専属調香師フランソワ・ドゥマシーにより調香されました。ディオールのアイコニックなカナージュ・モチーフ(籐の編み目)の革からインスパイアされ生み出された香りです。
それは、女性にとって、第二の心臓と形容され、男性から見ると、その女性の内面を推し量ることが出来るものとされる〝彼女が愛用しているレザーバッグ〟の香りでもあります。デュマシーがずっと心に大切に持っていた、幼き日の母親のハンドバッグの匂いの想い出も投影されています。
永遠の女性の憧れ=レディ・ディオールを身に纏う。
かつて、「カナージュ・キュイール」と呼ばれた、クリスチャン・ディオールを代表するアイコン・バッグ「レディ・ディオール」。その内側の香りからインスパイアされたのが、このフレグランスです。ちなみに「レディ・ディオール」の名は、1995年にダイアナ妃が愛用したことから付けられました。
新品の美しさを保ちながらも、程よい使用感のあるレザーバッグを想わせるレザーの香りと、コスメティックなお花の香りが混じり合い、女性が愛用バッグの中を覗き込んだ瞬間に感じられる〝ホッと安心する〟香り立ちを漂わせてくれます。〝レディ・ディオールは女性のベスト・フレンド〟そんな精神を香りに託したのが「キュイール カナージュ」です。
華やかな女性の到来を告げるように、かいがいしくキリッとほろ苦いベルガモットが弾ける中、甘やかなジャスミンとオレンジ・ブロッサムがクリーミーに広がるようにしてこの香りははじまります。すぐに(カスタードのような)イランイランが抱擁するように、やさしく温かな空気で満たしてくれます。
そしてスモーキーかつアニマリックなレザーが滑らかにやって来るのです。ホワイトフローラルとロシアンレザーのめくるめくランデブーのはじまりです。
まるで素肌に愛を囁くように溶け込んでゆく、焦げた白樺の樹皮でなめされたレザーの香りに満たされていく中、やがて、リップスティックのようなローズとアイリス、ヴァイオレットのパウダリー・フルーティな香りが広がってゆきます。ちなみにこのアイリスは、ニンジンのようなものではない甘いフェイスパウダーを思わせる脂っこいイリスバターです。
さらにタバコとブランデーのスモーキーな香ばしさも追加され、愛する男性の胸元に顔をうずめているような安心感と、レディ・ディオールを開けた瞬間に感じられる安心感をひとまとめにして、手の指の先から胸元へと〝香しき気配〟が駆け抜けてゆくのです。
最後に、バニラとトンカビーンがクリーミーなオレンジ・ブロッサムに混ざり合いカラメルのように甘くなり、スパイシーなシナモンによってエレガントな余韻に満たされていきます。この香りが、非凡であるところは、ドライダウンに〝忍び寄るアニマルの気配〟が存在する恐ろしさにあります。まさに、悪魔、今朝、わが部屋へ、訪ね来たりです。
恐らく日本での販売が終了された理由は、ラストに強く香るカバノキ(白樺)の極上感ゆえでしょう。18世紀の帝政ロシアにおいて生産されていた幻の名革ロシアンカーフは、カバノキのオイルによってなめされていました。
セルジュ・ルタンスの「キュイール モレスク」とよく比較される香りです。
香水データ
香水名:キュイール カナージュ
原名:Cuir Cannage
種類:オード・パルファム
ブランド:クリスチャン・ディオール
調香師:フランソワ・ドゥマシー
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:125ml/31,500円
トップノート:オレンジ・ブロッサム、イランイラン、ベルガモット
ミドルノート:レザー、ジャスミン、ローズ、アイリス
ラストノート:カバノキ、ジュニパー、レザー、カデ油、タバコ、ヴァイオレット