ジェームズ・ボンドを愛したクリストファ・ウォーケン
この男の実質的なデビュー作は、ジェームズ・ボンドの映画だった。いや、正確には、当時ボンドを一時引退していたショーン・コネリーとの共演でした(『ショーン・コネリー/盗聴作戦』1971年)。ドイツ系の父とスコットランド系の母の間に生まれたこの男にとって生粋のスコットランド人であるショーン・コネリーは憧れの俳優の一人でした。
この男の名をクリストファ・ウォーケン(1943-)と申します。そして、7年後の『ディア・ハンター』(1978)でアカデミー助演男優賞を受賞し、時代の寵児となるのでした。
そんな彼が、ついに憧れのジェームズ・ボンドと共演する夢を実現させたのでした。その役柄は、ナチスドイツが生体実験で生み出した強化人間ゾーリンというとんでもないものでした。もともとポリスのスティングを念頭にこの役柄は生み出され、デヴィッド・ボウイにオファーされたのですが、「私は007が好きでもない上に、5ヶ月もこんなくだらない役柄に縛り付けられたくない」とオファーを蹴り、『ブレードランナー』のレプリカントを名演したルトガー・ハウアーに落ち着きそうになる所を、ウォーケンが勝ち取ったのでした。
ここに、ボンドムービー史上初めてオスカー俳優が悪役を演じることになったのでした。
マックス ゾーリン スタイル1
アスコット・スタイル
- チャコールグレーのモーニングスーツ、ピークドラペル、美しいショルダーライン
- フランク・フォスターのウイングカラー・シャツ
- ライトグレーのシルクハット
- ペールパープルのアスコットタイ
クリストファー・ウォーケンという男には、3つの大好物が存在します。ひとつは、エルビス・プレスリー、そして、もうひとつはゾンビ、最後のひとつがジェームズ・ボンドでした。
マックス ゾーリン スタイル2
ツイードジャケット
- グレーのツイードジャケット、ノッチラペル、センターベント、パッチポケット
- ブラウントラウザー
- 白シャツ
- ダークネイビーのニットタイ
- ダークネイビーのポケットチーフ
- カルティエ ヴァンドーム サントス サングラス
カルティエ ヴァンドーム サントス
本作のスポンサー企業のひとつは、カルティエでした。そして、カルティエは本作のために二つの協力をしたとされています。ひとつは、ガーデンパーティーの女性たちのジュエリーの提供。そして、もうひとつは、このサングラスの提供です。
ヴァンドームサントスは1983年にカルティエによって発売され、80年代の間のみ生産されました。1904年に発売されたサントス・ウォッチの特徴である丸いビスがブリッジとヒンジについています。
この非常に珍しいサングラスは、『ウォール街』(1987)でマイケル・ダグラスもつけていました。
そして、2003年にはビヨンセとジェイ・Zのシングル「’03 ボニー&クライド」のPVで、ジェイ・Zもつけていました。
マックス ゾーリン スタイル3
ブラックタキシード
- ブラック・ディナージャケット、ピークドラペル、ダブル、パッド入りの80年代ショルダー、サイドベンツ
- フランク・フォスターの白のフロントプリーツシャツ、比翼
- ブラックサテンボウタイ
- カルティエ ヴァンドーム サントス サングラス
- サスペンダー
どうしたことかこのディナージャケット、ちょっとだけシャツと襟の間に隙間が生まれています。
マックス ゾーリン スタイル4
グレースーツ
- ライトグレーのウールスーツ、細身のノッチラペル、サイドベンツ
- グレー×水色×ダークネイビーのレジメンタルタイ
- ダークネイビーのポケットチーフ
- フランク・フォスターの水色のシャツ
このグレーのウールスーツも、前述のツイードスーツと同様に、ブロンドヘアのウォーケンにとてもマッチしています。
作品データ
作品名:007 美しき獲物たち A View to a Kill (1985)
監督:ジョン・グレン
衣装:エマ・ ポーテウス
出演者:ロジャー・ムーア/クリストファー・ウォーケン/グレイス・ジョーンズ/タニア・ロバーツ/アリソン・ドゥーディ
- 【007 美しき獲物たち】三代目ボンド=ロジャー・ムーアの最終作
- 『007 美しき獲物たち』Vol.1|ロジャー・ムーアとデュラン・デュラン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.2|ロジャー・ムーアとルイ・ヴィトン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.3|ロジャー・ムーアとレザーブルゾン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.4|クリストファー・ウォーケンとカルティエ
- 『007 美しき獲物たち』Vol.5|クリストファー・ウォーケンとドルフ・ラングレン
- 『007 美しき獲物たち』Vol.6|グレイス・ジョーンズとアズディン・アライア
- 『007 美しき獲物たち』Vol.7|グレイス・ジョーンズとジャン=ポール・グード
- 『007 美しき獲物たち』Vol.8|タニア・ロバーツという悲劇のボンドガール
- 『007 美しき獲物たち』Vol.9|タニア・ロバーツの80年代プレイメイトルック
- 『007 美しき獲物たち』Vol.10|アリソン・ドゥーディと取貝麻也子