テュベルーズクリミネル(罪作りな月下香)
原名:Tubereuse Criminelle
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:1999年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/40,150円
公式ホームページ:セルジュ・ルタンス
究極の苦痛の先にある至福を表現した香り
アメリカ人はチューベローズが好きです。そして、オレンジ・ブロッサムが嫌いです。一方、フランス人は真逆です。更に、日本人はどちらも好きではありません。
クリストファー・シェルドレイク(あくまでも彼の意見として)
2018年11月にセルジュ・ルタンスより発売された、限られた店舗でのみ販売されている新しいプレミアムコレクション「グラットシエル コレクション」。「グラットシエル」とは、フランス語で「摩天楼」「超高層ビル」の意味です。
その黒のファセットガラスボトルのシルエットは、エンパイアステートビル、クライスラービルなど20世紀初頭から1930年代にかけてニューヨークに出現した世界初の高層ビルをモチーフにしたデザインです。1999年に販売された「テュベルーズクリミネル」も、このコレクションのひとつとなりました。
「Criminelle」はフランス語で「犯罪者」の意味です。そして、この香りには「罪作りな月下香」という邦題がつけられています。
サン・バルテルミの虐殺を引き起こしたカトリーヌ・ド・メディシス(1519-1589)、「三銃士」のミレディー・ド・ ウィンター、鉄の処女などの拷問器具で残虐行為を行い「血の伯爵夫人」と呼ばれたバートリ・エルジェーベト(1560-1614)に捧げられた香り。
この香りのチューベローズに甘いクリーミーさを期待してはいけない。ハッカ臭(メントール)とガソリンをミックスしたような香りから始まります(サリチル酸メチル)。それは鈴鹿八耐のレース場のような臭いです。
このレース場から抜け出したバイクが到達した先は、一面ジャスミンとオレンジブロッサムに包まれたチューベローズの楽園だった。そして、彼は、天国へと召された・・・そう、彼はレース中のアクシデントに巻き込まれたのでした。死の瞬間の至福のひと時をチューベローズに託した香り。
ジョルジュ・バタイユの『エロスの涙』で紹介していた「凌遅刑」=究極の苦痛は、究極の快楽をもたらすという真実か嘘かわからない心理的解釈を香りによって描き出した香りとも言えます。
苦痛の先にある至福のひととき。香りのはじまりがどうして至福である必要があろうか?
さすがクリストファー・シェルドレイクによる調香です。暴力に支配される人間が、崩壊していくプロセスを香りに託したバイオレンス・パフュームの先駆的作品です。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「騒々しくて、誇り高い。ふつう、チューベローズのアブソルートというのは、特に香り始めるときに、ゴムと腐りかけの肉の嫌な臭いを含んでいるものだ。ほとんどの香水が、そういう潜在的な不快な香りをごまかすなり、消すなりするのだが、この香水は強調してみせている。」
「カンファーの冷たい一吹きと、塩っぽい、血液のような臭い、そして、間違いかと思うほどインドールが強いホワイトフローラル・ブーケの香り。時間と共に香りが強くなっていく。素晴らしい香りだ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:テュベルーズクリミネル(罪作りな月下香)
原名:Tubereuse Criminelle
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:1999年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/40,150円
公式ホームページ:セルジュ・ルタンス
シングルノート:ジャスミン、オレンジブロッサム、ヒヤシンス、チューベローズ、ナツメグ、クローブ、スティラックス、ムスク、バニラ