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深作欣二

『里見八犬伝』Vol.2|夏木マリと薬師丸ひろ子、そして岡田奈々

深作欣二
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日本のファッション・アイコン、夏木マリ様。

夏木マリ様は1952年に生まれました。ということはよく考えてみると、この作品の撮影当時、マリ様は、31歳だったのです。しかし、この作品で玉梓を演じている彼女は、年齢不詳な色香と美に包まれていました。

60代になっても夏木マリ様は、ソフィア・ローレンやシャーロット・ランプリング、イネス・ド・ラ・フレサンジュのように魅力的です。その美の疑念が、明らかにアンチエイジングではなく、エイジング・ビューティーであるところが、素晴らしいわけでしょう。

そして、なによりも、スタイリッシュな個性を持っているところが、スタイリストから聞いた表面的なファッションの流行にのっかかっている一般的な日本の芸能人のお粗末なファッション感度(よくファッション誌なんかでうんざりするほど記載されている「スタイリストさんに教えてもらって・・・」なんていう低レベルなあの感覚)との格の違いなのです。

真にファッション感度の高い人は、歴史的、文化的、芸術的アプローチでファッションと言うものを捉えるものなのです。ただスタイルが良くて、スタイリストが推してくれた服を着る人たちは、ただのマネキンです。

ファッションとは、内面から滲み出る知性であり、それ以上でもそれ以下でもありません。それは間違っても、自撮りしたスタイリングを見せびらかして喜ぶ類の、安っぽいファッショニスタ感覚とは相容れないものなのです。

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すべてのアンチエイジングに必死な女性たちに・・・


「もとふじ~~」と息子を呼ぶその声の妖艶なこと。更には、真田広之にすごく近い位置で語りかける姿のこれまた妖艶なこと。そんな彼女をこう呼ばせていただこう、至近距離に強い女・夏木マリ様と。

1970年代から80年代はじめにかけて日本女性の妖艶さを体現していたのが〝Wナツキ〟と私が呼ぶ二人でした(もう一人のナツキは、夏樹陽子様です。詳しくは、「トラック野郎・度胸一番星」(1977)か、江戸川乱歩シリーズの「エマニエルの美女」(1980)を見て頂ければ、ご理解いただけるでしょう)。

本作のハイライトと言えるシーンは、「血の池で若返るシーン」です。こういうシーンをサラッとやってのけるのが、夏木マリ様という女優の凄さです。そして、この血の池シーンこそが、世界中に溢れかえるアンチエイジングに夢中な人々に対するアンチテーゼとも言えるシーンなのです。アンチエイジングに励む有閑マダムたちの本質。それは、玉梓の近親相姦的な精神構造と似たようなものなのではないでしょうか?

嗚呼・・・しかし、この頃の夏木マリ様は、そのムードが「テオレマ」(1968)「ベニスに死す」(1971)のシルヴァーナ・マンガーノに似ていて、とても素敵です。

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薬師丸ひろ子には、男装がとても似合う。

薬師丸ひろ子の入浴シーンではあるが、夏木マリ様の入浴シーンのインパクトに完全に喰われてしまいました。

薬師丸ひろ子の魅力を映像で捉えることが出来たカメラマンはなかなかいない。

しかし、彼女には、少年的なアンドロギュヌス性があります。

こういう表情に薬師丸ひろ子の魅力があります。

そして、この衣裳にも・・・

ただ、僕はこれ一本しか付き合いがなくて、何だあのダンゴみたいな顔は、どこが人気出るんだ、と思ってましたけれど、やっぱりいいなあと思う瞬間はありました。

深作欣二

薬師丸ひろ子が演じた清姫という役柄は、黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」の雪姫であり、オードリー・ヘプバーンの「ローマの休日」のアン王女だったのです。しかし、実際のところ、そんな筋書きからもたらされるカタルシスは、この作品には一切存在しません。

つまりは薬師丸ひろ子の扱いがとても残念な作品と言えます。折角、男装姿が似合う彼女に対するカメラワークが、その魅力を全く捉え切れていません。

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岡田奈々こそが清姫らしかった・・・

CM美女だった岡田奈々の扱いを深作欣二は心得ていた。

美しい虹色の着物。妖怪となって蘇える浜路。

小太刀を構える姿の美しい婦人隊を指揮する浜路。

この頃の岡田奈々の30秒間の美貌に勝てる女性はいませんでした。

妖怪メイクを施した岡田奈々。



深作監督の岡田奈々(1959-)の魅力の引き出し方は、実に見事でした。

CMで輝いた女性の魅力は、30秒間の命です。出来るだけ短く、美しく、話させずに、幻想的にそのイメージを壊さないように「里見八犬伝」の世界に溶け込ませています。

作品データ

作品名:里見八犬伝 (1983)
監督:深作欣二
衣装:森護/豊中健/山崎武
出演者:薬師丸ひろ子/真田広之/夏木マリ/志穂美悦子/岡田奈々/京本政樹/千葉真一