タンブクトゥ
原名:Timbuktu
種類:オード・トワレ
ブランド:ラルチザン
調香師:ベルトラン・ドゥシュフール
発表年:2004年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/24,420円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
母から娘に伝承される砂漠の民の〝媚薬〟
2004年にラルチザンの香りの旅シリーズ「エキゾチック ボヤージュ(レ・ヴォヤージュ・エグゾティキ)」(別名ドゥシュフール、俺の旅シリーズ)の第二弾として、今では歴史的名香と呼ばれる「タンブクトゥ」は発売されました。
「タンブクトゥ(トンブクトゥ)」とは、西アフリカのマリ共和国にある砂漠の民トゥアレグ族の都市です。その語源は、「大地の果て」から来ています。かつては「黄金郷」とまで呼ばれたこの都市は、16世紀初頭に最盛期を迎え、金や象牙、奴隷、塩などの交易品が行き来するサハラ砂漠の通商路において、重要な中継地のひとつとして発展したオアシス都市でした。
街に点在する泥土で建てられたモスクが特徴的であり、異国情緒に溢れています。しかし、現在、街自体は5万人規模にまで縮小し、極貧状態の中、砂漠化が進み、街全体が砂に埋もれつつあります。
この香りは、そんなアフリカの秘境タンブクトゥを旅したベルトラン・ドゥシュフール(アフリカン・アートをこよなく愛する男)が、とても珍しい野生植物から採られた樹脂や草木を原料とするWusulan(西アフリカ内陸の広域共通語マンデ語で、香及び焚香の意味)の香りに衝撃を受けたことから始まりました。このWusulanは、タンブクトゥ周辺の女系部族の女性が、男性を誘惑する目的の媚薬(母から娘に伝承される香りでもある)として作られたものも多く、それらのクリーミーでウッディーな香りにドゥシュフールもまんまと魅惑されたのでした。
つまりは下の曲のような世界観です。
はじまりから終わりまでミステリアスな初体験。
私は、良い香水と悪い香水の見極め方はひとつしかないと確信しています。それは時間です。長い年月を経ても価格が落ちずに愛されているか、格安で販売され、忘れ去られた存在になっているかということです。
ベルトラン・ドゥシュフール
未知なる香りの衝撃を再現したいというドゥシュフールの恐ろしい試みが見事に成し遂げられた香りです。
それでいて、身に纏う難易度が決して高いわけではないのが、この香りの名香たる所以です。弾けるような香りとまとわりつくような香りを同時に体感することが出来る香りであり、それは濃厚に愛し合う男と女、女と女、男と男の間で生まれる液体のしぶきの様でもあります。神聖なる香り立ちの中に、絶妙なバランスで感じられる官能性が素晴らしいのです。
それらの演出は、熟して腐る寸前のマンゴー、カルダモン、ピンクペッパーによって始まります。やがて、この香りの中の唯一の花であるアフリカの花カロカロンデがベチバー、ミルラ、パチョリと共に香りを発しながら、ミルキーなベンゾインとスモーキーなパピルスに包み込まれていくのです。そして、最後に史上空前の魅惑のドライダウンが現れるのです。この香りの醍醐味は、はじめから終わりまでです。
一言で表現すると、この香りは、燦燦と輝く太陽に照らされた黄金の香りです。自分自身を黄金に変える香りです。人は黄金を身に着けることによって、自分自身を高貴に見せようとします(そして、たいがいの場合は、品格を落としてしまう)。それはロレックスであったり24金の指輪やネックレスであったりするのですが、その究極の選択として、全身を黄金に変えることが出来るのが、この香りによってなのです。黄金の香りは、砂漠の民の香りなのです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「タンブクトゥ」を「ウッディ・スモーキー」と呼び、「タンブクトゥは、ヌーベルキュイジーヌ(新しい料理)にたとえて、「ヌーベル パルファムリ」と呼ぶべきジャンルの、最初かつ本当の傑作だ。この流派の代表的提唱者はジャン=クロード・エレナとベルトラン・ドゥシュフールで、絶対的な透明感と、高品質の天然香料が、類を見ないほどふんだんに使われていることを特徴としている。」
「端的に表現するならば、金管楽器のないオーケストラのようだ。この弦楽器と管楽器で編成された香水は、決して甲高い声をあげることはない。」「タンブクトゥは非常に美しい旋律を奏でるように、感動的なベチバーとサンダルウッド、そしてインセンスの香りで始まる。最初は静かに見えるのだが、気がつくと、たった一吹きで家中が、きらめく光のように微かだが、はっきりと認識できる香りで満たされている。フレッシュでウッディな風変わりな香りだ。」
「まるですべての部屋に音楽を流すことができる新しいサウンドシステムのようだ。これほどまでにインパクトより、放射性を重視した香水はほかになかった。」「最近の合成香料を使った、ツンとくる刺激の強いドライダウンにならずに、香り続けるドライなウッドノート。ベルトラン・ドゥシュフールの説明によると、これはシプリオールというインドの珍しい精油のおかげだそうだ。油っぽさや、タールの匂いがまったくないスモーキーノートで、焚火で燃える乾燥した木の香ばしい匂いだ。」
「タンブクトゥは1888年にポール・パルケによって作られ廃盤となった不屈の名香「フゼア ロワイヤル」のすがすがしく幸福感にあふれたフレッシュさを、まったく違う経路をたどりつつも、よみがえらせた唯一のモダンフレグランスだ。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:タンブクトゥ
原名:Timbuktu
種類:オード・トワレ
ブランド:ラルチザン
調香師:ベルトラン・ドゥシュフール
発表年:2004年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/24,420円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
トップノート:ピンクペッパー、マンゴー、カルダモン
ミドルノート:パピルス、インセンス、カロカロンデ
ラストノート:パチョリ、ベンゾイン、ベチバー、ミルラ(没薬)