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カイエデモードに元気を分ける!|2026年7月29日

暑中お見舞い申し上げます。カイエデモードを愛読して頂いている皆様に是非読んで頂きたいです。

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ウーマン イン ゴールド|クリムトの黄金美女の〝謎めいた微笑と忍びよる恍惚〟の香り

キリアン
©KILIAN PARIS
キリアン
この記事は約9分で読めます。

ウーマン イン ゴールド

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Woman in Gold
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2017年
対象性別:女性
価格:50ml/36,850円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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クリムトの黄金美女の〝謎めいた微笑と忍びよる恍惚〟の香り

©KILIAN PARIS

ゴールドを超越し、本質的に触れられる性質を引き出すために努力をする。これがクリムトの作品を通しての苦悩であり、それはアデーレ・ブロッホ=バウアーの最高にセンシュアルな肖像の中で私たちを魅了します。キリアンはこの共鳴する二面性を2つの香水で探究し、闇と光、女性性と男性性を呼び起こしました。その結果、隠された、タイムレスな深淵のオーラを生み出したのです。最も興味をそそるコンポジションの1つです。

公式サイトより

キリアンのブランド誕生10周年を記念し、2017年9月に『フロム ダスク ティル ドーン—ゴールドに輝くアートの世界に魅せられて—』コレクションとして二作品が発表されました。〝夕暮れから夜明けまで〟の意味を持つこのコレクションは、ハプスブルク帝国だったオーストリアの画家グスタフ・クリムト(1862-1918)を讃えたものであり、彼の黄金時代にインスピレーションを受けたものでした。

キリアン・ヘネシーは、クリムトこそが金色をメインに据えた芸術作品の大家だと考えていました。二作品のうちのひとつである「ウーマン イン ゴールド」は、クリムトが3年の歳月をかけて完成させた絵画『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』(1907年)からインスパイアされた香りです。

それは「オーストリアのモナリザ」「黄金のアデーレ(The Woman in Gold)」とも知られています。彼女の纏う黄金に香りがしたら、一体どのような香りなんだろうか、そこからこの香水は始まったのでした。〝それを身につける女性と同じくらい複雑で魅惑的な香水〟と形容されるオリエンタルシプレ・フローラルの香りはカリス・ベッカーによって調香されました。

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黄金のバニラが生み出す『21世紀のシャリマー伝説』

©KILIAN PARIS

私にとって「ウーマン イン ゴールド」は、21世紀のオーバーラグジュアリーバージョンの「シャリマー」です。

キリアン・ヘネシー

「あの素晴らしいシャリマーを現代版にしてみよう」。ゲランの「シャリマー」がこの作品の創作のスタートラインでした。「シャリマー」にはバニラが欠かせません(といってもバニラの香りがする合成のバニリン)。

今の時代にバニラをオーバードーズしたらどうなるだろう。たまたま、ジボダン社の持つサステナブルな環境で育てられたマダガスカル産の天然のバニラアブソリュートがありました。非常に高価なものでしたが、上質であり、キリアンのおかげでカリスはこの香料を大量に使うことができました。

ユニークなトップノートがあらわにするのは、スポンジベルガモットオイルです。それは昔からある技術によって抽出された美しい品質のものなのです。

カリス・ベッカー

そして、ここに大量のベルガモットを加えることにしました。それは昔ながらのスポンジを使った圧搾法によって抽出したエッセンスで、新鮮なベルガモットの香りがするものでした(熱を使わないためデリケートな香りが壊されない)。

さらに、この煌めく明るさを強調するために入れたのがイエローローズでした。イエローローズは、フルーティでヴァイオレット調の香りがするローズです。ローズを入れているというのが「シャリマー」と違う点でした。

クリムトが1903年の旅行中にラヴェンナで見た、ビザンティン時代の金のモザイク画が「黄金様式」の確立に大きな影響を与えました。彼の作品がとても興味深いのは、黒の存在により金がより輝くのを手伝っている点です。

これと同じ方法で香りを作るのは面白く、私はある意味、金のように輝く原料を選びました。それはベルガモットやハニー、アニス、イエローローズといったものです。反対に、ダークなタッチはブラックペッパー、(ブラック)パチュリ、(ブラック)バニラ、レザーを使っています。

そして、同じ構造を持つにも関わらず、全く正反対の香り「ウーマン イン ゴールド」「ゴールド ナイト」を生み出しました。コレクションごとに私のクリエイティブのプロセスは全く変わるのです。

キリアン・ヘネシー

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『フロム ダスク ティル ドーン』コレクションの香水ケース

©KILIAN PARIS

グスタフ・クリムト『接吻』(1907-1908)

私は、単に刺激するために刺激を与えるということには興味が湧きません。必要なのは芸術的な理由なのです。

私のアイデアは、光と影のコントラストを巧みに利用し、私たち人間は皆、善と悪の両方から成り立っているということを表現することでした。しかし、光と闇の内には、無数の側面が存在するのです。私はこの二面性をこのコレクションで表現したかったのです。

キリアン・ヘネシー

アールヌーヴォーの豪華な香水のケースは、ゴールドで装飾され、クリムトの『接吻』を再解釈したものになります。また、イタリアのラヴェンナにあるサン・ヴィターレ聖堂で、クリムトが衝撃を受けたモザイク画からもインスパイアされています。

クリムトの<黄金の女>は二重映像としての<闇>をはらんでいる。クリムトの女性像は、黄金と闇の両極の間を揺れ動いているのだ。

黄金と闇は、表と裏でもある。黄金の光は表面で反射する。表面は表皮であり、皮膚であり、エロスであり、女性であり、装飾である。(中略)闇は表面の下の内部であり、内臓である。内面的なもの、隠されたもの、ミステリー、意味、異形、そして死を表している。

『グスタフ・クリムトの世界 女たちの黄金迷宮』海野弘 監修、p34)

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アデーレ・ブロッホ=バウアーの生涯

アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I

アデーレ・ブロッホ=バウアー(1907)

私がクリムトの大好きなところは、彼が破壊的な性格だというところです。彼は新しいスタイルの絵画を考案した、クラシカルな画家なのです。また、彼の絵画の背後には、たくさんの神話や歴史があります。私は彼の作品が単純に魅力的だと考えています。

クリムトの黄金様式の2つの絵画に心が打たれました。特にそのうちのひとつである『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』は、彼女の伝記を読んだこともあり引き込まれてゆきました。彼女の人生はとても悲劇的で、それ故に、クリムトがどのように彼女を悲哀の様相で描いたかを創造し、心が動かされました。

キリアン・ヘネシー

グスタフ・クリムトが生涯で唯一二度描いた女性(もう1つは1912年に金ではなく色彩で描いている)であるアデーレ・ブロッホ=バウアー(1881-1925)は、砂糖で財をなした実業家フェルディナント・ブロッホ=バウアーの夫人でした。

彼女は、19歳の時に結婚した17歳上の夫に甘やかされ、自由奔放に生きた女性でした。特に性について比較的自由な考えを持っており、グスタフ・マーラーやリヒャルト・シュトラウス、シュテファン・ツヴァイクといった著名な芸術家たちをサロンに招いていました。

彼女がクリムトと出会ったのは、自身が芸術家の集まるサロンを開いたときでした。夫フェルディナントが妻の肖像を依頼し、クリムトはアデーレを描きました。それは、アデーレの顔と手以外は黄金を貼り巡らせ、アールヌーヴォーの曲線とアールデコの直線を巧みに使い分けた見事な作品でした。四角と円のデザインはそれぞれ男と女を表し、男と女の愛の織物が描かれています。

アデーレは、2度の流産と赤ちゃんの死を経て、子供に恵まれませんでした。病がちで、特に偏頭痛に苦しめられており、ヘビースモーカーで、非常に華奢で、憂鬱症でした。その顔立ちは理知的で、細長く、洗練されていたが、傲岸不遜な性格でした。姪のマリアの回想によると、彼女の笑顔を見たことがない程だったそうです。

しかしクリムトの絵画では、微笑か恍惚の表情か、わずかに笑みがあるのです。一方で、澄んだ暗い瞳の奥で何が起こっていたのかを読み取るのは難しい。彼女は明らかに深みと謎に満ちた女性なのです。

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それを身につける女性と同じくらい複雑で魅惑的な香水

©KILIAN PARIS

弾けんばかりの黄金の眩しさに満ちたベルガモットとマンダリン・オレンジが、ピンクペッパーとアルデハイドにより、もっともっと黄金の輝きに満ち満ちるようなシュワシュワっとした感覚から〝黄金の貴婦人〟という名の香りははじまります。ベルガモットが形容しがたい方、ミステリアスな憂いのある美しさを解き放っています。

すぐにローズとバニラとアキガラウッドの〝官能の三重奏〟が、黄金のシトラスと溶け合いながら、素肌の上に広がってゆきます。ローズのあらゆる側面が回転木馬のように、素肌の上でよろめきながらまわりまわって満ち広がってゆきます。

ちなみにアキガラウッドとは、2011年にジボダンによって、パチョリの精油から生み出された新香料で、スパイシーでありながら清潔でフレッシュなウッディな香りす。あらゆる香りの要素を兼ね備えた素材の一つであり、まるでケチャップのように、舌のあらゆる部分に同時に刺激を与えるような感覚を与えてくれます。

やがてトンカビーンとムスクとパチョリがすべてをひとまとめにし、クリムトのあの絵画のように〝黄金のシンフォニー〟を奏でることになります。そしてパウダリーで、甘くメランコリックなゴールデンローズシャワーを全身で浴びていくような、エレガントかつスタイリッシュな、類い稀なるクリーミーさを持つ高級石鹸の余韻に満たされてゆきます。

この香りがキリアン版「ポートレイト オブ ア レディー」と呼びたくなるのは、こちらは、素肌が黄金の輝きに満ちるような〝とんでもなくロマンティックで、ゴージャスな女性〟を生み出してくれるからです。『華麗なる一族』や『ダイナスティ』という言葉がぴったりな女性のための香りと言えます。

まさに「ラブ ドント ビー シャイ」の姉妹フレグランスとも言えます。イブニングドレスと最も相性の良い香りです。

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香水データ

香水名:ウーマンインゴールド
原名:Woman in Gold
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:カリス・ベッカー
発表年:2017年
対象性別:女性
価格:50ml/36,850円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:ベルガモット、マンダリン・オレンジ、アルデハイド、ピンクペッパー
ミドルノート:ローズ、バニラ・アブソリュート、フリージア、ゼラニウム、マシュマロ
ラストノート:パチョリ、アキガラウッド、トンカビーン、バニラ、ムスク