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カイエデモード香水図鑑を応援する|2025年9月2日

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【ヒューゴ ボス】ボス オードトワレ(アニック・メナード)

その他のブランド
©HUGO BOSS
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ボス オードトワレ

原名:Boss Bottled
種類:オード・トワレ
ブランド:ヒューゴ・ボス
調香師:アニック・メナード
発表年:1998年
対象性別:男性
価格:30ml/6,048円、50ml/7,776円

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男達を、エレガントな天使にも悪魔にも変えてきたヒューゴ・ボス

©HUGO BOSS

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ヒューゴ・ボスが作ったナチス青年キャンプの少年たちの制服、1936年。

1923年にヒューゴ・フェルディナント・ボス(1885-1948)により設立されたドイツのファッション・ブランド、ヒューゴ・ボスの興隆は、1930年代のナチス・ドイツの第三帝国と共にはじまりました。

世界恐慌により、わずか6台のミシンしか手元に残らなかった倒産寸前の会社が、1931年にヒューゴがナチ党に入党したことから、主にヒトラーユーゲントの制服を製造し、さらにはドイツ国防軍直属の制服ブランドとして、1932年より売り上げを大幅に伸ばし、破産から救われました。

そしてドイツの敗戦までナチス・ドイツ親衛隊の制服を仕立て続け、工場では、強制収容所の囚人や戦争捕虜を含む強制労働者を働かせていました。1933年よりゲシュタポの制服の生産を開始し、後に武装SSの制服も担当するようになりました。ちなみにヒューゴは、制服のデザインには関わっていませんでした。

1948年に戦争犯罪に問われたヒューゴは亡くなり、息子たちが事業を引き継ぎ、1950年代にメンズスーツが人気を呼び、最近では大谷翔平が公式アンバサダーとして人気を誇っています。

すっかり洗練されたメンズスーツ・ブランドとしての地位を確立していたヒューゴ・ボスが、シグネチャー・フレグランスとして1998年に生み出したのが「ボス オードトワレ」でした。アニック・メナードにより調香されました。

この香りは、現在に至るまで、ボス・フレグランスの不動の地位に君臨しています(別名「ボス・ナンバー6」とも呼ぶ)。世界中で21世紀に入り売れているメンズ・フレグランスの10本のうちのひとつに選ばれています。

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焼きたてのアップルパイに包み込まれる香り

©HUGO BOSS

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当時、メンズ・フレグランスにグルマンの香りを取り入れるのは斬新な試みでした。男性的なフレグランスにバニラを使うというのは、本当に衝撃的な効果でした。ですから、これは大胆な香りなのです。そして構成的に言えば、共通の繋がりとしてウッディな香りが背景にあります。

シダーウッドがすべての香りをつないでいます。そこに他のウッディ系の香りが加わります。パチョリもあれば、ベチバーもある。バニラは滑らかさを与え、この二つの柱を融合させ、まとめ上げているのが、まさにこの香りの真骨頂なのです。

グルマンな雰囲気がありながら、ある意味とても温かみのある雰囲気も持ち合わせています。ボスの男は頼りがいのある存在でなければなりません。男性がスイートになれるという事実が私は好きです。たとえ男らしさが強くても、どこかスイートなところがあるので、誰もがその男性を頼りにすることができるのです。

アニック・メナード

スタイリッシュなシルエットのメンズスーツで有名なヒューゴ・ボスのメトロポリタン・シックなイメージを更に引き立てていくように、摘み立てのフレッシュなアップルからこの香りははじまります。

1998年までメンズ・フレグランスが、爽やかにジューシーな甘いフルーツの香りからはじまることはありませんでした。そのため、この香りの甘いフゼアのようなすべり出しは、当時としてはかなり斬新な香調でした。特に、男性的な香料であるゼラニウムやカーネーションとのコントラストが見事で、〝新しい男の魅力を見つけてくれる香り〟として、数多くのコピー・フレグランスを生み出すことになりました。

そんなジューシーなアップルのフルーティーな爽快感が、熟したプラムとシュワッと弾けるベルガモット、キレのあるゼラニウムによって引き立てられてゆきます。そしてすぐに到来するシナモンが、温かく、実に温かくまろやかに、温厚な男性の優雅な微笑みのように、アップルを包み込んでゆくのです。

かくして素肌の上に、びっくりするほどエレガントな焼きたてのアップルパイの香りが広がってゆきます。さらにスパイシーなカーネーションが添えられているのが、この香りのエレガンスをより格上げする役割を果たしています。

やがて清潔感に満ちた木=シダーの香りの奥深くから、ゆっくりマホガニーとオリーブウッドとサンダルウッドの鮮やかな木の温もりと、アーシィーなベチバーとバニラの甘さが溶け合い、クリーミーかつアロマティックなアップルパイの余韻に満たされてゆきます。

甘さ、フレッシュ、スパイス、ウッディの完璧なバランス。10代から20代の女性が憧れる、ダークスーツを上手に着こなした大人の男性の香りであり、そんな香りに包まれたい女性も使用可能な香りです。アニック・メナードの恐ろしさは、メンズ・フレグランスでありながら、この香りを理想の男性の胸で抱きしめられている香りとして表現しているところにあります。

ボトル・デザインは、ドイツを代表するプロダクト・デザイナー(オペラやバレエのステージ・デザインも手がける)であるペーター・シュミットによるものです。

キャンペーン・モデルとして、かつてライアン・レイノルズジェラルド・バトラー起用され、現在はクリス・ヘムズワースが起用されています。

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香水データ

香水名:ボスオードトワレ
原名:Boss Bottled
種類:オード・トワレ
ブランド:ヒューゴ・ボス
調香師:アニック・メナード
発表年:1998年
対象性別:男性
価格:30ml/6,048円、50ml/7,776円


トップノート:プラム、オークモス、アップル、レモン、ベルガモット、ゼラニウム
ミドルノート:マホガニー、カーネーション、シナモン
ラストノート:サンダルウッド、オリーブツリー、バニラ、ベチバー、シダー