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ニナ・リッチ

【ニナ リッチ】ニナ(ジャック・キャヴァリエ/オリヴィエ・クレスプ)

ニナ・リッチ
©NINA RICCI
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ニナ

原名:Nina
種類:オード・トワレ
ブランド:ニナ・リッチ
調香師:ジャック・キャヴァリエオリヴィエ・クレスプ
発表年:2006年
対象性別:女性
価格:20ml/4,700円、30ml/6,600円、50ml/8,400円、80ml/12,210円

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〝カワイイは正義〟さあ、禁断の果実をふりかけるのよ!

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©NINA RICCI

イタリア人の女性ファッション・デザイナーであるマリア・ニナ・リッチ(1883-1970)は、1932年に、フランス・パリのカプシーヌ通り20番地でニナ・リッチを創業しました。1948年には名香「レールデュタン」を発表し、オートクチュールだけでなく、フレグランス・ブランドとしての地位も獲得しました。

1998年以降は、プーチ・グループの傘下に入り、フレグランス製造・流通を委託することになりました。

決してよそ見をせずに、ある一点だけを見つめて生み出された香り。それがニナ・リッチの「ニナ」です。その一点とは、〝10代の特権=カワイイは正義〟を生きる少女たちに捧げることです。

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ファンタジー・フレグランスという流行を生み出した香り

ニナ「1987年」ファースト・バージョン。

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ニナ「1987年」ファースト・バージョン。

元々1987年に発売されていた香りを、2006年にボトル・デザインと香調共に一新したのがこの香りです。フレッシュなフルーティ・フローラルの香りは、オリヴィエ・クレスプジャック・キャヴァリエによって調香されました。

一新されたボトルデザインは、フランボワーズ色に輝くクリスタルの赤りんごです(茎と葉の部分は、シルバーになっています)。1952年に創作した「フィーユ・ディヴ」の瓶から着想を得たボトル・デザインです。

エチルマルトールによって生み出された甘いキャンディのような香り(しかし、お姉さんのようにきりっとした花の雰囲気もある)であり、中高生から20代を対象に作り出されました。フレグランスにファンタジー(おとぎ話)の要素を組み込むという流行を生み出した香りです。

2006年の(白雪姫と赤いリンゴをモチーフにした)広告キャンペーンにおいて、当時18才のファッション・モデル、ルスラナ・コルシュノワ(1987-2008)が起用されました(2005年最も売れた新人モデルの一人)。当時のニナ・リッチのデザーナー、オリヴィエ・ティスケンスのドレスがとても似合っています。

ちなみに彼女は、2008年6月に、NYの自宅アパートから飛び降り自殺をしました。その悲劇性と共に、この香水は永遠に人々の記憶に残ることでしょう。

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少女が女性として覚醒していく香り

©NINA RICCI

©NINA RICCI

片想いでどきどきしている、真っ赤なほっぺの少女が、ついに大人の階段を上る決意をする。その胸の高まりが弾けていくように、苦いカイピリーニャと甘酸っぱいレモンがキラキラと解き放たれるようにこの香りははじまります。

少女は、ついに禁断の果実を手に取る決意をするのでした。

酔わせるようなシトラスのほろ苦い香りが広がる中、すぐに魔法はかけられるのです。うっとりするような甘くて酸っぱいリンゴとプラリネが広がってゆきます。

しかし、ニナがニナである所以は、キャンディのようなリンゴ(トフィー・アップル=リンゴ飴)からはじまり、甘やかなガーデニアとピオニーの香りがスーっと広ってゆき、まるで少女が女性として覚醒していくような瞬間にあるのです。

子供っぽいファンタジックな無邪気さの中から生まれる大人のロマンティックな空気がそこにはあるのです。高揚する心(弾むシトラスとリンゴ)が、燃えてゆき、リンゴは食べたくなるような焼き菓子の香りとなるのです。

少女がイブニングドレスを着て大人の女性になる。現実社会ではほとんどない、『シンデレラ』や『白雪姫』のようなおとぎ話の世界観がそのまま素肌の上で展開していくメルヘンなオーラに包み込まれてゆきます。

やがて、綿菓子のようなバニラムスクの白い靄の中から、ミルキーなシダーウッドが、甘い物語の中に、大人のロマンスの渋みを加えてゆきます。素足にイブニングドレスを着ているのではなく、ヘアメイクをしっかりと施し、ハイヒールを履き、ワンピースを着ることがすっかり似合うようになった10代の女性の香りを満ち広がらせてゆきます。

さて「ニナ」は、2007年の劇場版『HERO』にも登場しました。松たか子が使用しており、ストーリーのロマンティックな要素を担っていました。

こういった入り方から香水に興味を持つことも、ボトルデザインの可愛らしさから興味を持つことでも、どういう興味の持ち方をしても良いのが、香水の寛容さです。

それでいて、「香水が好きです」と言うと、必ず好感度が上がる、完全無欠の大人の女性の嗜みである所が、香水の不思議なところです。気安くて、でも気高い印象を与える唯一無二な嗜み。それが香水を知るということなのです。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ニナ」を「虹色のシャーベット」と呼び、「キャンディみたいな匂いを放ちたいというティーン向けの、けばけばしいフルーツ調のひとつかもしれない。」

「ただ、このおいしそうなライムバニラのトップノートと、虹色のシャーベットが織りなすサイケデリックな淡い色彩の渦巻きには、ついそそられてしまう(この類いが流行る発端になった、フルーツポンチの香りに似せてつくってあるとルカは固く信じている。その香りはとうに廃盤になったものの、忘れがたいエスカーダ1993年のシフォン・ソルベ)。」

「親しみやすく、ラクトニックで、砂糖を思わせる甘いドライダウンはちょっとくどいけれど、胸のむかつきを覚えるほどではない。ほとんど気にとめないジャンルだけど、これは間違いなくうまくいった一品。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ニナ
原名:Nina
種類:オード・トワレ
ブランド:ニナ・リッチ
調香師:ジャック・キャヴァリエオリヴィエ・クレスプ
発表年:2006年
対象性別:女性
価格:20ml/4,700円、30ml/6,600円、50ml/8,400円、80ml/12,210円


トップノート:カイピリーナライム、アマルフィ・レモン
ミドルノート:グラニースミスアップル、ピオニー、ガーデニア、プラリネ、バニラ、トフィー アップル
ラストノート:アップルウッド、ヴァージニアシダー、コットンムスク