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スティーブ・マックイーン

『ブリット』Vol.1|スティーブ・マックイーンとレインコート

スティーブ・マックイーン
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マックイーンから学ぶ「オトナのオトコの美学」

ビバリー・ヒルズに住むインチキな連中や、連中がよくやるキザで軽薄なパーティからは遠ざかっていたいのは確かだ・・・とにかくあんなもののどこがおもしろいのかわからんよ。私向きじゃない。話ときたら誰がどのくらい稼ぐか、近作がどのくらい当たったか、撮影所でどのくらいに格づけされているか、そういうくだらんことばかりだ。

スティーブ・マックイーン

スティーブ・マックイーンは、1980年に50歳で癌で死去して以来、40年の時が立つ2020年現在においても、男性のファッション・アイコンの最前列に立つ人です。彼の支持層は、奇妙なことに大きく二階層に分かれています。

それは(DVD文化と男性誌の影響による)20代のファッション感度の高い層と、経済的に安定しているファッションにお金をかけることが出来る中高年層です。そして、明らかにマックイーンの存在は、アレキサンダー・マックイーンの存在とオーバーラップする所があり、永遠の反逆児のイメージに包まれています。

反逆とはすなわち、孤独から生み出されるものであり、それは現代のメンズ・ファッションが忘れかけている感覚です。

マックイーンを象徴する写真。どこまでも自由と孤独を愛する男。

『ブリット』撮影中に気分転換をしているマックイーンのこの3枚の写真が、魅力的な男性は、オンオフのスイッチの押し方を知っているということを教えてくれます。

これらの写真は、若いうちはガリガリに痩せていて中性的であることが魅力として持て囃されても、25歳も過ぎれば、男らしい筋力を肉体に兼ね備えていかないと、オンのスイッチは入っても、オフのスイッチは入らなくなることを教えてくれます。


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コイツの隣には立ちたくない男

女性と男性が待ち合わせする時に、待ってくれている男性のその姿に恋する女性が多いことをご存知でしょうか?そして、女性の願望として、男性が待つときに、決してスマートフォンなどをいじらずに「孤独の中で私を待っていて欲しい」ものなのです。女性は、常に孤独に強い男性に惹かれるものです。それは、どうしようもないくらいに母性愛を呼び覚まされるからです。

「ボクってカッコいいでしょ」と言いたげに、鏡に写る自分を見てうっとりしたり、常に自撮りしている男子とは全く逆の位置に存在する男性にこそ、女性は弱いものなのです。男性アイドルとは女性にとってしょせんはテディベアであり、恋愛の対象にはなりえないのです。

かつて、アラン・ドロンが「絶対にヤツの隣には立ちたくない」と言い放った男スティーブ・マックイーン。孤独が似合う男=自分を信じて走り続ける孤高の人。それは50歳になってもサッカーボールを追いかける男のように、その青い瞳が見つめる先には何があるのだろうか?と妄想させるところに彼の格好良さはありました。

ナポレオン・ソロとマックイーン。

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フランク・ブリット スタイル1

ペイズリー・パジャマ
  • ペイズリー柄のパジャマ

恋人はジャクリーン・ビセットという神設定。


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フランク・ブリット スタイル2

ステンカラーコート
  • アクアスキュータムのベージュのステンカラーのレインコート。5つボタン(物語の後半にも登場)
  • ダグラス・ヘイワードによるダークネイビーのスーツ、スリム・ノッチ・ラペル、シングル、2ボタン、センターベント
  • ペールブルーシャツ
  • ネクタイ、グルーンに豹柄もしくは、赤×青のフローラル・パターン
  • ブラック・レザーベルト
  • プレーントゥ・レザー・ドレスシューズ
  • ベンラス シリーズ3061、ダークブラウン・レザーストラップ
  • 金のネックレス

マックイーンは2ピース、ロバート・ヴォーンは3ピース。

トレンチコートではなくステンカラーコート。

心の底から言わせてください。コートの似合う男だと。

ベルトのないレインコートは、ボタンを締めないもの。

レインコートを綺麗に畳んで肩にかける謎のスタイル。

ベンラス シリーズ3061。

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ダグラス・ヘイワード

ダグラス・ヘイワードのスーツ。

スティーブ・マックイーンの冒頭のスーツは、英国のテーラー、ダグラス・ヘイワード(1934-2008)によるものでした。

ロジャー・ムーア、マイケル・ケイン、ジェームズ・コバーンも愛したこの若きテーラーはサヴィル・ロウではなくメイフェアのマウント・ストリートに出店していました。このオープニングの着こなしが、60年代のクラシカルな着こなしであるならば、ブラウン・ツイードジャケットとネイビーブルーのタートルネックの組み合わせは当時かなり斬新なスタイリングでした。

ちなみに、このエルボーパッチ付きのジャケットをデザインしたのは、本作のデザイナーであるセオドア・ヴァン・ランクル(1928-2011)です。

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日本男児よ孤独を着こなせ!

『荒野の七人』『タワーリング・インフェルノ』で競演したロバート・ヴォーンと。

全てはマックイーンありきなのです。マックイーンだからこそ、きちんと畳んだベージュのレインコートを肩の上に乗せて歩いても許されるのです。それは間違いなく彼の身のこなしの優雅さによるものでしょう。マックイーンが今も尚、男たちの熱い胸を揺さぶるポイントをここで記すならば、たとえばレインコート一つとってみても、ストローハットのように上向きに、襟をアレンジしたりと、細部にまでファッションに対する注意が行き届いているのです。

彼が現在もなお、ファッション・アイコンである理由は、彼の着こなしには全て意味がありそうであり、それをどう邪推するかでその人の感度が試されるからなのです。

マックイーンが着ている服は常に生命力に満ち溢れています。だから、映画の中のマックイーンを見ているだけで、男性にとっての「ファッション・センス」とは何かという問いかけに対する答えが見つかるのです。それは決して崩さずに、レイアードの美学と躍動感を服に与えることであり、服の色よりも、生地が生み出す力を活用した「生命をそこに吹き込む」作業なのです。

まさにバイクとカーレースを愛したマックイーンにとって、マシーンに生命を吹き込むように、彼はファッション・アイテムに生命を吹き込むことが出来る人なのです。

マックイーンは、常に教えてくれます。さりげなく格好をつける男でありたいと。だからこそ、ファッションは、最良のマシーン=生地が生み出す繊細な動き=生命力に満ちたシルエットが全てなのです。

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フランク・ブリット スタイル3

ニットカーディガン
  • マイクロチェックのペールブルーシャツ、胸ポケットつき
  • あずき色の厚手のニットカーディガン、肩周りリブ編みのスタンドネックライン、ラグランスリーブ
  • チャコールグレイのスラックス
  • ブラック・レザーベルト
  • ハットンのチャッカブーツ
  • ベンラス シリーズ3061、ダークブラウン・レザーストラップ

サンフランシスコの夜はとても寒い。

カーディガンのカラーは男の深層心理を写し出す鏡といわれています。

マイクロチェックのペールブルーシャツ。


作品データ

作品名:ブリット Bullitt (1968)
監督:ピーター・イェーツ
衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
出演者:スティーブ・マックイーン/ジャクリーン・ビセット/ロバート・ヴォーン