ルール ブランシュ
原名:L’Heure Blanche
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサー、デルフィーヌ・ジェルク
発表年:2020年
対象性別:女性
価格:125ml/92,400円
「白の時間」が与えてくれる香りの余白の美学
白があるのではない。白いと感じる感受性があるのだ。だから白を探してはいけない。白いと感じる感じ方を探るのだ。
『白』原研哉
2020年2月にゲランの限定の香りとして、(2015年よりゲランの第二調香師である)デルフィーヌ・ジェルクと五代目調香師ティエリー・ワッサーにより生み出された新作の名は「ルール ブランシュ」(=白の時間)です。
フランスの造形美術のデザイナーであるクロディーヌ・ドレ(1951-)は、純白の紙と絹で独特の世界観を作り出す芸術家です。そんな彼女とゲランがコラボした香りです。
クロディーヌは、1994年以降、クエストの協力により、彼女の世界観に、香りを加えることにより、「白の美学」をより明確に表現しようとつとめてきました。
2018年にはゲランの本店で、「時間の魂」という個展が開催され、この個展が今回の香りにつながる導火線となりました(ニキ・ド・サンファルやサラ・ムーンに続きゲランに招待された13人目のアーティスト)。
「ルール ブランシュ」は、白をイメージした香りではありません。この香りは、白を感じる感じ方を探る香りなのです。だからこそ、雪のような自然界の中でほとんど存在しない〝白〟に身を浸すように、〝現実世界と抽象世界の境に迷い込んでいく香り〟なのです。
混沌としている現代の香水の世界の雑音や情報の荒波を乗り越え、全てに余白を与えてくれる香り。それが「ルール ブランシュ」の役割です。
天使がそばを通り過ぎたような純白の余韻=白の時間は、「天国で作り出された香り」というテーマも持ち合わせています。それは白い花々とアイリス、ホワイトムスクにより生み出されるミルキーノートを主体とした香りです。
世界でもっとも京都に近い香り
「白の時間」とは、〝新世界のはじまり〟〝未知の場所に到達する期待感〟を兼ね備えた〝真っ白な香り〟です。それはどこか遠くで、鐘の音が鳴っているような仄かな金属の香りからはじまります。すぐに世界中の涙が集まり、その涙をすかしてきらめいているような雪解けの香りに包まれていきます。
やがてアイリスとホワイトムスクによって生み出された白昼夢のような「白い時間」の中を、稀少なホワイトフローラルの天然香料たちが、キラキラと透き通るように輝くように、白い四角の中に白い四角を無限に生み出してゆきます。
そして、白の儚さは、真っ白に燃え尽きるように、パウダリーなムスクにアンバーのニュアンスが加わり浮遊感を生み出しながら、透き通るようなグリーンフローラルの〝永遠の静寂〟のようなひと時を経て、この香りが、〝死にもっとも近い香り〟であることを教えてくれるのです。
顔をさらに白く塗り、白無垢の着物に身を包み、真っ白の世界に向かって進んでいく香り。そういう意味においては、日常生活からもっとも遠い香りであり、芸術にもっとも近い香りと言えます。
69匹の白い蜂に導かれる〝うっとりするほど美しい死=終わりのない夢の中に眠る〟香りです。そして、もし龍安寺の石庭に香りをつけるとするならば、この香りほど相応しい香りはなく、このことからこの香りは、京都にもっとも近い香りとも言えるのではないでしょうか。
2020年2月1日に世界中で限定1888個が発売されました。日本では2020年11月4日~10日に開催された伊勢丹新宿店の「サロン ド パルファム」にてそのうちのいくつかが限定発売されました。
香水データ
香水名:ルール ブランシュ
原名:L’Heure Blanche
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ティエリー・ワッサー、デルフィーヌ・ジェルク
発表年:2020年
対象性別:女性
価格:125ml/92,400円
トップノート:ウォーター・ノート
ミドルノート:ミルク、ホワイトフラワーズ
ラストノート:ホワイトムスク、ホワイトアンバー、アイリス