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【ロシャス】ビザーンス(ニコラ・マムーナス/アルベルト・モリヤス)

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ビザーンス

原名:Byzance
種類:オード・パルファム
ブランド:ロシャス
調香師:ニコラ・マムーナス、アルベルト・モリヤス
発表年:1987年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:30ml/4,400円、50ml/8,800円、50ml/11,500円

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東のローマ帝国のはじまりと終わり

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1987年にロシャスから発売された「ビザーンス」という素晴らしい響きの名前を持つこの香りは、1970年からロシャスの専属調香師であるニコラ・マムーナスと、アルベルト・モリヤスにより調香されました。

圧倒的な存在感を誇るボトルデザインと共に、今では伝説の〝幻の名香〟と言われています。何よりも、瑠璃色のボトルが泣いているようで、どこか哀しげなムードを漂わせています。つまりは、一目見た途端、感情が揺さぶられるデザインなのです。

ビザーンスとは、ビザンティン帝国=東ローマ帝国(395年-1453年)の首都ビザンティン=コンスタンティノープル(現イスタンブール)のフランス語読みです。西洋と東洋が融合したこの素晴らしい街の栄枯盛衰をイメージして創られた香りです。

それは香りの大河ドラマであり、以下の説明で香調を示してはいるのですが、実際はそんなことすら気にもする必要もなく、ただただ香りの流れに身を任せるべき香りと言えます。

つまりは、あなたの肌に語りかける類の香りです。

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21歳の青年に滅ぼされたローマ帝国

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この香りを一吹きすると、アルデハイドが時空を越えるように、煌めきながらあなたを395年1月のコンスタンティノポリス(イスタンブール)へと運んでくれます。その時、ローマ帝国が東と西に別れました。明らかに、20世紀ではない、太古の昔の香りです。

すぐにマンダリン・オレンジとレモンの輝きに香りは包まれます。そして、酔わせるようなカーネーションがグリーンノートと一緒になって、オリエントの香辛料を軽やかに運んでくれます。アブサンのような神秘的な薬草の芳香に包まれてゆきます。

薬草で作り出したクリーミーな石鹸のような香りが、甘くも円やかなフローラルに包み込まれていく瞬間こそ、この香りの圧倒的に美しい瞬間であり、10世紀のビザンティン帝国の栄華を肌で再現してくれる至福のひとときなのです。

ジャスミン、ターキッシュ・ローズ、スズランといったフローラルが、アイリスとヘリオトロープの魔法の粉を振り掛けられ、しっとりと妖艶な香りを放ちます。それはまるで妖しい光を放つイコンとモザイクで埋め尽くされていくようです。

そして、ふとした瞬間に、螺旋を描きながらチューベローズとイランイランがアニマリックなムスクを伴いなが飛び出してくるのです。

ビザンティン帝国の終わりのはじまりを告げる銅鑼の音が奏でられます。すべては激しくなく、ひとつの厳かな儀式のような静けさを伴っているところがこの香りを身に纏うものが、必ず感じる、背筋が凍る感覚なのです。この感覚は中毒性があります。

シプレではなく、オリエンタルであるとこの香りが断言される瞬間がいよいよはじまります。1453年の到来です。アンバーの輝きとシダーの煌きを従えし、わずか21歳のオスマン帝国のスルタン・メフメト2世が現われるのです。

嗚呼・・・溜息の出るような美しい瞬間。それは死を決意した最後のローマ帝国皇帝コンスタンティノス11世が、クリーミーな静寂に包まれた白装束のようなサンダルウッドを全身に纏う瞬間のようです。そして、自ら剣を握り、壮絶な討ち死にを遂げていくのです。かくしてオリエンタルの美しい余韻と共に、ここに紀元前753年からはじまるローマ帝国が滅亡してゆく哀悼の余韻をあなたの全身に溶け込ませてゆくのです。

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〝滅びの美学〟の香り

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ビザーンスの美しさとは、この香りの持つ滅びの美学にあります。ひとつの時代が終焉する時、そこにあるのは悲壮感よりも浪漫なのです。それは過去・現在・未来について歌い続ける香りなのです。

瑠璃色の円形ガラスにゴールドメダルが、いかにも東ローマ帝国のイメージでとても素敵です。2008年にロシャスの専属調香師に就任したジャン=ミシェル・デュリエにより香りはリニューアルされ、2012年に廃盤になりました。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ビザーンス」を「チューベローズ・インセンス」と呼び、「「イザティス」と近い関係にある、気だるいフローラルオリエンタル。クリーミーかつ清潔なアルデヒド調ローズが、一方ではレモンのようなカルダモンの軽さを、他方ではサンダルウッドとバニラの香りを支えている。いわばインド風に飾った「リブ ゴーシュ」で、フランスのお嬢さんがドレスアップのまねごとをして遊んでいるときに、アングルのオダリスクみたいにオリエンタル風になる感じ。」

「かつてのビザーンスは微睡むように流動的で重たげな雰囲気だった。揺れ動く柔らかなアンバーがトップノートで、お香のような清められた印象があり、ボリュームのある新鮮で塩辛いローズが核になっていた。」

「作り直したものは、アンバーを取り除いてフレッシュさを出し、重みを減らして、バスルームの白いタイルのような濡れた光が加わっている。「アナイス アナイス」に近く、もっと突き詰めれば肩肘張らない「クーロス」といったところか。それでもとてもよい香りで、ものすごく効果的な男性用になる。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ビザーンス
原名:Byzance
種類:オード・パルファム
ブランド:ロシャス
調香師:ニコラ・マムーナス、アルベルト・モリヤス
発表年:1987年(現在廃盤)
対象性別:女性
価格:30ml/4,400円、50ml/8,800円、50ml/11,500円


トップノート:アルデハイド、香辛料、カーネーション、グリーンノート、マンダリン・オレンジ、バジル、レモン、カルダモン
ミドルノート:チューベローズ、オリスルート、ジャスミン、ターキッシュ・ローズ、イランイラン、スズラン、アニス
ラストノート:サンダルウッド、アンバー、ムスク、バニラ、ヘリオトロープ、シダー