究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ

『麦秋』1|原節子と淡島千景と井川邦子

原節子
原節子
この記事は約4分で読めます。
当サイトではアフィリエイト広告を利用しています
スポンサーリンク

2.勇ちゃんLOVE

01-832

勇ちゃんを演じる城澤勇夫さん。私の中の永遠の少年です。

tumblr_o63ycccb4s1qmemvwo1_500

勇ちゃんは、ある意味『TED』のような愛されキャラです。

この映画の最高キャラそれは「勇ちゃん」です。間違いなく彼こそが、クレヨンしんちゃんの原型だと私は勝手に考えています。この映画は勇ちゃんを待つ映画です。もそ~っとしているんですが、この子とオルゴール風の「埴生の宿」が、この映画に幻想的な雰囲気を生み出しています。

しかし、最後のほうの、あの集合写真を撮ったシーンの後に、カメラマン越しにちらっと見える勇ちゃんスマイルなんかは、明るい可愛らしい少年の聡明さが隠しきれません。しかし、このコの最後のセリフが圧巻です。「勇ちゃんどこ行くの」と聞かれ、「ウンコ」なのです。昔の映画に出てくる子どもは、女性の母性を引き出す鏡とも言えるでしょう。女性はこの母性を絶えず引き出すことによって、艶やかさが加味されていくのです。

私が特に大好きな勇ちゃんのシーンは、この二つです。

1.冒頭のシーンの一言。「洗ったよ。嘘だと思ったらタオル濡れてるよ」と言いつつ実は洗っていない。
2.「ホラ おじいさん好きか?」「大好きならもっとやるぞ」「大好き」・・・もらうだけもらって、去り際に「キライダヨ~」、も一度戻ってもう一言「大嫌いだよ~っ!!」。そして、その後に鼻をフンッとあげる仕草の可愛い事。

こういう子どもの姿が撮影できるからこそ、小津安二郎監督は、世界の小津なのでしょう。大人と子どもが見事に調和が取れている。そんな世界観を描き出せるからこそ、この方の作品は、古き日本のファンタジーなのです。そこから退屈さを感じる人は、その人自身が、退屈に包まれている人に違いありません。若い人にこそ、この作品の「失われた日本の魅力」がよく理解できるはずなのです。

スポンサーリンク

3.余白の美学

lenih3hkvxlpgybdesmytdxtjnf

元祖アンドロギュヌス女優・淡島千景様。

201603286_1_img_fix_700x700

3色使いのリブ編みのセーターとタータンチェックのスカート。

全てを見せずに余白を残す。紀ちゃんが結婚を決めた相手との馴れ初めをクドクドと説明はしません。これが省略の美学=余白の美学なのです。会話も映像も全てがシンプル=洗練されています。小津安二郎監督の映画が、年を経るごとに新しくなる理由が、失われていく様式美を、厳格な所作によって描いている点にあります。そして、その世界には、テレビもなければ、携帯電話もパソコンもありません。それらがそもそも存在しない時代だったので、映像の中から雑音と感じられるものが削ぎ落とされている新鮮な空間がそこにはあるのです。

例えば、こう考えてみてください。勇ちゃんが、テレビを見ていて、紀ちゃんが、スマホをいじくっていて、佐竹さん(佐野周二演じる)が、パソコンを操作している。そんな『麦秋』を。人と人との間にあるもの。これらが映像の中で増えれば増えるほど、映画は刺激的な要素のみが求められ、本質的なものから、遠ざかります。例えば、『麦秋』を見た人からこういう感想が生み出される可能性もあります。「あまりにも今の生活からかけ離れているのでピンとこない」。

しかし、それは映画に問題があるのではなく、ピンとこないその人に問題があります。それはごく単純に「クロード・モネの絵を見てもピンとこない」と言っているのと同じなのです。感性を磨く努力をしない人に限って、「私の感性には響かなかった」と言います。しかし、時代を越えて残るものには、何かしら素晴らしいものが存在するはずです。そんな謙虚な姿勢が無い人は、ただ新しい流行ばかりをなぞる人になります。

ファッションも全く同じです。余白の美学を知るものが、これからは求められます。それは、テクノロジーの恩恵にあずかりながら、テクノロジーに支配されない生き方と共通します。美しい女性には余白があります。そして、美しい女性は、アナログなのです。スマホをせわしなく電車でいじっている女性よりも、読書している女性のほうが、カッコいいのはそういった理由からなのです。

アヤルック1
  • 白×濃い色×うすい色のトリプルカラーの長袖のリブ編みのハイゲージセーター。ボートネック
  • タータンチェックのロングスカート。うしろにジップ
  • 白の靴下
tumblr_nkhao1oh4e1tjkkbgo9_500

高子を演じる井川邦子さん。

井川邦子(1923-2012)さんが着る程よくウエストラインが強調されるいかにも上流奥様風ファッション(グラフチェック)。Vネックの首もとのピンスタライプのアクセントが爽快。クラッチ&白手袋。古き良き時代のアンサンブル。