作品名:007 ユア・アイズ・オンリー For Your Eyes Only(1981)
監督:ジョン・グレン
衣装:エリザベス・ウォーラー
出演者:ロジャー・ムーア/キャロル・ブーケ/リン=ホリー・ジョンソン/ジュリアン・グローヴァー/カサンドラ・ハリス
ボンドガールというよりも、フランス王妃のような気品を持つ女優。
ボンドガール史上最も洗練された美貌と気品を持つと言われた人それがキャロル・ブーケ(1957-)です。
その魅力は、15歳でソルボンヌ大学に入学したという秀才ぶりからではなく、恐らくその専攻が哲学科であるという部分によるのでしょう。もうどんな表情を切り取っても、知的な美貌=氷のような美貌で、セクシャルなムードを一切生み出さない人なのです。
一見すると、ただの絶世の美女であり、無表情なファッション・モデルとも感じられるのですが、実際のところは、彼女は10代で、フランス国立高等演劇学校に編入し、やがて、ルイス・ブニュエル監督に見出され、1977年に映画『欲望のあいまいな対象』でデビューした本格派女優なのです。
ちょうど同時期に、『007 ムーンレイカー』のボンドガールのためのインタビューに挑み、次作のボンドガールを勝ち取り、本作に登場することに相成りました。ただし、「ロジャー・ムーアは私のお父さんみたいでした」(30歳の年齢差)と明言してしまった彼女は、プロモーションツアーには参加出来ませんでした。そして、その後、キャロルはボンド関係の質問及びイベントの参加を一切断っています。
本作の3年後の1984年に『Rive droite, rive gauche』でセザール賞助演女優賞にノミネートされ、1989年に『美しすぎて』で、セザール賞の主演女優賞を獲得します。さらに、1990年代にカトリーヌ・ドヌーヴから引き継ぐ形で、シャネルNo.5のイメージモデルに選ばれ、シャネルの顔になるのでした。
ボンドムービー史上最も有名な〝美脚〟
『007 ユア・アイズ・オンリー』で最も有名なショットと言えばこのボウガンを持った美脚股下ショットでしょう。
そして、このショットは、長らくキャロル・ブーケによるショットだと考えられていたのですが、実際のところは、当時22歳のニューヨークのパーツモデルであるジョイス・バートルによるものでした。
このポスターによって、世界中のどれだけの少年が、自分の中の男性に目覚めたのでしょうか?ボンドムービーが永遠の男性の教科書である理由は、男性は初体験の女性を永遠に忘れないことと同じ理由からなのです。
第三のボンドガール=シーナ・イーストン
第三のボンドガールとも言われるシーナ・イーストン(1982年にグラミー賞最優秀新人賞受賞)がタイトル・ソングを歌いながら登場します。オープニングタイトルにシンガーが登場したのは彼女だけです。当初、音楽を担当したビル・コンティは、ドナ・サマーかブロンディで考えていました。
シーナ・イーストンが歌う「ユア・アイズ・オンリー」は、全米No.4、全英No.8ヒットを果たしました。さらにアカデミー賞の最優秀主題歌賞にもノミネートされました(1982年3月29日にアカデミー賞授賞式にて、パフォーマンスを披露したが不評だった)。