五代目ジェームズ・ボンド誕生
007シリーズの歴史の中で最も長いインターバルの生まれた瞬間。それは『007 消されたライセンス』(1989)と本作の間の6年間でした。この6年の間に多くの価値観は逆転し、もはやジェームズ・ボンドという存在は古臭いものだと考えられ、自然消滅し、新作はもう作られることはないと思われていました。
そんな中、突如、1994年6月8日に、ひげ面のピアース・ブロスナン(1953-)が現れ、全くボンドらしからぬ姿で、ニュー・ボンド就任の記者会見を行ったのでした(翌日から『ロビンソン・クルーソー』の撮影があったため)。
かくしてほとんどの人々が期待しない中、6年ぶりの新作の撮影は1995年1月16日に始まり、6月2日まで続いたのでした。
そして、公開された宣伝を見て人々は、記者会見のひげ面とは真逆の洗練されたピアース・ブロスナンの姿を見て、一転して期待値を高めたのでした。
100回は死んでそうなスーパーアクション
ボンドムービーを愛する人たちが求めるのは、プレタイトルのアクションシーンから、並みのアクション映画が3本くらい作れそうなスケールのアクションを期待します。
そして、この作品において、ジェームズ・ボンドはその期待を見事に裏切らない活躍を見せたのでした。絶壁のようなダムからのバンジージャンプ・シーンと共に登場するニュー・ボンドは、タキシードやスーツではなく、先代ボンドのティモシー・ダルトンと同じようにコンバットスーツで現れます。
ここに衣裳が映し出すメッセージが見て取れます。つまりはタキシードを着て優雅に過ごすボンドよりも前に、当時大流行していたハリウッドアクション路線を洗練した形で見せてやろうという意気込みでした。
特にこの作品が意識していた作品は、前年の1994年に公開されていたアーノルド・シュワルツェネッガーのスパイ・アクション『トゥルーライズ』(監督:ジェームズ・キャメロン)でした。
この作品を越える為には、ボンドは、プレタイトル・アクションで100回は死んでそうなアクションシーンを見せる必要があったのでした。
ジェームズ・ボンド・スタイル1
コンバット・スーツ
- 黒のミリタリー・ジャケット、M65フィールドジャケットがベース、コットン/ナイロン製、フロントジップ、袖口にベラクロ
- 黒のミリタリー・パンツ、M65フィールドパンツがベース、コットン/ナイロン製
- 黒のアサルトベスト
- 黒のレザーグローブ
- ティンバーランド、黒のヌバックダービーシューズ
- オメガのシーマスター プロフェッショナル 2541.80.00
ゴールデン・ティナー・ターナー
007シリーズの醍醐味のひとつであるオープニング・タイトルのデザイナーが、モーリス・ビンダー(1925-1991、第1作『007/ドクター・ノオ』と、第4作『007/サンダーボール作戦』から第16作『007 消されたライセンス』までの14作品を担当)からダニエル・クラインマン(1955-)にバトンタッチされました。
クラインマンは、MTV監督上がりの人であり、以後『007 慰めの報酬』(2008)以外の007シリーズのタイトル・デザインを手がけています。
ちなみに、当初主題歌は、ローリング・ストーンズにオファーされていました。しかし、断られ、エイス・オブ・ベイスで決定しかけていたのですが、ティナー・ターナーがU2のボノとジ・エッジが作詞・作曲した(3人は当時、南フランスでご近所さん同士でした)楽曲を持って現れたことにより、彼女の主題歌が起用されたのでした。
ボノは、007の熱狂的なファンで、彼が新婚旅行で滞在した、イアン・フレミングのジャマイカの住居である〝ゴールデンアイ〟の想い出をもとに作曲した曲でした。
ジェームズ・ボンド・スタイル2
カジュアル・ルック
- ダークネイビーのケーブルニットウールセーター
- Sulka(シュルカ)、フレンチブルーコットンドレスシャツ、白いグリッドチェック
- ダークグリーンのシルクデイクラバット
- ブリオーニのカーキ・ウールパンツ、トリプル・リバース・プリーツ
- ブラウン・レザー・ベルト
- チャーチのチェットウィンド、ウォールナット・ブラウン、ネバダレザー
- オメガのシーマスター プロフェッショナル 2541.80.00
作品データ
作品名:007 ゴールデンアイ GoldenEye(1995)
監督:マーティン・キャンベル
衣装:リンディ・ヘミングス
出演者:ピアース・ブロスナン/イザベラ・スコルプコ/ファムケ・ヤンセン/ショーン・ビーン/アラン・カミング
- 【007 ゴールデンアイ】五代目ニュー・ボンド=ピアース・ブロスナン登場。
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.1|五代目ボンド=ピアース・ブロスナン登場
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.2|ブリオーニを着るピアース・ブロスナン
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.3|イタリアンスーツがニューボンドの戦闘服
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.4|ピアース・ブロスナンとオメガとBMW
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.5|サンローランの赤リップの殺し屋=ファムケ・ヤンセン
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.6|ニューM=ジュディ・デンチとファムケ・ヤンセン
- 『007 ゴールデンアイ』Vol.7|KENZOを着るイザベラ・スコルプコ