ルラボ 代官山
場所 東京・代官山
住所 東京都渋谷区恵比寿西1丁目35−2
電話 03-5459-2770
2007年にオープンした「LE LABO 代官山」が、日本の香水文化に与えた影響は決定的でした。日本にはじめて本格的な香水専門の路面店を誕生させ、香水を〝人生を豊かにするおしゃれな〟ライフスタイルアイテムへと昇華させたのでした。
一度は必ず訪れておきたい聖地、いや、もはや歴史的遺産。ここで経験を積んだ香水販売員たちが今ではフエギア、ドルセーなどの各ブランドでリーダー的な役割を果たしている、エリート養成所と言ってもいい〝聖地の中の聖地〟です。
代官山に聳えるフレグランスの聖地
今では、日本の香水愛好家だけでなく、ファッションを愛する人々も避けて通ることの出来ないフレグランス・ブランド、ルラボ(LE LABO)。その歴史はまだ新しくニューヨークで創業したのは2006年のことです。
何よりも興味深いのは、僅か一年後の2007年に路面店2号目として、(パリにではなく)この「LE LABO 代官山」がオープンしたことでした。創業者のひとりファブリース・ペノーの言葉をここで引用させてください。
エディ・ロスキーと私は、ル ラボを始めたとき、ある種の悲しみを感じていました。それは広告を通じて、メディアが売り込んでいる理想的な生活について、商品について、多くの場合無意識のうちに語られている嘘を知っていたからです。ファッションや美容は、商品を売るために女性や男性の不安を頼りにしていました。そんなやり方に私たちはうんざりしていました。
私たちは、真実であると感じられるものを作りたかったし、それが同じ考えを持つ人々を彼らが必要としているものと結びつけると信じていました。私たちが伝えたかった真実は、もちろん、原料と創造プロセスの誠実さについてでした。それは注文に応じてボトルを1本ずつ作るだけでした。10〜15分ほどかけて香水を準備し、調合し、ラベルを印刷し、その人の目を見て「ありがとう」と言いました。ですから、嘘はありませんでした。それは真実に基づいた革命でした。
創業してすぐ後に、私たちは、東京にル ラボの店を開きたいと考えている日本人男性と出会い、彼に惚れ込みました。彼は、今後10年間は利益は期待していないと私たちに話しました。それは、私たちがずっと愛してきた仏教に基づいた道徳観のようなものでした。
この日本人男性の存在により、ル ラボ代官山店がオープンし、日本の香水文化にも革命的な影響を与えることになったのでした。
百貨店のフレグランスコーナーで取り扱われないという希少性と、スタイリッシュなブランディングと、最高品質の香料を使用しているという自信を示す価格設定が、このブランドにステイタスを与えてゆきました。
そして、従来の香水の枠を飛び越え、ラグジュアリー・ファッションの一アイテムとして、日本のファッション業界人に認知させたことが、ルラボをオンリー・ワンの存在にしてゆきました。
2014年11月には、エスティローダーのグループ傘下に入るも、当初は慎重な出店により、ブランドの価値を落とすことなく興隆期を迎えたのですが、2020年を境に、完全にエスティローダー・ジャパンのコントロール下に置かれ、積極的な出店が行われています。
今後、ブランド力の低下が心配されるフレグランス・ブランドのひとつではありますが、今のところ、このブランドの魅力は何ひとつ損なわれていません。
さて、この代官山店が希少価値の高いフレグランスの聖地である理由は、以下の三点によるものです。
- ガイアック10(9月の一ヶ月間以外はここと都内店舗でしか購入できない)
- フレグランス専門店として一度は目に焼き付けておきたいハイセンスな建物の外観と内観
- フレグランスの知識がずば抜けて豊富な販売員の方々
日本の香水文化の歴史的遺産です。
今では〝行列が出来る香水店〟の筆頭のような存在になっており、代官山に用事がない限り、混乱を避けるため、丸の内店や渋谷パルコ、ニュウマン新宿、二子玉川など都内の他店舗に行く人々が増えているのですが、やはり、日本の香水文化の貴重な遺産として「代官山店」を一度訪れてみる事をお勧めします。
ここで、最後に私がとても感動した、2007年オープン当時の販売員様からお聞きしたお話をお伝えさせてください。オープン当時、日本の香水文化は全然盛り上がっていませんでした。
ちなみに日本の香水文化が本格的に盛り上がりを見せるようになったのは、2013年11月6〜11日にかけて初めて開催された香りの祭典「イセタン サロン ド パルファン」(伊勢丹新宿本店 本館7階催物場)からでした。
そして、その余波を受け、梅田阪急で2015年8月30日~9月7日にかけて「ギャラリー ド パルファン」と銘打たれた、関西初の香水イベントが行われたのですが、まだ日本の香水文化はそこまで熟していなかったのでしょう、調香師ごとに分けての香りの紹介など、本家の伊勢丹が行ってない革新的な内容が受け入れられることはなく、一回限りの開催となってしまいました(2024年5月に名を変えて復活)。
話を戻すと、2007年、「LE LABO 代官山」オープンから数年間は、まったくお客様が来ず、販売員が代官山駅周辺でチラシを配り、ひとりふたりとお客様を増やしてゆき、地道に認知度を高めていったのでした。