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【バイレード】エレベーター ミュージック(ジェローム・エピネット)

バイレード
©BYREDO x OFF-WHITE
バイレード
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エレベーター ミュージック

原名:Elevator Music
種類:オード・パルファム
ブランド:バイレード
調香師:ジェローム・エピネット
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/33,000円

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2018年、バイレードはオフホワイトとコラボした。

©BYREDO x OFF-WHITE

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2006年に創立されたバイレードから、2018年3月3日にパリで発売された「エレベーター ミュージック」は、ジェローム・エピネットによって調香されました。「エレベーター・ミュージック」とは、いわゆるバックグラウンド・ミュージックの意味です。

オフホワイト(Off-White™、2013年創業)の創業者兼クリエイティブディレクターであるヴァージル・アブローとのカプセルコレクションとして発売されました(他にバッグ、Tシャツ、デニム)。

僕が目に見えないものをデザインするのはこれがはじめてなんだ。

振り返れば、10代の頃からブランドオタクだった僕にとって、フレグランスは、スヌープ・ドッグがデビューアルバムの『ドギースタイル』(1993)の中で「クールウォーターコロン」を引用した時、即買いしたくらい僕を刺激して止まないものなんだ。

ヴァージル・アブロー

このヴァージルの発言がこの香りの方向性を明確に示してくれています。彼がこの香りを作るためにベン・ゴーラムに要求したのはただ一点だけでした。それは「ほとんど匂わない香り」にして欲しいということでした。

ヴァージルとベンの最初の出会いは、2009年冬まで遡ります。この時、ベンはストックホルムのホテル・シェップスホルメンのオープニングパーティに、バイレードがホテルのアメニティーとして使用されることもあり、招かれていました。そこに丁度、ストックホルムのファッションウィークを楽しんでいたヴァージルとカニエ・ウエストも出席し、三人は意気投合したのでした。

そして、2011年に、ニューヨークのバーニーズでベンが打ち合わせしていた所に、二人は突如現れ、カニエが会議中のベンを呼びつけ、その場にある全てのバイレードのフレグランスを購入したことから、3人は話し込み、いつかコラボしようと約束を交わしたのでした。

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ほとんど誰も理解できないこの香りのテーマ

カールステン・ヘラー

2004年に発表された「エレベーター」。

今回のコラボシャツにも「エレベーター」がプリントされています。©Off-White

エレベーター・ミュージックは、その場の雰囲気を作るためにバックグラウンドで流されるもので、それが主役となることはまずない。僕はこの香りを、日々の生活のバッググラウンドで流れるエレベーター・ミュージックと考えている。

ヴァージル・アブロー

この香りのイメージは、ベンとヴァージルが敬愛するアーティストのカールステン・ヘラーが2004年に発表した「エレベーター」と題したインスタレーションでした。

それは1973年にスウェーデンの精神物理学者グナー・ヨハンソンが導き出した「エレベーター・シンドローム」からインスピレーションを得たものでした。「エレベーター・シンドローム」とは、身振りや目の動きなど、人間の身体の動きを光点で追いかけ心理状態を察知するという斬新な運動知覚に対するアプローチでした。

この運動知覚に対するアプローチを香りによって行おうとしたのがこの香り「エレベーター ミュージック」なのですが、正直私にはチンプンカンプンです(そして、実際のところ、インタビューを読む限り、そこまで深い意味はなく、ただヘラーのアートをTシャツのプリントに落とし込みたかった感じがします)。

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真の意味でのファッション・フレグランス

©BYREDO x OFF-WHITE

なにひとつ目立たせないことがこの香りの精神かもしれません。ほとんど認識出来ない香りだからこそ、その中に、人々の願望が入り込む余地が生まれるのです。

つまりはこの香りは、10%の香料と90%の願望によって生み出される香りなのです。

アクアティックなバンブー(竹)に、ヴァイオレットが溶け込む中、みずみずしいジャスミンが加わことによってこの香りははじまります。アンブレットが温かく香り全体をぼかしていきます。

そして、ルバーブに、(サンダルウッドのように)ウッディなアミリスとスモーキーなウッドが混じりあい、化学物質のような奇妙な香りを放ちながら、ムスクとガイアックウッドが肌馴染みが良いのか、ただ香りが早々に消え去ってしまっただけなのか分からない〝唖然とする余韻〟を生み出してくれるのです。

世界中で200本~300本限定で発売されたというこの香りが教えてくれること。それはファッションとは、最初に最も嫌悪を覚えるものを提示し、それを愛するように仕向けていく工程のだということです。そういう意味において、この香りは、オフホワイトをそのようにして好きになった人々に対するひとつの儀式のような香りと言えます。

そして、オフホワイトに対して、ミーハー的熱狂、もしくは思い入れを持っていない人にとっては、お金をドブに捨てるようなドブの香りに過ぎません。

これぞ真の意味でのファッション・フレグランスです。かくして、この香りが発表された数週間後の2018年3月25日に、ヴァージル・アブローが、ルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブディレクターに就任することが高らかに宣言されたのでした。

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香水データ

香水名:エレベーター ミュージック
原名:Elevator Music
種類:オード・パルファム
ブランド:バイレード
調香師:ジェローム・エピネット
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/33,000円


トップノート:バンブー、ミッドナイトヴァイオレット
ミドルノート:アンバー、ヘディオン、ジャスミン、アンブレット
ラストノート:アミリス、バーンドウッド、ムスク、シダー、ガイアックウッド