ラ フィーユ ドゥ ベルラン(ベルリンの少女)|雪の中で恐怖に慄きながら咲く深紅のローズ一輪

セルジュ・ルタンス
セルジュ・ルタンス
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ラ フィーユ ドゥ ベルラン(ベルリンの少女)

原名:La Fille de Berlin
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/22,000円、100ml/32,560円
公式ホームページ:セルジュ・ルタンス

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ソ連軍により蹂躙された少女たちの血の香り

『嘆きの天使』(1930)マレーネ・ディートリッヒ

ひとつの街、ひとつの歴史、ひとつの体験……その美しさと棘のある性格が相まって悪名高い女性を思い浮かべるには、それだけで十分。意志が強く、爆発的な性格 ―― ただひとつ確かなのは、彼女は決して誰かに振り回されるようなことはしないということだ!ペッパーの香りがほのかに漂う、スパイシーなローズのオードパルファム。まさに女性の気質そのもの!

「いにしえのベルリン。幻想の都市。ディナージャケットを着てたたずむ少女の姿。彼女は棘のあるバラだ、手を出さないほうがいい。彼女は極端なところまで突き進む少女だ。できる時は人を癒やし、そして望む時は……!彼女の香りはあなたを高みへと誘い、揺さぶり、衝撃を与える。雪の上、銀色の薔薇が放つ慰めと情熱の香り」セルジュ・ルタン

セルジュ・ルタンス公式サイトより

セルジュ・ルタンスの「ブラック&ベージュ コレクション」より、2013年に発売された「ラ フィーユ ドゥ ベルラン」は、フランス語で〝ベルリンの少女〟の意味を持ちます。オリエンタル・フローラルのこの香りは、クリストファー・シェルドレイクにより調香されました(2018年3月21日からは「コレクションノワール」のひとつとなる)。

ノンブル ノワール」「ローズドニュイ」「サマジェステラ ローズ」に次ぐセルジュ・ルタンスの4つ目のローズ・フレグランスです。

1930年代のマレーネ・ディートリッヒ(この時代、ベルリンはキャバレーやナイトクラブの文化が盛んだった)と、1945年のアドルフ・ヒトラー自殺後に、ソ連軍によって陥落したベルリンで生活する少女をテーマにした香りです(ちなみに独ソ戦=大祖国戦争の死者は、ドイツが1075万人、ソ連が2660万人と言われている。しかも、ドイツから侵略してきたので、その報復は凄まじいものとなりました)。

セルジュ・ルタンスが「ベルリン終戦日記 ある女性の記録」の読後、とても感動し、生み出された香りです。日本だと「小町園」という名になるでしょう。

この薔薇の液体の赤は、ディートリッヒの冷酷な赤い唇と、ソ連軍により蹂躙された少女たちの血の赤なのです(ルタンスも「彼女の唇にはジークフリートの血が流れている」という言葉を紡いでいます)。

ヴァイオレットという言葉は、単に色を意味するだけでなく、フランス語の動詞「violer」(強姦する、傷つける)の語源も内包しています。それゆえ、この言葉は境界の侵犯を強く暗示しているのです。

セルジュ・ルタンス(以下、すべての引用はセルジュ・ルタンス氏のお言葉)

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雪の中で恐怖に慄きながら咲く深紅のローズ一輪

©Serge Lutens

©Serge Lutens

美とは、立ち上がる瞬間である。それは、自分の廃墟を歩き、山に登る瞬間である。それがこの香りのテーマです。私たちは皆、自分自身の廃墟を持っているのです。

はじまりは、墓石の冷たさのその下に亡骸が眠る土の香りから。すぐに、雪の中で恐怖に慄きながら咲く深紅のローズ一輪が現れます。どんなに踏みつけられようとも、赤い液体を流そうとも、雪の上に横たわる薔薇は、やがて金属製の薔薇として孤高の輝きを放つ。

1940年代のベルリンの少女は、地獄の日々を乗り越えて、今の私たちには想像もつかないほど、極限の薔薇の輝きを手にしたのです。薔薇を棘ごと抱きしめるような感覚に包まれてゆくのです。

すぐにブラックペッパーが降り注ぎ、銀色の遥かなる薔薇の香りは、(ミントのような)ゼラニウムと(パウダリーな)ヴァイオレットによりメタリックさを増し、透き通るようなスパイシーローズへと昇華してゆきます。

やがて、ハニーを中心にパチョリとモスが煌き、薔薇に少女のようなベリーの甘さと大人のワインの芳醇さのコントラストを生み出してゆきます。そして、ムスクとアンバーによってアニマリックな石鹸のような余韻を肌に残してくれるのです。

「ベルリンの少女」は赤色をめぐる私の物語で、かなり暴力的なものだった…そういったものがすべて、再び浮上してきたんです。

この香りが、少女という名でありながら、ミドルに至るまで全く少女に相応しくない香り立ちがするのは、少女時代に少女として生きる権利を奪われた〝赤い涙の香り〟だからなのです。望まぬ逆境の上に咲く花の圧倒的な美をテーマにしたこの香りは、マレーネ・ディートリッヒの生き様と共通する部分が大いにあります。

しかし、何よりも衝撃的なのはルタンスの告白にあります。

実は、この香水は、私がはじめて作り出した私自身の香りなのです。このベルリンの少女とは私のことなのです。私は1942年に生まれました。私は姦通により生まれたのです。そして、当時のヴィシー政権には姦通罪が存在しました。だから、私は母親の手から引き離されたのでした。そして、父親も私を見捨てたのでした。私にとって、父親を憎み続けることが、彼との絆を維持する唯一の方法なのです。

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香水データ

香水名:ラフィーユドゥベルラン(ベルリンの少女)
原名:La Fille de Berlin
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2013年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/22,000円、100ml/32,560円
公式ホームページ:セルジュ・ルタンス


トップノート:ローズ、ゼラニウム
ミドルノート:パルマローザ
ラストノート:パチョリ、モス、ハニー