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【ル クヴォン メゾン ド パルファム】ベチバー(ジャン=クロード・エレナ)

その他
©le couvent maison de parfum
その他ジャン=クロード・エレナブランド調香師香りの美学
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ベチバー

原名:Vetivera
種類:オード・パルファム
ブランド:ル クヴォン メゾン ド パルファム
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2022年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/4,180円、100ml/23,760円
公式ホームページ:ル クヴォン メゾン ド パルファム

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ル クヴォン メゾン ド パルファムについて

ミニム修道院

ル クヴォン メゾン ド パルファムというブランドのルーツは、ミニム修道院(クヴォン・デ・ミニム)です。元々、日本でもこのブランド名で知られていました。

ルイ・フュイエ

1614年に、南仏・プロヴァンスの丘陵地帯の中心地であるリュベロン地方のマーヌに建立されたミニム修道院は、ルイ・フュイエ(1660-1732)が若き日に教育を得た場所でした。彼は後に太陽王ルイ14世により王室お抱えの植物学者に任命され、未知なる動植物を探求し、南米大陸や世界を旅したのでした。

そんなルイ・フュイエの世界各地への冒険あふれる旅と植物学における功績を称え、ミニム修道院の伝統と歴史を継承すべく誕生したのがこのブランドです。

クヴォン・デ・ミニムは、元々ロクシタンの姉妹ナチュラルスキンケアブランドとして2004年に誕生し、価格もロクシタンより3割ほど安く設定されていました。日本上陸は、2012年10月25日に、うめだ阪急からでした。

そして、2017年7月にフランスのKRESKグループに買収され、社長のディディエ・タバリーの指揮のもと2018年から、動物由来原料を使わず、動物実験も行わない100パーセントのヴィーガン・フレグランス・ブランドとして再スタートしたのでした。

2019年には、ジャン=クロード・エレナをオルファクティブ・ディレクターに迎え、香りの展開をスタートしました。現在は、2021年1月1日に、クヴォン・デ・ミニムジャポン株式会社からカインズ株式会社へ事業譲受され、ル クヴォン メゾン ド パルファムに名称が変更されています。

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〝禁断のテレパシー〟のようなベチバー

©le couvent maison de parfum

海風とベチバーが出会うとき、無垢な欲望が目を覚ます。まさに女性の秘められた官能に迫る〝誘惑の霊薬〟です。

ジャン=クロード・エレナ

2021年に『シグネチャー』コレクションとして、オルファクティブ・ディレクターのエレナ自身がはじめて3作品を調香しました。それはエレナの署名が入った香りという意味です。当初7作品が完成していたのですが、さらにその中から3つに厳選されました。

そして、翌2022年11月4日に発売された四作目が「ベチバー」です。「エピス マリン」(2013)を共に作ったブルターニュ人のシェフ〝キュイジニエ・コルセール(海賊料理人)〟ことオリヴィエ・ローランジェに招待され、2011年10月にカンカルのシャトー・リシューに滞在していた時に、スパイス交易に使用されていた古船に乗ったときに感じた、海とベチバーが溶け合うと〝女性のためのベチバー〟が生みだされるのではないかという発想から生まれました。

エレナはかつてエルメス時代に「ベチバー トンカ」(2004)でベチバーとトンカビーンにより、甘い大地を感じさせる〝土にキスしたくなる〟香りを生み出しました。さらに「ベラミ ベチバー」(2014)でベチバーとロシアン・レザーにより、ベチバーに〝裏切り者のバラード〟を歌わせたのでした。

そんな彼が生み出す〝誘惑の霊薬〟はハイチ産のベチバーとマダガスカル産のブラックペッパーを主役に据えた妖しく魅力的な〝禁断のテレパシー〟のような香りなのです。

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エレナがマリの大統領夫人から聞いた『ベチバーのお話』


エレナのベチバーに対するこだわりは、2001年にマリ共和国の大統領夫人アダム・バ・コナレ(1947-、作家、歴史家、難民教育基金の理事)がフランスを訪問する時、フランスを代表する調香師に会うことを所望し、両国の領事館で審議が行われ、エレナがその栄誉に浴したことからはじまります。

2001年10月に2人のボディーガードを従えて、大統領夫人はグラースに到着しました。エレナはこの時、背が高く、エレガントなその美しさに圧倒されたと述懐しています。

早速、エレナは研究室へ案内しようとしたが、大統領夫人はきっぱりと断ったのでした。彼女は研究所を見たかったのではなく、自分が愛するフランスの香水について語り、その香水に込められた思いを知りたがっていたのでした。ちなみにこの年彼女は「Parfums du Mali : dans le sillage du wusulan」という本を出版したほどに香りに対する知己に長けた人でした。

そこでエレナは、マリにおける香水の役割について大統領夫人に質問しました。そして、Wusulanについて教わったのでした。母から娘に何世代にも渡って伝承されるベチバー、フランキンセンス、ジャスミン、イランイラン、カロカロンデなどで作られたそれを香炉にセットし、衣類を吊るした部屋に置いて匂いを吸わせるのでした。また、女性は香りの煙を体や皮膚に染み込ませて香りを楽しむのが一般的でした。

特にマリにおいて重要な香料がベチバーでした。乾燥させたベチバーの根を水で煮て薬を作り、女性たちに飲ませると、愛の営みの際に肌がほのかな香りを放つと言われているほど、その効能は認められているのでした。

1921年に作られたモリナールの「ハバニタ」(ベチバーを配合した最初のウィメンズ・フレグランス。ちなみにエルメスの「カレーシュ」にもかなりの量のベチバーが使用されている)もマリではとても人気のある香水です。この香りには、30%以上のベチバーが含まれています。

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3つのグレードに分かれるベチバー精油

ベチバー ©le couvent maison de parfum

ベチバーは、一見すると背の高い緑の草のようですが、その魅力は、地面の下に隠れています。レユニオン島(マダガスカル島東方のインド洋上に位置する)で古くから栽培されていますが、ハイチでも栽培され、現在では中国でも栽培されています。

つまり3つのグレードのベチバー精油が生産されています。

  1. レユニオン産は、マッチ棒と硫黄のような濡れた土の香りを放ちます。
  2. ハイチ産のものもマッチ棒と硫黄のような香りがするのですが、より華やかで脂質に欠けます。
  3. 中国産は、ジャガイモの香りが特徴的で香料として使用できません。

さらに通常ハイチ産ベチバーを使用する場合に組み合わせるベチベロール+酢酸ベチベールではなく、特別にハイチ産ベチバーを蒸留したスペシャル・オイルを使用しています。このオイルは、ベチバーの土っぽさを損なうことなく、トップノートで他の香料を覆い隠してしまうこともない〝奇跡のベチバー〟なのです。

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〝女性の秘められた官能に迫る〟ベチバーの香り

ブラックペッパー ©le couvent maison de parfum

荒れ狂う海水の飛沫に乗ってベルガモットがやって来ます。すぐにブラックペッパーが共にベチバーの上に降り注いでゆくのです。

そして、ベチバーはアーシィーさよりも、豊かなミネラルたっぷりの塩っけと香ばしさを解き放ってゆきます。やがて、シダーウッドが全体を温かく滑らかに引き伸ばしてくれるのです。

重苦しい闇の奥に静かに呼吸づくベチバーに、海水のミネラルとドライな木の芳香を与え、太陽の光の中で、肌の上に着地していくような、そんなベチバーの秘められた〝魔性(野性)のパワー〟を肌に残していく〝女性の秘められた官能に迫る〟香りです。

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香水データ

香水名:ベチバー
原名:Vetivera
種類:オード・パルファム
ブランド:ル クヴォン メゾン ド パルファム
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2022年
対象性別:ユニセックス
価格:10ml/4,180円、100ml/23,760円
公式ホームページ:ル クヴォン メゾン ド パルファム


トップノート:ベルガモット
ミドルノート:ハイチ産ベチバー、マダガスカル産ブラックペッパー
ラストノート:シダーウッド

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