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カイエデモードに元気を分ける!|2026年7月29日

暑中お見舞い申し上げます。カイエデモードを愛読して頂いている皆様に是非読んで頂きたいです。

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ゴールド ナイト|ベートーヴェン・フリーズに描かれた『黄金の騎士』の香り

キリアン
©KILIAN PARIS
キリアン
この記事は約7分で読めます。

ゴールド ナイト

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Gold Knight
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:パスカル・ゴーラン
発表年:2017年
対象性別:男性
価格:50ml/37,950円

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ベートーヴェン・フリーズに描かれた『黄金の騎士』の香り

©KILIAN PARIS

『幸福への憧れ』(左壁)

『敵対する勢力』(中央の壁)

『敵対する勢力』(中央の壁)

『歓喜の歌』(右壁)

ゴールドを超越し、本質的に触れられる性質を引き出すために努力をする。これがクリムトの作品を通しての苦悩であり、それはアデーレ・ブロッホ=バウアーの最高にセンシュアルな肖像の中で私たちを魅了します。キリアンはこの共鳴する二面性を2つの香水で探究し、闇と光、女性性と男性性を呼び起こしました。その結果、隠された、タイムレスな深淵のオーラを生み出したのです。最も興味をそそるコンポジションの1つです。

公式サイトより

キリアンのブランド誕生10周年を記念し、2017年9月に『フロム ダスク ティル ドーン—ゴールドに輝くアートの世界に魅せられて—』コレクションとして二作品が発表されました。〝夕暮れから夜明けまで〟の意味を持つこのコレクションは、ハプスブルク帝国だったオーストリアの画家グスタフ・クリムト(1862-1918)を讃えたものであり、彼の黄金時代にインスピレーションを受けたものでした。

キリアン・ヘネシーは、クリムトこそが金色をメインに据えた芸術作品の大家だと考えていました。二作品のうちのひとつである「ゴールド ナイト」は、オリエンタル・ウッディの香りはIFFのパスカル・ゴーランにより調香されました。

1901年から1902年にかけて40歳になったグスタフ・クリムトが創作した、ベートーヴェン第九交響曲に基づき3つのパートに分かれた全長34メートル(縦約2メートル)を超える壁画《ベートーヴェン・フリーズ》(セックスを連想させる男根、女陰、精子、卵子などのモチーフが描かれている)に描かれた黄金の騎士にインスピレーションを受けて生まれた男性のための香りです。

第九交響曲とは、1824年5月7日にウィーンで初演されたベートーヴェン最後の交響曲です。第1楽章から第4楽章まで約1時間の演奏時間があり、特に第4楽章はシラーの詩『歓喜に寄せて』の108行から30行を選び出して再構成していることで有名です。

その象徴的書き換えとしてクリムトが描いた《ベートーヴェン・フリーズ》は、第一楽章を<幸福への憧れ>で、第二楽章を<敵対する勢力>で、第三楽章と第四楽章を<歓喜の歌>で表現しています。

金の甲冑を着た騎士は、第一楽章を描いた<幸福への憧れ>に出てきます。その騎士とは、苦しむ人類を救うため、弱者の求めに応じて幸福を手に入れるため、戦いに向かっていく戦士なのです(苦しみは、第二のパネルに出てくる不幸・愚行・死、邪欲・不貞・不摂生のこと)。

クリムトが1903年の旅行中にラヴェンナで見た、ビザンティン時代の金のモザイク画が「黄金様式」の確立に大きな影響を与えました。彼の作品がとても興味深いのは、黒の存在により金がより輝くのを手伝っている点です。

これと同じ方法で香りを作るのは面白く、私はある意味、金のように輝く原料を選びました。それはベルガモットやハニー、アニス、イエローローズといったものです。反対に、ダークなタッチはブラックペッパー、(ブラック)パチュリ、(ブラック)バニラ、レザーを使っています。

そして、同じ構造を持つにも関わらず、全く正反対の香り「ウーマン イン ゴールド」「ゴールド ナイト」を生み出しました。コレクションごとに私のクリエイティブのプロセスは全く変わるのです。

キリアン・ヘネシー

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『フロム ダスク ティル ドーン』コレクションの香水ケース

©KILIAN PARIS

プライベートでキリアンを愛用しているリタ・オラ。

グスタフ・クリムト『接吻』(1907-1908)

私は、単に刺激するために刺激を与えるということには興味が湧きません。必要なのは芸術的な理由なのです。

私のアイデアは、光と影のコントラストを巧みに利用し、私たち人間は皆、善と悪の両方から成り立っているということを表現することでした。しかし、光と闇の内には、無数の側面が存在するのです。私はこの二面性をこのコレクションで表現したかったのです。

キリアン・ヘネシー

アールヌーヴォーの豪華な香水のケースは、ゴールドで装飾され、クリムトの『接吻』を再解釈したものになります。また、イタリアのラヴェンナにあるサン・ヴィターレ聖堂で、クリムトが衝撃を受けたモザイク画からもインスパイアされています。

クリムトの<黄金の女>は二重映像としての<闇>をはらんでいる。クリムトの女性像は、黄金と闇の両極の間を揺れ動いているのだ。

黄金と闇は、表と裏でもある。黄金の光は表面で反射する。表面は表皮であり、皮膚であり、エロスであり、女性であり、装飾である。(中略)闇は表面の下の内部であり、内臓である。内面的なもの、隠されたもの、ミステリー、意味、異形、そして死を表している。

『グスタフ・クリムトの世界 女たちの黄金迷宮』海野弘 監修、p34)

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悲劇の一歩手前に存在する、蜂蜜とアニスとパチョリの<歓喜の歌>

©KILIAN PARIS

©KILIAN PARIS

「ゴールド ナイト」は、華麗さとエロティシズム、そして深遠な官能性の輝きを鎧を覆うように溶かした液状の金のようなものです。

パスカル・ゴーラン

実際にこの香りを体感してみると、「ゴールド ナイト」は、壁画全体のベートーヴェンの交響曲第九番<歓喜の歌>の空気を捉えた香りのように感じられます。それは、幸福も暗黒も含めた歓喜の香りなのです。

ロダンがクリムトに直接〝偉大なまでに悲劇的なフレスコ画〟と言い放ったこの「幸福を求める黄金の騎士」は、聖なる刀剣を捨て、全裸で快楽を貪ります。それはまさにラグジュアリーホテルのビュッフェに置かれているコムハニー(巣蜜)が素肌の上に滴り落ちていくように黄金の蜂蜜に包まれた、ダークなパチョリを貪る感覚です。

蜂蜜の甘さは最初からフルスロットルです。見事な塩梅にフレッシュに軽やかに泡立つベルガモットが、蜂蜜にさらなる黄金の輝きを与えています。そこに(ピリッとした漢方薬のような)アニスが溶け合い、さらに(インクとダークチョコレートを思わせる)苦い漆黒のパチョリが混じり合う事で、まばゆいばかりに大胆で、魅惑的で、獰猛な動物的な、薬草が溶け込んだ蜂蜜の〝魔性のパワー〟がより深く掘り起こされてゆきます。戦慄させるように、メントールのような清涼感もはじめに感じることが出来ます。

かくして、陶酔と恍惚を誘う芳醇たる蜂蜜を作り出すことが出来る蜜蜂の集団を、黄金の甲冑のように身に纏った恐ろしい破壊神を身に纏うことになるのです。

コニャックとラムが実に巧妙に、知らず知らずに酔わせるように、注ぎ込まれてゆきます。完全犯罪の匂いがします。だんだんと濃厚に蕩けていくクリーミーなバニラの甘さに騙されてはいけません。世界中のあらゆる女性をその甘さと毒針で虜にする悪魔のような、かぎりなくブラックに近いゴールドな男の香りそれが「ゴールド ナイト」なのです。

この香りの先には悲劇しか存在しません。だからこそ、悲劇の一歩手前に存在する<歓喜の歌>を求め、この香りに男達は手を出さずにはいられないのです。ある意味「バック トゥ ブラック」に黄金の鎧を着用させた、戦士モードの香りとも言えます。

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香水データ

香水名:ゴールドナイト
原名:Gold Knight
種類:オード・パルファム
ブランド:キリアン
調香師:パスカル・ゴーラン
発表年:2017年
対象性別:男性
価格:50ml/37,950円


トップノート:アニス、ベルガモット
ミドルノート:蜂蜜、バニラ
ラストノート:パチョリ