フレンチ キス
原名:French Kiss
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:75ml/38,830円
スーパー ラ プティット ローブ ノワール
「女性の官能性を呼び覚ます」をコンセプトに、2008年に生み出されたゲランのエクスクルーシブ・フレグランス・コレクション「エリクシール シャルネル(=肉感的な秘薬)」から、第六弾にして最後の香りとして2014年に発売されたのが「フレンチ キス」です。
このコレクションは、時のクリエイティブ・ディレクター、シルヴェーヌ・ ドゥラクルト(マチルド・ローランと共にジャン=ポール・ゲランの下で学んだ女性)により生み出されました。
この香りはゲランの人気リップスティック「キスキス」の20周年を祝い創られたフレグランスです。
ここでまず「フレンチ キス」という名前に対する日本人と欧米人の温度差について理解しておく必要があります。日本人にとってのフレンチキスとは〝優しい接吻〟のイメージなのですが、(実際の意味として)欧米人にとってのフレンチキスとは〝濃厚なキス(舌を絡め合わせる)〟という意味なのです。
そんな大胆な名を冠したこの香りは、最上級の香料を使用して生み出された、愛情とセックスの間に存在するものを香りで表現した稀有な香りとも言えます。
口紅を塗った唇と舌の間にある香り
新鮮なアイリスの根は土の匂いがし、純粋なイリスバターの香りはキュウリのような香りがします。希釈すると、ヴァイオレットやレッドフルーツ、ウッディでパウダリーな香りがします。ゲランが使っているアイリスは、チョコレートのアクセントを出すためにアルコールの中で熟成させて抽出しているものになります。
アイリスは、調香の組み合わせ次第で無限の可能性を持ちます。ローズと合わせれば、クラシックかつ荘厳さを生み、女性のリップスティックのような香りになります。ウッディな香料と合わせれば男性的な香りに、オレンジブロッサムと合わせればベビーパウダーのようなイノセントな香りになり、レザーノートとの相性は抜群です。
個人的にはグルマンノートやナッツの香りと合わせた時に最も興味深い香りに感じ、それを「アイリス ガナッシュ」で表現しました。さらにレッドフルーツとアイリスは、フレーバーにも使われるほど完璧に相性が良く、「フレンチ キス」で組み合わせてみました。
デルフィーヌ・ジェルク(ゲランの調香師)
そんなフレンチキス=濃厚なキスの香りは、ライチとラズベリーのカラフルな甘酸っぱいブレンドからはじまります。チェリーコークを連想させるトップノートの合成香料臭が、この香りが、自然を香りにしたものではなく、人工的に生み出される女性の官能的な瞬間を香りにしたものであることを伝えてくれます。
間違いなくこの香りは、男性に対して、キスをした瞬間を連想させる匂いの創造を念頭においた香りです。女性の唇に触れ、柔らかい舌と接触する間の時間を表現した香りなのです。
そして、ミドルノートにおいて現れるローズとバイオレットがリップスティックを連想させ、化粧品全般を連想させるパウダリーなアイリスと歩調を合わせ、バニラとホワイトムスクによって柔らかさを手にします。
まさにそれはロージィなマカロンのような女性の口内の甘さと、彼女の手の中にある、彼からプレゼントされたパステルカラーのビニールでラッピングされた花束が折り重なるような香りとも言えます。
インスタント・ビューティー時代のための香り。それは大真面目に外見の美しさだけを探求する女性に捧げられた、ゲランが大真面目に不真面目さを追求した「究極のラ プティット ローブ ノワール」なのです。その世界観が最も分かりやすいのは、クリスティーナ・アギレラの「キャンディマン」のミュージック・ビデオでしょう。
世界は女性の唇を中心に回っているのです。そして、最後にひとつ世界中の男性諸君に問いかけよう「あなたは今までどれだけの口紅を食べてきましたか?」と。
フレデリック・マルの「リップスティック ローズ」の影響を多大に受けているこの香りは、ゲランの五代目調香師ティエリー・ワッサーにより調香されました。
香水データ
香水名:フレンチ キス
原名:French Kiss
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサー
発表年:2014年
対象性別:女性
価格:75ml/38,830円
トップノート:ライチ、ラズベリー
ミドルノート:バイオレット、ローズ
ラストノート:ホワイト・ムスク、バニラ、アイリス、ヘリオトロープ