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【シャネル】シコモア(ジャック・ポルジュ/クリストファー・シェルドレイク)

シャネル
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シコモア

原名:Sycomore
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュクリストファー・シェルドレイク
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/33,000円、200ml/57,200円
公式ホームページ:シャネル

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11番目の「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」


2007年にシャネルのプレステージ・コレクションとして「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」がスタートしました。そして、その11番目の香りとして、2008年にシャネルの3代目専属調香師ジャック・ポルジュクリストファー・シェルドレイクにより調香されたのが「シコモア」(オード・トワレ)でした。

元々ココ・シャネルの人生のさまざまなエピソードを香りで表現しようとしたこのコレクションは、たくさん売らんがための香りではなく、「クリエイトしたい」という制作意欲だけで作られたものでした。この香りは、最初の10本と一緒にすでに完成していた作品でした。

「シコモア」とは、エジプトイチジク(別名プラタナス)の意味であり、古代エジプトでは、生命の樹として崇拝されました。ストラディバリウスのような名楽器や家具などに用いられる、高級木材のことです。

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シャネルの幻のウッディ・フレグランス

1930年の幻の「シコモア」 ©CHANEL

木を使った外箱のアイデアは、時を経ても素晴らしいと思います。

クリストファー・シェルドレイク

1930年に、ココ・シャネル(1883-1971)が、ウッディ・フレグランスの集大成を作りたいと念願し、シャネルの初代専属調香師エルネスト・ボーによって、バイオレットとタバコを中心としたバルサミック・ノートの「シコモア」が創造されました。しかし、全く評価されず、すぐに市場から消えてしまいました。

この香りは、その「シコモア」のレシピを再現したものではなく、香りもまったく違う、いわば初代をオマージュしたものです。それはまさに森林の香りの集大成を生み出すべく、上質なスモーキーさで知られるハイチ産のベチバーを使用しています。

ちなみにジャック・ポルジュが1984年に創造した「ココ」もまた、オリジナルの「シコモア」にインスパイアされ生み出された香りです。そういう意味においては「ココ」はこの香りの母親とも言えます。

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『影の男』シェルドレイクの真骨頂

この香りは、ヨーロッパの人間にはどこか懐かしい匂いでもあるんです。非常に心地よくて、落ち着く感じ、成分としてベチバーの作用なんですけどね。

ハイチ産の最高級のベチバーを蒸留し、根の青臭さ、土臭さは捨てて、キャラメルとチョコレートに似た香りを残しておく。そのベチバーに、サンダルウッドとピンクペッパーを加え、さらにトップノートに一瞬だけグレープフルーツが香るようにしてあります。

さらにムスクをほんの少し。結果、とても豊かで丸みのある香りになりました。

クリストファー・シェルドレイク

この香りを創造するにあたり、ジャック・ポルジュは、セルジュ・ルタンスの数々の香りを調香し、ベチバーを魔法のように使いこなせるクリストファー・シェルドレイクに大きな役割を与えました。

そして、シャネルの創るベチバーとして、他に類を見ない「ラグジュアリー・ベチバー」の香りを創造することに成功したのでした。

それは大地を連想させる天然香料の良さを突出させることではなく、3種類のベチバーを駆使し、そのスモーキーな糸によってシャネルのスーツを創るという大それた試みでした。つまりはエレガントな女性のためのベチバーです。そのために、ジュニパーとサンダルウッドが実に効果的な役割を果たしています。

ちなみにベチバー精油は、その根茎から採取された後、熟成されればされるほど香りの質は増します。この香りのベチバーは18ヶ月から24ヶ月熟成された最高級のものです。

そして、3種類のベチバー精油とは、軽やかで癖のない精油が抽出される水蒸気蒸留法と、(チョコレートのような)パチョリに似たアーシィな精油が抽出される溶剤抽出法と、グレープフルーツのようなフレッシュな精油が抽出される二酸化炭素抽出法によって抽出されたものでした。

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孤独の中で美しさを放つ森の香り

今回ジャックが一番に考えたのは「女性に好かれるウッディノート」であること。「レ ゼクスクルジフ」は基本、使い手の男女を問わないのですが、今回に関しては、男性は二の次です。

クリストファー・シェルドレイク

森の奥深くに存在する数々の樹と葉と土が未練がましく 秘密のような香りを 底知れぬ孤独のうちに放っている。そんな孤独の森の美しい香りを人々に届けようという気持ちでジャック・ポルジュとクリストファー・シェルドレイクが調香に挑んだこの香りは、森とシャネルという最もかけ離れた世界観をひとつのボトルに濃縮させた怖ろしい作品とも言えます。

そんな孤独の森の美しい香りは、アルデハイドとピンクペッパーに背中を押されるように弾き出された3種類のベチバーがクリーミーなサンダルウッドになだめ透かされるようにして、(ダークチョコの香ばしさを伴わせた)森に差し込む光の輝きのようにきらめきながらはじまります。

澄みきった空気のようなベチバーは最初から最後までこの香りの世界の中心に立っています。やがて針葉樹の清々しい香りが、タバコとバイオレット、ヘーゼルナッツの香りと共にやって来ます。さらに雨上がりのアーシィーな土の香りも漂います。

それはまさに木と葉と土と水のハーモニーです。そして、最後に、インセンスが森全体を包み込むことにより、「シコモア」はただの森の香りの再現ではなく、透明なスモーキーブーケとでも呼びたい孤独の中で美しさを放つ森の精神性を体現することに成功するのです。

まさに森とシャネルという対極の世界を、野生と貴族主義の奇跡的な同居により達成したベチバー・フレグランスの最高峰です。それでいてフェミニンなところもなお素晴らしい。

2016年9月には、オード・パルファム・ヴァージョンが発売され、これが現行品となっています。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「シコモアも、ベルトラン・デュショフールの「タンブクトゥ」に権威という名の光沢を加えたものだ。それはミンティ・リコリスにパチパチと燃える焚き火から放散される香りを組み合わせたものだ。」

「シャネルの調香師ジャック・ポルジュとクリストファー・シェルドレイクは、このアコードならベチバーの抱える大きな問題(少量では構成があやしくなり、過剰では差別ができない)を解決できると考えた。」

「ベチバーはアニシックとスモーキーという2つの香調をもつ。だがタンブクトゥの2つの香りでうまくわきを固めてやり、サンダルウッドをたっぷり加えると、ベチバーもやっと然るべきところに落ち着く。すべて合わすと、変わっているがとてもナチュラルなアコードとなり、匂いを嗅ぐたびに段々と深みのあるオリーブになっていく。」

「タンブクトゥには緊張感や謎めいたところがあるが、シコモアはあえてそこを敬して遠ざけた。ひたすらフレッシュで最高に健康的で、申し分ないほどの豊かな力強さがずっと続く。これをつけて喜びに身もだえしないようなら、医者に診てもらったほうがいい。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:シコモア
原名:Sycomore
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ、クリストファー・シェルドレイク
発表年:2016年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/33,000円、200ml/57,200円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:アルデヒド、ピンクペッパー、ベチバー
ミドルノート:タバコ、バイオレット、ジュニパー、香辛料
ラストノート:イトスギ、サンダルウッド