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ジェームズ・ボンド

『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』Vol.1|ピアース・ブロスナンとゲッツ・オットー

ジェームズ・ボンド
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ジェームズ・ボンドと女ドラゴンの競演

007 ゴールデンアイ』(1995)で奇跡の復活を遂げた007シリーズは、五代目ジェームズ・ボンド=ピアース・ブロスナン(1953-)のノンストップ・アクション路線を突き進むために、シリーズ最強のパートナーを迎えることになりました。その人の名を〝皇家戦士〟ミシェール・キングことミシェール・ヨー(1962-)と申します。

1995年にジャッキー・チェンが『レッド・ブロンクス』で全米興行収入初登場1位というアジア映画初の快挙を成し遂げたことと、97年に香港が中国に返還されるということもあって空前の香港映画ブームが起きていたこともあり、『007 美しき獲物たち』のロジャー・ムーアとグレイス・ジョーンズ以上の異人種タッグが誕生することになりました。

さらにこの作品においても、前作に引き続きニュー・ボンドは、ブリオーニのスーツを着て戦う勇姿を惜しげなく見せてくれます(ボンドムービーの素晴らしさは、もっとも戦闘に向かないファッションで優雅に闘う姿にあります)。

このポーズに憧れない男子はいない。しかし、このポーズがサマになる男子もそういない。

ミシェール・ヨーの一番美しかった作品は、『ポリス・ストーリー3』でしょう。

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高級車に乗るように戦闘機に乗り戦うボンド

レザーのカーコート姿でプレタイトルに登場するジェームズ・ボンド。

ボンドムービーの醍醐味は、絶対にありえなさそうなシチュエーション=大風呂敷を広げるプレオープニング・アクションからはじまります。

今回も、核爆発を誘発してしまうという危機を回避するため、旧ソ連の核魚雷が搭載された戦闘機をボンドが乗っ取り、敵のアジトから脱出させるミッションからはじまります。

撮影寸前で雪が溶けてしまったため、2週間かけてトラックで大量の雪を運びみ撮影に望んだというこのシーンでボンドは、大人の男の色気が発散されるようなレザーのカーコートを着込み、ダンヒルのゴールドライター〝ユニーク〟と共に登場します。


そして、高級車を運転するような物腰で、機銃を回転乱射しながら、核兵器が搭載された戦闘機を操縦して去っていくのでした。

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ジェームズ・ボンド・スタイル1

レザー・カーコート
  • ブラウンレザー・カーコート、フロントジップ、ウエストにベルト
  • ダークネイビーのウールのモックネックジップジャンパー
  • ブラックのタートルネック
  • カーキのカーゴパンツ
  • ブラック・レザーグローブ
  • ブラックブーツ

レザーとカーゴパンツの絶妙なアンサンブル。後ろにいるのは、メディア王カーヴァーかと思いきや監督のロジャー・スポティスウッドでした。

40代半ばに差し掛かったばかりのピアース・ブロスナンの男の色気。

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シリーズ屈指のシェリル・クロウの主題歌






007シリーズの醍醐味のひとつであるオープニング・タイトルのデザイナーは、伝説の男モーリス・ビンダー(1925-1991、第1作『007/ドクター・ノオ』と、第4作『007/サンダーボール作戦』から第16作『007 消されたライセンス』までの14作品を担当)が引退し、前作からバトンタッチしているダニエル・クラインマン(1955-)によるものです。

精子のような女性達のシルエットからはじまり、透明な銃弾の中に閉じ込められた女性のシルエット、基盤化されたアンドロイドのような女性、そして、ダイヤモンドからデジタルの世界にダイブする女性というとんでもなくハイセンスな映像美で迫るタイトル・デザイン。

そして、その世界観に全く負けていないアメリカ人歌手シェリル・クロウ(1962-)が歌う主題歌。それは「ダーリン、私殺されちゃったの」からはじまる物憂げな歌声が、通常のパワフルで元気いっぱいな主題歌とは一線を画す、大人のムーディーさと艶やかさに満ちています。

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スーツ×Tシャツ・スタイルのさきがけ

カーヴァーよりも印象的な悪党スタンパー。

ゲッツ・オットーは、15年後、ナチスの軍服が似合う男になっていました。

この作品の悪党は3人存在します。それはメディア王エリオット・カーヴァー(ジョナサン・プライス)と、彼の影の軍団を率いるスタンパー(ゲッツ・オットー)、そして、スタンパーの師匠であり一匹狼の殺し屋Dr.カウフマン(ヴィンセント・スキャベリ)の3人なのですが、特にこのスタンパーのファッションが90年代的でとても見ていて面白いです。

演じるゲッツ・オットー(1967-)は、2m近いファッション・モデルのようなドイツの俳優です。ちなみに彼は、2004年に『ヒトラー 〜最期の12日間〜』でオットー・ギュンシェを演じ、2012年には『アイアン・スカイ』で、月に逃げたナチスの月面親衛隊長を演じ、世界中のミリタリー・マニアが絶賛するほどにナチスの軍服を見事に着こなしていました。

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スタンパー・スタイル1<シャツルック>

まだ無名だったゲッツ・オットーがスタンパー役を手に入れたのは、オーディションで、バーバラ・ブロッコリに、20秒の自己紹介時間を与えられたのに対して端的に「私は(身体が)大きく、悪人顔、坊主刈りで、ドイツ人です。これで5秒、残りの時間は不要」と紹介した不敵さからでした。

そして、この役柄のためゲッツは、髪をブロンドに染めました。そんなスタンパーが着ている2パターンのシャツルックがとてもキュートでクールです。そして、このスタイルは極めて現代的とも言えるスタイリッシュさを兼ね備えています。

ネックとアームの白のパイピングが効いています。

現代のアジアのアイドル達が好んで着そうなシルエット。

ハートを意識したネックライン。

ジャン=ポール・ゴルチエのようなシャツルック。

こんなシャツをファストファッションで出してほしいものです。

カーゴパンツのバックシルエットが非常に興味深いパターンです。

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スタンパー・スタイル2<スーツルック>

そして、二種類のスーツを着るスタンパー。彼こそが、スーツ×Tシャツ・スタイルのさきがけと言っても過言ではないのではないでしょうか?

ピークドラペルのジャケット。

光沢のある生地と高い位置にある二つボタンが特徴的。

90年代的なボックスシルエットです。

こちらのジャケットのボタンはわずかひとつ。

作品データ

作品名:007 トゥモロー・ネバー・ダイ Tomorrow Never Dies(1997)
監督:ロジャー・スポティスウッド
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ピアース・ブロスナン/ミシェール・ヨー/テリー・ハッチャー/ゲッツ・オットー/ジョナサン・プライス