エメロード
原名:Emeraude
種類:パルファム
ブランド:コティ
調香師:フランソワ・コティ
発表年:1921年
対象性別:女性
価格:不明

エメロードとシャリマーの関係性について

©COTY

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「シャリマー」よりも4年早く発売されたオリジナルの「エメロード」は最高傑作だった(コティはゲランにこの処方を売ったという噂だ)。今でもオリエンタル調の香水では右に出るものはないと思う。
ルカ・トゥリン
1921年5月5日にシャネルがエルネスト・ボーによる「N°5(No.5)」を発売し、アルデハイドという合成香料で、香りの世界に革命を起こした、同じ年に、歴史の中にうずもれたひとつの香りが誕生しました。
実は、世界最初の〝オリエンタル・フレグランス〟ではないかと言われているコティの「エメロード」です。フランソワ・コティにより調香されました。
〝Emeraude〟とは、フランス語で、世界の4大宝石に数えられ、クレオパトラも愛した「宝石の女王」〝エメラルド〟の意味です。
その四年後に、現在、ゲランが〝世界初のオリエンタル・フレグランス〟と宣言している「シャリマー」が誕生するのですが(ジャック・ゲランの愛妻が「エメロード」を愛用していたことが許せないため作ったという逸話あり)、この「エメロード」は、とてもややこしいのですが、1905年にコティから発売された〝オリエンタルの始祖〟と呼ばれている「ロリガン」の究極形態と言える香りです。
「シャリマー」が孤高の存在として〝オリエンタルの覇権〟を手にした背景には、「ジッキー」の究極形態であるという揺るぎない事実があるのですが、もうひとつの背景として、コティの香水は、高品質のものを低価格で提供するという姿勢を維持することが出来なくなった事実もあります。
そのため1963年に、世界一の製薬会社ファイザーによりコティは買収され、その企業理念が失われました。それはファイザー帝国のコスメ事業への進撃のはじまりだったのですが、その結果「エメロード」の歴史的価値は封印され、その品質は劇的に墜ちてゆきました(1991年まで)。
エメラルドの瞳が、その涙を流した後、さらに澄んだ瞳を取り戻す。

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もぎたてのベルガモットが、エメラルドの閃光を放っていく感覚からこの『エメラルドの伝説』ははじまります。ライム、レモン、オレンジの三色の香りのコントラストが、素肌に燃えるエメラルドの瞳のような甘やかな輝きを生み出してゆきます。
すぐに〝オリエンタルの魔法〟がかけられてゆくようにバニラが、アンバー、クマリン、ベンゾイン、オポポナックス、サンダルウッド、パチョリを従えながら到来します。パウダリーかつクリーミーな甘さと苦みと辛みのコントラストを素肌で味わう、魅惑のランデブーのはじまりです。
「エメロード」の魅力は、煌めくエメラルドの瞳が、涙で潤み、その涙を流した後、さらに澄んだ瞳を取り戻す瞬間にあります。だんだんと澄んだエメラルドの瞳が、取り戻されていくように、ジャスミンとローズ、イランイランを中心とした豊かに柔らかいフローラルブーケが、清涼感溢れるハーブ、タラゴンのアクセントと共に、その瞳にくちづけをするように溶け込んでゆくのです。
アニマリックさはほとんど感じられず(ほんの少しのシベットだけ)、「シャリマー」的な誘うような官能性はまったく存在しない、清潔感溢れる、幻想的なおとぎ話のようなオリエンタルです。それは夜は娼婦、昼は淑女のような対比的な関係とも言えます。
〝オリエンタルの定義〟それは、太陽を盗むベルガモットの輝きからはじまり、白昼夢のようなフローラルブーケに満たされ、夕陽に明日への希望を誓うアンバリーバニラの温かい余韻に包まれるというものなのですが、よりシンプルに説明すると、ひとつの花やひとつの果実の香りを認識させることなく、最初のひと嗅ぎで、今まで嗅いだことのない美しい香りだと認識させるところにあります。
「エメロード」は、かぎりなくうつくしく、かぎりなくやさしい香りとして、その後の「シャリマー」誕生の道を切り開いたのでした。
香水データ
香水名:エメロード
原名:Emeraude
種類:パルファム
ブランド:コティ
調香師:フランソワ・コティ
発表年:1921年
対象性別:女性
価格:不明


トップノート:ベルガモット、オレンジ、レモン
ミドルノート:ジャスミン、イランイラン、ローズ、ブラジリアン・ローズウッド
ラストノート:オポポナックス、アンバー、ベンゾイン、バニラ、サンダルウッド、パチョリ
