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【ディプティック】オーラント(セルジュ・カルギーヌ)

ディプティック
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オーラント

原名:Eau Lente
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:セルジュ・カルギーヌ
発表年:1986年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック

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人生の戦いに向けて、心を鎮めてくれる香り

アレキサンダー大王(アレクサンドロス3世、紀元前356年-紀元前323年)の時代、次の日に大きな戦いを控えていた夜に、スパイスと樹脂を焚き、スモーキーな甘い芳香で満たすことによって、神々の心は鎮められ、英気は養われていくと信じられていました。その頃の処方からヒントを得て生み出された香りです。

1986年にディプティックの創業者の一人デスモンド・ノックス=リットがクリエイティブ・ディレクターの役割を務め、ガリマールの調香師セルジュ・カルギーヌにより調香された「オーラント」とは、フランス語で「スローウォーター」の意味です。

ローマ皇帝ネロの治世下の古代ローマで活動した〝薬草学の父〟ペダニウス・ディオスコリデスが記した『薬物誌』にも登場するオポポナックスがこの香りの主役です。そして、何よりも『薬物誌』そのものの香りとでも形容したくなる神秘的な香りです。

つまりは古代ディプティックの香りなのです。

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アレキサンダー大王のオポポナックス

©Diptyque

シナモン、オポポナックス、バニラが三位一体となった「オーラント」は、三つの香料の名を聞くとお菓子のような香りを連想させるのですが、実際はそうではない、シャープなスパイスをスローなスパイスに変えていく不思議な香りです。

オポポナックス(樹脂)の王宮に向かって、クローブ、シナモン、ブラックペッパー、ナツメグ、アニス、ジンジャーといったオリエントのスパイス達が、インドからスパイスロードを経由して、ローズゼラニウムとグリーンジャスミンを尻目に疾走するようにしてこの香りははじまります。

自分の手でスプレーした香りであるはずなのに、どこか遠い、過去の世界から〝香りの煙〟がやって来たように感じるのがこの香りの神秘的な特徴です。

だんだんとスパイスは悠久の時の流れを思わせる円やかな渦の中で(チャイ、またはコーラのような酸味も感じさせながら)クリーミーさを増し、大らかなオポポナックスの樹脂の甘さとパウダリックなシナモンバニラの中に溶け込んでゆきます。

アレキサンダー大王は、戦いに勝利した後、オポポナックスなどの香りを燻した煙で身を清めることを好んだといわれています。そして、この香りはそんな大王の習慣を彷彿させるような肌馴染みの良さがあります。

何よりも、オポポナックスの持つ神秘的な力=心静かに時を待つように、五感を研ぎ澄ましてくれます。どこかギリシア正教会の独特なお香の芳香を連想させ、ビザンチン様式の教会の世界へと嗅覚の旅に誘ってくれる香りでもあります。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「さまざまな迷走から生まれた独創性あふれるディプティックの香りは、フレッシュな空気と星を求めて、監獄の天井を打ち破ったかのようだ。」

「オー ラントは賑やかなスパイス棚から漂うドライウッディな課おいrに、みずみずしいフレッシュハーブと石鹸様ミントバジルを足している。最初は透明感あふれるモダンなオリエンタルから、リッチフローラルブーケへと変化し、最後にクラシックな樹脂アンバーへと移っていく。」

「ディプティックの香水が作り出すトップノートの表現は、ほかではほとんどお目にかかれない。生き生きとして深みのある印象的な香りだ。コンセプトは古いが、出来た香りは実にモダン。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:オーラント
原名:Eau Lente
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:セルジュ・カルギーヌ
発表年:1986年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック


トップノート:クローブ、シナモン
ミドルノート:香辛料
ラストノート:オポポナックス、シダー