8.シャネル
女性の永遠の憧れ。たとえどんなに下品な商売の女性が所有していようとも、たとえどれだけ理不尽に価格が高騰していこうとも、シャネルは最上級のステイタス・バッグなの。そして、そんなシャネルというブランド・イメージを創造したココ・シャネルとカール・ラガーフェルドは驚異的にすごい老人なのだ。 |
ガブリエル・ボヌール・シャネル(1883-1971)。12歳の誕生日を迎える前に母親を失い、孤児院と修道院で育ったガブリエル。デザイナーとしての専門的な知識なくして、1921年にシャネルNo.5、1924年にリトル・ブラック・ドレスを提案し、1926年にファッション誌で取り上げられ、喪服の色に過ぎなかった黒い服から、エレガンスの要素を見事に引き出した人。
たくさんの色を使えば使うほど、女はかえって醜くなるというのを女たちは気がつかない。 ココ・シャネル
そして、1928年、イギリスの貴族との交際の果てに、「世界一金持ちの男とつきあうというのは、一番金のかかることよ」という言葉と共に、世界初のツイードスーツを発表したの。さらに、1930年にショルダーバッグを提案し、女性の両手を解放したの(ただし、この時のバッグはチェーンではなく革のストラップ)。やがて、第二次世界大戦が勃発し、シャネルはファッション界を引退し、ナチス・ドイツの協力者として、戦後、フランス人から売国奴と罵られる存在にまで急転降下して落ちぶれたわけ。普通だとここで全ては終わるわけなんだけど・・・
シャネルという存在が、エルメスやルイ・ヴィトンという存在を易々と超えている理由はこれからのココ・シャネルの行動によるものなの。そんなどん底の彼女が、1954年に70歳にして、亡命先のスイスからパリのリッツへと居を移し、ファッション界へ復活をかけた戦いに望んだのよ。そして、翌年1955年2月、2.55バッグが生み出されたわけ。
今ではマトラッセと呼ばれるこのバッグは、大きく「2.55」と「クラシック」に分けられ、一般的に言及されるマトラッセの形はシャネルのエンブレムが前面に打ち出された「クラシック(定番)」を指すの。しかし、本場フランスやアメリカにおいては、「2.55」の方が遥かにステイタスの高いバッグなの。なぜなら71歳のココ・シャネルが再起を賭けて全身全霊を込めた作り出したバッグなんですもの。(圭子・スカイウォーカー)